in the middle RADIO- Falling Down House Diary#5

text by Kohei Matsuda/満州候補者

なんとか切った竹林が復活してランボー2みたいな環境の下、夏になりハクビシンやヤモリ、ネズミが跋扈する家の中、息を潜めて書きました。

Track list 
1-0:00 何かが始まった-Yumbo
2-6:20 Ká Bô Bem Dzoriental-Tchiss Lopes
3-10:08 Paralyzed-The Legendary Stardust Cowboy
4-12:24 Sticks And Stones-Jackie Shane
5-14:33 Son Of Thunder -Shango Dance Band
6-20:57 Han Gong Qiou Yuei(漢宮秋月)-Liu Mingyuan(劉明源)
7-26:23 シブヤくん-Yumbo

1.何かが始まった/7.シブヤくん-Yumbo

これが現実だ-Yumbo(2011)

よくよく聴くとなかなか何系と形容しづらい音楽だと気付いた。クラシック、ジャズ、ロックに影響受けてるのはわかるんだけど、そこから上手く等分に距離を取ってるような感じがある。チェンバーロックあたりが近い形容になるのかもしれないけど、室内楽というより吹奏楽的という形容が合う感じ。

西欧圏のチェンバーロックだと「シリアスミュージック」に向かう印象だけど、そういう感じではなくて、学校に放課後残ってて吹奏楽の練習が聴こえてくるような感じの地元感が有る。でも歌詞がキレキレなんでユルい感じは無くて独特な緊張感も有るというか。

2.Ká Bô Bem Dzoriental-Tchiss Lopes

Já Bô Corre D’Mim-Tchiss Lopes(1984)

カーボヴェルデ(アフリカ北西部の島嶼国)のミュージシャン。恐らくはクレオール系の人だと思われる。カーボヴェルデってどんな国だ?って調べてみたらかなり複雑な歴史で、帝国主義/コロニアリズムが絡み合った歴史をもつ人工国家であった。植民地化された事によって流入した文化が混ざり、フナナ、モルナという地中海圏の色も濃いジャンルが発展していったようだ。

この人も当然その影響下にあるサウンドを奏でている。いわゆる西欧の音楽以外を意識的に聴きだして思ったけどバキバキに歌がうまい、みたいなのがあんまりいない。(勿論、メチャクチャ上手い人もいるけど)結構、ラフ?というか勢い的に歌ってる人が結構いて、技術体系を時間かけてがっちり作り上げてきた西欧に対して、外来文化を急速に取り入れて―、という状況だと色々差異が出てくるんだろうし、文化的な権威勾配が有るとその部分での葛藤が宿命的に生じるのではないだろうか。

歴史的な事に話を戻すとカリブ海のアフリカ帰還運動とアフリカの植民地独立運動の関係やらを少しでも頭に入れて聴くとここら辺の理解が段違いに深まる。

3.Paralyzed-The Legendary Stardust Cowboy

Paralyzed!! His Vintage Recordings 1968-81-
The Legendary Stardust Cowboy(2006)

ジキースターダストの元ネタとして有名な伝説のカーボーイ。ブックレットにも書いて有ったけど「アウトサイダー」な表現の受容って複雑。何がアウトサイダーなのか?そもそもアウトサイダーって何だ?のような意識と対峙しないとちゃんと受容出来ないのではないだろうか。

次曲のJackie Shaneなんかも当時(やるせない事に現在においてもだが)の社会ではアウトサイダーだけど、単純に音楽性が高いのでそういう括りは副次的なものになるけど、この人なんかはParalyzedの破壊力は凄いけど他の曲にそこまでの力が有るか?やらなんやらの考えが浮かんでくる。

変に面白おかしく聴いたり、逆に変に持ち上げたり、という態度も微妙だよな、なんて事を考える。自分は枠組みを越えていく、というのか解放を目指すような表現が好きなので聴く価値は十二分に有るけど、扱いを考えてもしまう。

4.Sticks And Stones-Jackie Shane

Any Other Way-Jackie Shane(2017)

トランスジェンダーのR&Bソウルシンガー。奇をてらわない感じで非常にクオリティ高いけど声が中性的なので結果として非常に不思議な感じになる。アメリカのブラックカルチャーはその厳しい状況のせいか「なめられねーぞ」みたいなマチズムと親和性が高くなってしまう傾向が有ると思うんだけど、そういう定型からはみ出してる人達もかなりいて、そういう人達の系譜に有るとも言えるかな?

突き詰めて言えば帝国主義/コロニアリズムが、そういう状況を用意したと言えると思うけど、そういう主流、ストレートなブラックカルチャーに対する捻れを持った人達の持つものと、アジアにおける帝国主義/コロニアリズムへの状況との親和性が、有るような気が……する……かも?

「日本」というカテゴリで言えば帝国主義的な侵略をした、という事と敗戦(明治維新以降と言った方が正確か?)で植民地化(尚且つそれを地方に押し付けているのだが)した、という入れ子な構造を持ってるわけで、捻れという意味ではかなりのものなのではないだろうか。

アフリカ系の苦難の歴史と侵略者の面を持つ歴史(歴史修正によって加害者の側面は全く省みなくなってしまったが)を比べられるのか?とか思わないでも無いけど、同様に様々な面を持つ「問題」に安易に軽重をつけるのも愚かでは?などとも思ったり、考えだせばキリがなく、実に考える甲斐が有ると思う。なんにせよ「マイノリティから外れたマイノリティ」とも言うべき彼らの表現の在り方に惹き付けられる自分がいるのは間違い無い。

5.Son Of Thunder -Shango Dance Band

Shango Dance Band-Shango Dance Band(2016)

フェラクティの右腕、とも言うべき人だったらしいOjo Okejiのバンド。ナイジェリア内戦でフェラの元を離れ軍に入隊しそこでこのバンドを組んだらしい。慰安もかねてなのかな?音はアフロビートそのものでジミヘンばりにファズギターが暴れまわる曲も有りなかなか個性的。

6.Han Gong Qiou Yuei(漢宮秋月)-Liu Mingyuan(劉明源)

Music Of The Erhu And THE Bowed Stringed Instruments(弓弦楽の神手)-
Liu Mingyuan(劉明源)(1997)

天津出身の二湖の名手。宮廷音楽的というか、民衆の音楽って感じでもないのかな?こういうのを真面目に聴こうと思うとなかなか情報無くて大変。