Interview-anndoe/jailbird Y-New LP” Duality”

jailbird Y-Duality(2022)

3月にCall And Response Recordsから2ndアルバム”Duality”をリリースしたjailbird Y。その活動は2007年からと長く、ボーカルのanndoeを中心に広島でjailbird Xとしてスタート(2008年に改名)。Three One GやSkin Graft recordsなどに代表されるミュータント&ジャンク&パラノイアックなハードコア・ノイズロックに、80sから続くジャパニーズ・アンダーグラウンドの濃汁を染み渡らせたかのような唯一無二のサウンドを武器に、日本全国やアジアの国々で精力的に怪電波の嵐を撒き散らし続け、その名を各地に轟かせて来た。
今作は2018年に大幅なメンバーチェンジを経た後の現在の広島+東京編成による初のフィジカル音源となるが、新譜のリリースの経緯に加え、これまでの活動遍歴やハードコアパンクの聖地でもある地元広島について、anndoeの気になる過去についてもインタビューを行った。
Interviewer-in the middle

今回のアルバムはオンラインレコーディングサイドと台湾ツアーでのレコーディングサイドということですが、それぞれの特徴について教えてください。

オンラインサイドはメンバーの大半が自宅PCのオーディオインターフェースで重ねていって、最後に自分も自宅PCに機材とマイク繋いで歌を入れるって形で作りました。ちょうどコロナ禍の始まる少し前から作り始めてるので、急に色々大変な条件に飲まれながらコロナにめちゃくちゃに翻弄されながら作りました(笑)

けどその分(?)コロナ渦中の記録ができたなと!ポップな仕上がりだけど危機感や不安感が雰囲気に出てるような気がする!

今回の収録曲は既曲の再録もありますよね?

そうですね。大半は今まで発表した色んな音源からの曲です。基本的には現編成メンバーでのライブでのスタメンの曲をその時その時でレコーディングした感じですね。

男道レコードからのファーストアルバムから一曲、LOVE OVER VOLTAGEからの7インチの曲を一曲、自主で出したSEX TRIP epというツインドラム期の曲を一曲、Call And ResponseのV.A.に収録されている一曲。

そしてそれまでの広島メンバー総脱退後に僕が緊急事態的にドラムとデュオ演奏したりフレキシブルなメンバー編成で演奏したりしていた曲をバンドアレンジした二曲。

jailbird Y – jailbird Y(2010)
男道レコード
jailbird Y-UMS ep(2014)
LOVE OVER VOLTAGE
jailbird Y-SEX TRIP ep(2017)
PexPox
アートワークは特殊漫画家 根本敬氏
THROW AWAY YOUR CDS GO OUT TO A SHOW
V.A. -CALL AND RESPONSE(2017)

今のメンバーでゼロから作った曲はオンラインサイドの一曲目のB.A.C.T.E.R.I.A!コロナ禍の始まりに東京とソウルで同時に配信+収録のライブをやりまして。その時に凄い勢いで急に完成した曲です!いや新曲一曲だけ!って思われるかもですが(笑)

では2ndアルバムですがベストアルバム的な内容でもあるんですね。

そうですね。ただ既曲も現バンドメンバーが既曲のアレンジをめちゃ変えたりしてます。あと僕も歌自体全然変えていて原型を留めていない曲もあるし、全部新曲として聴いてもらえればうれしい!

以前の音源知ってる人には、この曲こうなりましたか的にも聴いてほしいな〜。全曲今のjailbird Yの音にバッチリなっていると感じてます!

台湾サイドに関してはどうですか?

台湾レコーディングサイドは、もうホントに僕らの知ってる台北の雰囲気がパッケージできたと思う!ノイズやアヴァンギャルドが好きな若者達が夜な夜な溜まってる場所の ”先行一車”みたいな雰囲気が出したかった!台北WALLでのライブ音源を収録したことでその感じがすごく出せたなと思ってます!それと台湾サイドはベースは満州候補者/necccの森さんが弾いてるんですけど紫、パープルな感じが出ましたね!

パープルといえば、*Dope Purpleじゃないんですか?

*台湾のサイケデリック・ロック・バンド。日本ツアー後、台湾ツアーにjailbird Yを招聘。

そうだ!なので台湾サイドはDopeですね。台湾の熱帯夜の感じ、ドロみがしっかり出てる。オンラインサイドはスパークしてる、カラフルでポップな感じですね。

短期ツアーの中のレコーディングという強行スケジュールでしたよね?

スケジュールはかなり強行だったかもです。台湾の台北で*Tension!  In TAIWANというライヴイベントを企画したんですが、そのライブの前日に録りました(笑)。でも台湾の雰囲気のおかげかユル〜っとチルしながらスタジオワークしてそのままレコーディングできたっす!

*マユミ(jailbird Y,P-iPLE,)とイアン・マーティン(Call And Response)のオーガナイズするライブイベントTension!を台北で開催。台北のレーベル先行一車との共同主催。

レコーディングしたのは台北市内ですよね?

台北市内の61 music studioというレコーディングスタジオを予約してもろてレコーディングしました!炎天下の中でめちゃくちゃ迷い…屋台っぽい定食屋さんの奥の階段を降りるとスタジオで。めちゃくちゃいい人達&しっかりしたスタジオで楽しかった!すばらしい経験になりました。

61 music studio

今回リリースしたレーベルのCall&Responseは色んな日本のアーティストをリリースしてますけどCDが中心のイメージだったので意外でした。

LPはほとんど出してないみたいで、自分たちのが2番目みたいですね。オーナーのイアンがもともと台湾で録った曲を7インチで出そうって言ってくれてたんですけど、そこからすぐにコロナ禍になってしまってレコードの生産自体が難しい状況になっちゃって。

それからしばらくしてK/A/T/O MASSACREの配信イベントに誘われた時に、各メンバーの自宅やスタジオで録音したデータのやり取りでレコーディングして、そして僕が広島のスタジオでプリプロ的にミックスした音源を使ってMVを作りました。

それをイアンが気に入ってくれて。で2,3曲足して7インチじゃなくてLPにしようってなったんですよね。元々が7インチの話からの延長だったんで、LPになったのかも。その方向に話が進みました。僕がそっちに話を進めてしまったのかもしれません…(?)。そうだとしたら大金をかけさせてしまいました…

現編成(東京拘置所メンバー)では’’秘密の暗号’’がデジタルでリリースされていますが、フィジカルリリースは初になります。東京拘置所メンバーは前作のアルバムからは大きくメンバーチェンジしてますよね。

そうですね。メンバーチェンジの経緯は、正直語るのが辛いくらい傷ついた思い出です。2017年頃までは広島のメンバーだけで編成もツインドラムだったんですけど、その後突然若いメンバーが1人失踪して。それがきっかけで色々あって僕以外のメンバーが全員辞めちゃったんですよね。もう1人のメンバーも続いてプチ失踪してしまったりして。…喰らいました。

最初に失踪したメンバーは若くてアートの才能もすごくて大好きなメンバーでした。いつもポジティブなエネルギーをみんなに与えてて彼の気持ちを思うととても悲しくてさみしくて辛いです。今も悲しいし心配です。

広島メンバー時代も精力的に活動していましたよね。急な出来事でびっくりしました。

メンバー全員に飛ばれてしまった時は、ちょうど3年かけて自分でプレスしたjailbird YのレコードSEX TRIP epのリリースツアーファイナルとCall And ResponseのV.A.のダブルレコ発 広島クアトロ編の1週間前というタイミングの出来事でもありました。こっちは流石に 「オメーら」ってなりましたね(笑)。 でも笑うしかなくて。

バンドやアーティストもめっちゃ呼んでいて大舞台でめちゃくちゃ自分を祝おうとしていたし、お客さんにも祝いにきてと呼びまくっていたのに突然1人になり、レコードの曲もVA収録曲も演奏出来ず、製作費をかけまくったMVを爆音で流し、喪服を着てそれを観てました。気がつくと普通に泣いてました。…精神的にすごいキましたね。

喪服でMVを観るanndoe

レコ発だったけどレコードの曲や持ち曲は演奏不可能だったので、ギターとノイズ等を演奏しながら歌える曲とかを急遽4曲くらい無理やり作ってライブしました。 ノイズアーティストのSeki KazehitoくんとノイズロックバンドVelvet AntsのJoeくんがゲストメンバーでフリーセッション的に参加してくれて。

別バージョンでレコ発を乗り切ったわけですね。

2人ともとにかくすごい爆音で、さらに僕も爆音を出してたせいか、おそらくすごい無茶な音になってしまったのかクアトロのスピーカーがボンッてなってしまいまして。超高額そうなスピーカーから煙がモクモク出ながらのライブになってしまったのを覚えています。血の気が引きました(弁償は免れました…!)

そのライブでやった曲から2曲を現バンドメンバーがアレンジして、今回の新譜に収録しました。Y WARとrafflesia arnoldiiという曲です。

一回広島メンバー時代が終わって、紆余曲折あり今のメンバーに落ち着くわけですね。

このあと福岡や東京のバンド仲間にサポートメンバーで入ってもらったり、いろいろ助けてもらってなんとか継続できて。その後徐々に形を変えながら今のメンバーになっていったという感じです。

このメンバー総グッバイ事件が今のjailbird Yににつながる一番大きなキッカケですね。ちなみに当時は色々ありましたが、今では皆お互いに全然気にしてないです(笑)

今は広島+東京というメンバー構成ですよね。どういう形でバンドを運営しているのですか?

基本的にはLINEとかグループチャットでミーティングして…。なんかやろっか、どうしよっかみたいなこと相談する感じというか…。

音源とかイベントとか、これやる?あれやる?っていうのは基本的には僕発信が多いと思いますけど、話が転がり出したらメンバーみんなガンガン意見言う人たちなんで、僕はみんなの流れに自分も上手く乗ることを意識してますね。邪魔しないようにって感じです。気持ちは常にボーカルですから!自然発生するケミストリーに乗りたいんです。

anndoe君以外では唯一の広島メンバーであるSayoccoさんはどのような繋がりでメンバーになったんですか?

Sayoccoさん加入の経緯は、最初はそれぞれ別のバンドでイベントで絡んだりとかはあったんですよ。それからメンバーチェンジの際にめちゃくちゃ歪んだシンセなどなどで加入してもらって、ノイズも出来る人なのでお願いして。

加入初ライブは新大久保アースダムの黒光湯っていうイベントだったんですけど、Sayoccoさんはいきなりスクール水着にバスローブで出ました。半端ねぇやって思いましたね。ベトナム山中でのフェスでは最後キレて谷底に僕のシンセサイザーをブチ投げたり。無茶苦茶な人を加入させてしまったなって思ってます。

Sayocco-元々まやかしプラスチックっていうバンドで活動してました。キッチュでサイケデリックなおもちゃバンドがコンセプトで、歌とおもちゃを担当していて。anndoeと知り合ってイベントに呼んでもらったりしてるうちに、一緒にノイズとかインプロ的なユニットもやるようになって。2018年頃、ちょうど元メンバーが全抜けした時に、短期間のサポートのつもりでjailbirdに加入しました。

Sayocco

jailbird Yのメンバーは、普段は全く違う畑で活動している方も多いですよね。

メンバーみんなそれぞれ自分の活動分野がありますね!みんな普通のストレートな表現よりも、変わってる表現やぶっ飛んでるものや爆音が好きな人たちってとこが共通項かな!面白いです。作曲もメンバーからのインスピレーションが一番大きいです。

たとえば新曲のB.A.C.T.E.R.I.A.も元は自分が作りましたが、最終的にはタケシ君(Gt)、マユミさん(Gt)のノイズロック、ポストパンクの匂いのする感じとか、スミタン(Dr)の日本のニューウェーブとかストーナーが好きな感じだったり、sayoccoさんがDeerhoofみたいな実験性のあるオルタナティブやYapoosやアマリリス好きなところとか、サエキ君(Ba)の日本の80sのバンドとか工藤冬里、マヘルとか天皇とかからも影響受けてるとこだったりの感じが、自然に混ざりながら再度曲が作られていくみたいな。

anndoe君が中心でありつつも、メンバーの個性がガッチリ活きているやり方なんですね。

そういうことが一緒にできる人達に巡り会えてること…これすごいと。なによりも1番ケミストリー感じる。もう全部人と人の星の巡り合わせみたいなマジック…!すごくそういうのを感じるときがある…。それが一番大事な気がしてて。全部決まってたみたいなそんな気分になるようなことが沢山あって楽しいです。

Sayocco-以前の男臭いjailbird Yが好きだったから最初は自分が参加することに乗り気じゃないとこもあったんだけど、東京メンバーと出会ってぐっと楽しくなって。今はさらに世界が拡がった感じがする。スパークしてる!

jailbird Y/東京拘置所

今回のミックスはDMBQの増子さんですよね。

元々僕がDMBQとかLess Than T.Vのファンで、jailbird YでDMBQを広島に呼んだり、増子さんオーガナイズの海外アーティストの来日ツアーの広島公演にjailbird Yを呼んでくれたりしたのもあって色々と個人的にも親交が深まりまして。

僕は以前、増子さんがVelvets Antsを名古屋のBar RippleでRECしたのを見学させてもらったりもしていて、今回メンバーで色々話してた時に増子さんにお願いしたいよねっていう話になりまして。それで相談したら増子さんも快諾してくれて。

やはり元の音像からはかなり変わったんでしょうか。

K/A/T/O MASSACREで配信したMV映像の音が元のプリプロ音源なのでDuality LPに収録されてる音源と是非聴き比べてほしいです!

元々増子さんからはミックスっていうよりプロデュースみたいになるけどいい?って言われてたんですよね。そういう風にどうしてもなってしまうと(笑)

でもアーティストの方にミックスをお願いするってことは、ある意味ではそういう面も期待してのことですよね。

そうですね。でも時にギター丸ごと消したりとかそういうこともしてしまうとのことだったので、最初は ええっ どうする? って皆と話して(笑)。でもそれならそれで増子さんがどんなのを作るのか聴いてみたい!ってなって。

最初僕が増子さんの住んでいる大阪に行きますと言ったんですが、「いえ むしろ行きたいです」と言ってくれて。広島まで機材を積んだ車で来てくれて、普段自分がライブしてるBar ROOTZでやることになりました。

機材ごと遠征してもらってミックスをしたんですね。

4日間カンヅメになってしまって増子さんには申し訳なかったですが…色々提案を貰いながら一緒に試したり、じっくりやれました。すごい集中力で作業して作品をネクストレベルにぶち上げてくださったなと感じてます!

部分的に増子さんが色々ノイズや電子音を作ったりしながらリミックスしてもらった部分もあって、そういうのが曲の中で混ざってるのもすごく楽しいです。

DMBQ増子氏のミックス作業
at Bar ROOTZ

広島のイベントの話が出ましたが、レーベル、イベントとして活動しているプロジェクトのPexPoxについても教えてください。

PexPoxは企画とレーベルをDIYでやっています。企画の趣旨や出演アクトはオルタナティブって言葉で括れるかなと思います。ノイズエクスペリメンタルな企画もやるしハードコアパンクGIGもやります!

企画やリリース自体は20年前からずっと広島でやり続けていたんですが、2014年からはPexPoxの名前で活動しています。どちらかというとメインは企画のほうなんですが。

レーベルとしてはBandcampがあるんですけど、今のところはjailbird Yの音源や僕のソロやユニットの音源を中心にリリースしています。自分自身がパンク/ハードコアに出会った時に感じた”エネルギー”を発しているアーティストと一緒に企画や作品を作り、繋げていく仕事と思っています。

PexPox(2014-)

anndoe君の音楽的ルーツの話とかも聞きたいんですが、バックボーンはハードコアですよね。A Piece of Shitというジャパニーズ・ハードコアのスタイルのバンドも過去にやっていましたけど、そこからjailbird Yににたどり着くのは特殊なような気もしますが。

確かにライフスタイルやメンタリティはジャパコア寄り(?)だった気がしなくもないし、そう見られてしまうのかもしれませんが、自分としてはA Piece Of Shitはジャパコアとしての自覚はなくて(笑) 。

広島カオティックハードコアと書かれたりすることもありますが、実はそこもそんなに意識はしてなかったし…。ほとんど今と変わらない感覚でやっていたので、自分ではよく分からないですね(笑)

A Piece Of Shitはいつ頃まで活動していたのですか?

A Piece Of Shitは1999年から2006年までやっていました。その前の90年代後半、僕が高校生くらいの時の広島にはジャパコアな先輩達もいたんですが僕らはその次の世代って感じでしたね。

当時BLOOD SUCKER RECORDSのGuyさん(ex-愚鈍)が、自分たちのことを広島ハードコアシーンの異端者ってDollで紹介してくれたことがあって嬉しかったですね。

A Piece Of Shit
1st epより

その頃はとにかくドープな音楽をすごく求めてましたね。その中でもハードコアパンクがとびきりよかったということかもです。Brutal Truthとかすごい好きでしたね。Christ on Paradeとか、Guyana Punch Lineとか。初期Neurosisとか、Dystopiaとかそういう音が好きでしたね〜。あとはクラスト系、DOOM、ENTはもちろん、メタルなクラストが好きで。MiseryとかLogical Nonsenseとかも…!

オリジナルのハードコアパンクから当時の現行のバンドが好きだったんですね。

UK パンク/ハードコアももちろん好きだし、スウェーデン、イタリア、オランダのハードコア も。80〜90’sのUSハードコアはだいたい好きでした。サンディエゴのバンドとかLA PUNKも。

あとMelvinsとかもめっちゃ聴いてましたね。なんかそういうヘヴィ目のドープでオルタナティブなハードコアを日本語ボーカルでやろうと考えてたと思います。

広島は80年代から愚鈍やGoogle Plex、Chicken Bowelsなど個性的でカッコいいハードコアバンドが多いですよね。

めちゃくちゃかっこいいですよね!その当時は僕は小学生なのでライブには行ってないけど。Google Plexのルーザー君がそのあと組んだバンド、Crucified Junkや、現AsphaltのジェロくんのやっていたAgent Youthが僕らの直接の先輩で、僕ら世代は色々可愛がってもらって(笑)

Crucified Junk – Maria(1997)

僕が高校生の頃はその両バンドの影響力が凄かったです。めちゃくちゃ個性的な音でしたし、メンバーも周りの人達もみんなぶっ飛んだ人達ばっかりで10代の自分は大分影響受けましたね。

とにかくみんなハードコアなライフスタイルの人が多くて楽しかったです。トランスやレイブシーンとも繋がっていて。アンダーグラウンドで危ない話ばかりの時代だったけど僕にとってはキラキラした青春ですね。

元々ジャパコアのバンドをやっていた人が、後にサイケデリックだったりポストパンクなど違うアプローチの音楽ったとしても、どこか独特なジャパコアっぽいテイストがある印象もありますが、jailbird Yはanndoe君が以前やっていた音楽とは隔絶している音の感じが不思議というか珍しいなとも思うのですが。

うーん なんでなんでしょうね〜。自分的にはA Piece Of Shitとjailbird Yは地続きなのでわからない…。おそらく僕がジャパコアではないから…なんじゃないかな〜と思います(笑)

たしかにanndoe君が昔ジャパコアのバンドをやっていたっていうのを知った時は、意外な感じもしました。

広島ハードコアの先輩でいうとGUYさんとルーザーくんにすごい可愛がってもらったなって思いますが、2人とも服とか全然ジャパコアスタイルじゃなくてオシャレだったし(ライフスタイルはめちゃくちゃだったけど)。実は広島ってみんなが思うほどジャパコアな土地ではないのかも?ただ先輩達はみんなぶっ飛びすぎてて色々超越してる感じはありました。

あとは元々jailbird Yを始める段階から音楽的にはハードコアパンクじゃないことをやろうと思ってたっていうのはありますね。ハードコアパンク的な曲もやるけど、それは一側面という感覚が近いかもです。あと、こちらも一側面ですがA Piece of Shitの頃から不思議とOn Uのサウンド、というかブリストルのシーンに対する強い思いがあります。

それもまた意外な感じがしますね。

ブリストルはAmebixとかDisorderがいて、SlitsとかPop Groupとかエイドリアン・シャーウッドとかいてそういうのがカッコいいなって思ってたんですけど、同時にちょっと広島っぽいなとも感じてたんですよね。シーンとしては小さいけど色んな音楽の人がクラブでクロスオーバーしてるところとか。

当時の広島で不良っぽいことや音楽まわりで夜遊びしてたら自然とそういうクラブシーンの先輩たちやカルチャーと繋がるっていうのもあると思います。

サイケデリックでロックンロールな先輩達や、ぶっ飛んでる仲間はやっぱりクラブ界隈のシーンで遊んでましたね。ノイズとかNew Waveはそっちの先輩達に教えてもらった気がします。ワルくてお洒落な先輩達に感謝です(笑)

広島のアンダーグラウンドはパンク・ハードコアの印象は強かったですが、それ以外にも色々な音楽が行き交っていたということですね。

そうですね。ただ、パンク・ハードコアの人気はやっぱり強かったですよ。僕はバンド活動の最初の入り口はOi Punkでしたし。高校の文化祭でOi Punkのコピーバンドのボーカルをして(笑)。The EjectedのEast end Kidsとかやってましたね。バンド名も歌詞も分からずにカセットテープ耳コピして歌ってました(笑)

Oi Punkとハードコアが高校生の間でめちゃくちゃ流行ってたし、ギャルもジャパコア聴いてましたし、昔Operation IvyのCDを部屋でかけてたらギャルに「ちっ!ハードコアないん?!ハードコアかけてやぁ!」と言われたことがあります。それくらいハードコアは子ども達の間に浸透していました。

あとはやっぱり血気盛んで不良が多い、というイメージもありますが。

それはその通りだったと思います。僕の一個下の年代がチーマーブームから一周して暴走族ブームが再燃して族が増えて、広島の秋祭りの歩行者天国で警察の機動隊と暴走族が衝突して大乱闘になったりして全国ニュースになってました(笑)。ConflitのMVみたいになってて(笑)

それに参加していた少年たちの多くはCrucified JunkとAgent youthのファンでしたし、族やチーマーの卒業ライブとかでOiを演奏する者も多くいました。今考えると面白いですね。

えびす講 暴走族vs広島県警(YouTube)

やっぱりハードコアパンクが不思議と根付いている土地なんですね

今はハードコアパンクのバンドが広島には少なくなってしまったんですけど、Bloodsucker RecordsのガイさんのOrigin of Mや、僕と同い年で広島最古参のハードコアパンクバンドNever Again、AspaltやXidentity、 凄い勢いで活動しているAxe Helvete、蟲酸、Ace In The Holeなど先輩や同世代のバンドも頑張っています。

昔みたいに一緒にライブすることは減ったけどずっと仲良くさせてもらってるし、ライブに行くといつでもその時代のノリに戻れて嬉しくなる。幸せなことだなって思います。

話変わりますけどanndoe君自身はヤンキーだったんですか?

僕自身はいわゆるヤンキータイプではなかったと思っているんですけど、10代のころの溜まり場は公園や駐車場だったので生態的にはヤンキーだったかもしれないです(笑)

ボディピアスだらけの顔で部屋の全部の襖や壁に絵を描いたり、友達が僕の家に来て、僕がみんなにボディピアスを開けてあげたりするタイプの子でした。サイケデリックな音楽とかダブとかもずっとハードコアパンクと並行して聴いてたんで、その辺はちょっと変わった子供だったかもしれないですね。

入墨もだいぶ豪快に入れてますよね(笑)

僕が高校生の時とかにボディピアスと入墨がめちゃくちゃ流行ってて、在学中に入れてバレて退学になるやつとかもいて。僕は初めて入れたのは18歳でしたけど、ちゃんと卒業してから入れました(笑)

今は昔よりさらに流行ってて顔とかに彫ってる若い子とかイイネって思います!どんどん見えるところに彫って普通に生活して社会の価値観やルールを変えていってほしいですね。現状まだまだ困ることはとても多いですがそこから学べるものがありますから。

今はたくさん入ってますけど、一時期は全身の入墨をそうとしている時期もありましたよね。あれは何だったんですか?

あの時期はマジで人生最大級に頭がイカれていて…。世界を救う為に僕がサラリーマンにならなくては…という妄想を抱えていて。「世界の為に一般企業に入社するぞ」と。

そのために全身のタトゥーを除去しようとしていました。とにかく一度すべてを浄化したいということで、まず身体をクリーンにしようと思っていた気がします。

確かにその時期、ライブでも上下とも真っ白な服着てたりしてたから何かあったのかなとは東京から密かに思ってましたけど

あの時期のファッションにはワケがあって…!その頃はTalking HeadsのDavid Byrneとかを意識してて…Cluture clubとかもそうなんですが、そういう80’sのNew waveみたいなのとThrobbing GristleとかノイバウテンとかみたいなNoise / Alternative が隣接してる感覚にすごいハマってて。

それとその時代の日本の感じとかむっちゃクセ強くてすごいいいなと思っていて、Yapoos、やハルメンズ、ルースターズとか、ナゴム系とか、タコとかINU、あぶらだことか、The STALINとか非常階段とか挙げたらキリないですが、もう最高だなと。

そのあたりを意識して髪もビチっと七三にしてですね。そういう日本のノイズ/NW的な感覚とLocust周辺の変態的なハードコアやオルタナティブなヒップホップだったり00’s以降のポストインターネット/アートパンクを混ぜてやってみたいという壮大な世界観をですね。あのファッションに込めていました…!そのすべてを表現したのがMV GOEMONとSEX TRIP epでして…!

そういった世界観を込めに込めて、イタリアのノイズの巨星マウリツィオ・ビアンキを意識したピンクニットに白シャツ&タイトスラックス&七三分けでライブしたんですが、ライブ後エゴサーチした時に「Voがオードリー春日みたいな格好でヤバかった」と書かれていて…(泣)。七三分け路線は諦めました。

Maurizio Bianchi(1955-)

なるほど。ではあのファッションは体をクリーンにしようというのとはまた別の話だったんですね。

そうですね。でもとにかくイカレていました。入墨除去に関しては広島のディープな地区にある美容整形とEDの治療をやってる病院があってたんで、そこに行ってレーザーで焼いて消そうって思って。あれってかなり痛いんですよ。

バチバチやって消すやつですよね。あれは確かに痛そうです。

そうなんですよ。なので「全身麻酔しますか?」って聞かれたんですけど。レーザー施術してくれるのがめっちゃお綺麗な全身整形美女風の方だったんで僕もいちマゾ兵卒として「願ったりかなったりや」って気持ちになってしまいまして「麻酔いらないです!」って断りまして。

「全身整形美女を眺めながらの全身レーザー焼かれ大会か…悪くないだろう」って思ってたんですけど、レーザー光からの目の保護の為にウルトラマンセブンのアイグラスみたいな文鎮的な金属を目に置かれてしまいまして。瞼に文鎮置かれてる感じで。

結局何も見えずに無麻酔で全身をレーザーで焼かれてしまいました。激痛でしたね。それ以降は全身麻酔で毎回気絶させてもろてレーザーやりました。麻酔は吸うだけじゃ効きがユルいので静脈注射するんですけど、全身麻酔でガクンッて一瞬で寝て起きたら終わってて包帯グルグル&激痛みたいな感じで…

中々ハードな作業なんですね。

施術の後は腕や胸や首にゲンコツ大の水ぶくれが沢山できたりするんで結構辛かったですね。1週間くらい激痛&汁まみれで。動いてると急に水脹れが破裂して汁がピューって出るんですよ。キモかったです…。ロキソニンも1日ワンシート食べてましたし、ギプス状態でライブとかもやってましたがお客さんも共演者も引いてましたね(笑)

そこまで苦労して消そうとしてたんですね。

そうですね。月一で全身麻酔を静脈注射して強制気絶しながら10回以上レーザーで焼きましたね。世界を破滅から救うために…。その頃は完全に頭がイカれていました。テレビやラジオもすごい自分に話しかけてくるしヤバかったっす(笑)

ただ、消し始めてあと5、6回でキレイに消えそうな時に恋をしまして。恋の相手に「タトゥーかっこいいよ。消すのもったいない」と言ってもらえて。それで「えへへ」となりまして。途中で消すのも止めて、サラリーマン願望もどうでも良くなっちゃって世界も救わなくていいやとなり(笑)。恋に夢中になってしまって世界じゃなくて僕が救われてしもうて(照笑)

今はまたその消したとこの上に彫って今に至るんですけど。でもイチ変態として消す経験もそれはそれでよかったです。ある意味別次元の拷問みたいでした(笑)

似合ってますけどね。シャーマンっぽい感じも、なんか受信しちゃいそうなヤバい感じでイメージに合ってるというか(笑)

前にそういう系で怖いことあって。20年近く昔の話なんですけど、自分が住んでたマンションの下の部屋から女の人の叫び声が聞こえてきて、そのときはLucy がin the Sky でwith Daiamondだったしスピーディーハヤ夫でもあったので今思うと気のせいか幻聴の可能性も大なんですが…

たしかに悲鳴が聴こえた気がして、しかもかなりのマッドスクリーミングで…さらにゴンっ!みたいな大きい音のあとにシーンと静かになって…、それで殺人が起きたんじゃないか!?って強烈に思い込んで警察に電話しちゃったことがあって…

色々な方面にやばいすね(笑)

変にスイッチが入っちゃったのか、急に正義感に燃える男みたいになっちゃって。でも警察が全然話を信じてくれないから僕も「人の命がかかってるんだぞ!」ってブチ切れながら電話で叫んだりして。

おかしなテンションだったので、何故かスーパーの巻き寿司食いながらウォンツっていうドラッグストアの駐車場で叫んで電話してたんですけど(笑)

お巡りさんもビビったでしょうね(笑)

で、その後やっと警察の人が6人くらい来て、一緒に下の部屋に確認しに行ったんですよ。ピンポン鳴らしたりして叫び声が聞こえたその部屋を調べてたんですけど。そしたら警察が「アンドウさん、ここ空き室です」って(笑)。”空室”でした。

それで軽く注意されただけで警察も帰ったんで「あー殺人が起きてなくてよかった」って思って部屋に戻ろうとしたら、急に上の階から顔面包帯ぐるぐる巻きの男が階段をゆっくり下りて来て…あれは怖かったですね。結局なんだったんだろうって。

超怖いんですけど(笑)。錯乱状態の幻覚だったんでしょうかね

わからないですけど、そうかもしれないですね。基本的にはハッピーな性格だと思うんですけど、たまに変な気分にどツボる時とかもあるので。

でもちょっとモヤモヤすることもあって…これは後日談なんですが。それからしばらくして…部屋のドアの中から外を見る覗き穴の見るやつあるじゃないですか、そこの部分がある日急に無くなってて。ただの穴になってて外から中が覗けるようになってたんですよ!ビビりました。普通そんなの無くならんし…!取れんし。もしかしたら殺人者に狙われていたのかも…

ちょうどA Piece Of Shitでの長いツアー前のことだったのでそのままその家は解約しましたが、怖かったです(震)

なんか今回のLPのジャケットの世界観のような話ですね(笑)。今回はここには書けないディープな話も色々ありましたけど、それはまたの機会に。最後に今後の抱負などがありましたら。

ロックロールキングダムみたいな感じで世界中をツアーしたい!

jailbird Y-ベトナム/ハノイ奥地にて(2019)