Interview-Smallspeaker …Kills All Trend Scums!!!

Smallspeakerの7インチ聴いた??「THIS RECORD KILLS ALL TREND SCUMS E.P. 」はここ最近リリースされた現行バンドのレコードの中でもインパクトのある素晴らしいレコードだと思う。

不良系70’sパンク、例えばオーストラリアのRazarやスイスのRebelsあたりのロウパンクをさらに極端にしたサウンドで、90年代に流行ったロウファイなガレージパンクとも違う、今までありそうで無かった切り口のパンクサウンドにビックリした。

世界各地のアンダーグラウンドでパンクロックリバイバルがあった90年代が第2期パンク黄金期だとしたら、メンバーが以前在籍したRegistratorsは間違いなくそのど真ん中にいたバンドだろう。人気があったり流行の中心にいたバンドや人は、過去を超える事は凄く難しいし、挑戦することをやめてしまう。

「THIS RECORD KILLS ALL TREND SCUMS E.P. 」を聴いてどう思った?70’sとも少し違う、90’sとも違う新しい感覚のパンクロックが痛快だ。 Smallspeakerメンバー全員に色々と聞いてみた。

Text / Interviewed by Kenji Sagahara – The Smog
Hajime Murakami – in the middle
Live Photo By Teppei Miki

まずは自己紹介をお願いします。

大槻(以下O):ボーカル、ギターの大槻です。

本間(以下H):ベースの本間です。 

松岡(以下M):ドラムの松岡です。

本間さんが加入した時期くらいの事からお聞きしたいのですが加入のきっかけを教えてもらえますか?

H:確か5〜6年前くらいですね。大槻さんから電話がかかってきて誘われたのが最初です。大好きなバンドだったのでビックリしましたね。

O:約6年前かな?前ベーシストのマサ17が辞めて、本間にお願いした。本間しか思いつかなかったね。パンクが好きだし今まで俺がやってきた事も知ってるから。当時は松岡もまだ復帰していなくて、ヘルプのドラムだったから不安もあったけど。

本間さんがベースで加入する時に何かリクエストってありましたか?

H:最初は基本ルート押さえてこうという感じでしたね。今もそんなに変わらないけど(笑)。

O:ルート弾きでやって欲しいとリクエストした。今まで一緒にやった事があるベーシストでルート弾きのプレイヤーは居なかったから。本間のプレイはドンドン良くなってる。アタックが早いんだよ。

前のベーシストであるマサ17さんは何故やめたのでしょうか?

O:スタジオのドタキャンが多くてこれじゃ無理かなと思ってたら向こうから辞めるって言ってきた。

ここ最近は以前のSmallspeakerと比べてパンクロック度があがっているように思います。変化するきっかけはあったのでしょうか?

O:「No.5」 (5枚目のアルバム)の時にはシンプルなパンクをやりたいと思ってたけれども、当時はまだ絞り切れていなかったかな。
一番やりたい事で精一杯出来る事は、シンプルなパンクしか無いとその頃には思ってはいたけど、曲で出てこなかった。「No.5」の1曲目の「Border Line」も今やってるアレンジじゃなかったし。
この歳だと可能性とか出来ない事に挑戦するより、出来る事を思いっきりやった方がいいと思ってる。

H:パンクが好きなのは変わらないし、やれることをやるだけ。

M:多分離婚…

なるほど。シンプルなパンクをやりたい!って思ったきっかけはありましたか?

O:4人編成の時に2枚のアルバムをリリースしたんだけど、4枚目のアルバム「NO.4」のミックスの時にポップな曲や暗めの辛気臭い曲は散々作ったし、もういいかなと思って。
それと、ツインギターでベースラインが作り込まれているアレンジだと、俺のギターを引っ込めないと成立しない曲もあった。自分のギターをもっと前面に出したいっていうのもあったし、そもそも1人でやり始めた時に自分のヴォーカルとギターを全面に出したいと思ったから。
曲自体は何曲か好きな曲もあるんだけど、3人編成でもっとソリッドでシンプルなパンク。そういったパンクな曲をやり切って無いと思ったんだよ。
ただ、さっきも言ったようにイメージはあるんだけど曲で出てこなかった。そんな時に出来た曲がカセットシングルの「No Brain」て曲で、それからどんどん曲が出来てきた。

曲はシンプルなパンクロックで、大槻さんがかつて在籍していたRegistratorsの初期を感じさせるという意見もあると思いますがどう思いますか?

Registrators – Just Wanna Kill Everything(1995)

O:そうだろうね。でも、俺としてはヴォーカルの乗せ方やギターの弾き方とか全然違うと思う。本人しか分からないかもしれないけど。

ギターやボーカルのRegistratorsの頃との違いをもう少し具体的に教えてもらえますか?

O:難しいな。ヴォーカルに関してはセンテンスを短くした乗せ方になってると思う。ギターだと昔はカッティングにしてもオルタネイト中心で今は頭のアタックをダウンで弾いたりダウンとオルタネイトを混ぜたりしてるかな。リードにしてもコード進行を無視したりしてる。関係無い弦を弾いたりね。

Registratorsと比べて、曲構成はシンプルで、演奏も削ぎ落とされていると思います。

O:Registratorsの頃は凝ったコード進行に分かり易いメロディーというのがやりたかった。Registratorsの時についた癖や余計なフリルを削るのに10年くらいかかった。
Joy Divisionの「Transmission」なんか2コードだし、New Orderも少ないコードの繰り返しの曲が多い。そこに凄い影響を受けてる。初期のWireのデモにも影響は受けてるね。それとお客さんが拳を振り上げづらい曲が好きだね。

Joy Division – Transmission(1979)

松岡さんのドラムプレイについて。セッティングもプレイもとてもシンプルかつワイルドでカッコいいですが、どのようにそのスタイルにたどり着いたのでしょうか?目指すサウンドやドラマーがあれば教えていただきたいです

M:元々3点で色々やってたのを最低限にした上で、それより少し下回る様に、やる事の種類を減らすようにしています。個人的に好きなドラマーはクラウス・ディンガー(Kraftwerk、Neu!他)です!

O:松岡に手伝ってもらう時にバスドラ、スネア、ハイハットの3点でやって欲しいって言ったね。普通のドラマーは3点でやってくれないし、プレイも最高。レスポンスのスピードも速い。

H:あと自転車にハマり出してから明らかにバスドラの圧が上がったのはびっくりした。

ベースはルート弾き、ドラムは必要最小限。リズム隊は余計な事をしない感じにしたかったんでしょうか?

O:リズムセクションに関しては本当に最小限にしたかった。大して使わないタムやライドは要らないしシンバルは耳が痛いから。コーラスも要らない。
それとライブやレコーディングの時にドラムの要らないマイクやコーラスマイクがあるとヴォーカルやギターが抜けてこないってのもある。余計な音を拾うからね。
金太郎飴にならないようにするには俺自身は曲で提示するしか出来ないかな。松岡は引き出し多いからある程度はお任せ。ベースも基本はルートだけど細かいところはお任せ。ドラムがフルセット、ベースラインが練られていても金太郎飴状態になってるバンドも多いし関係無いよ。

M:1曲の中でドラムのオカズ部分なんて微々たる物で、そこに力をかけるならよっぽど良い8ビートで埋め尽くしたほうがカッコいいかなと。3点でやるのは人によっては難しいみたいだけど、正直自分にはかなりやりやすいです。

ここからは「THIS RECORD KILLS ALL TREND SCUMS E.P. 」についてですが、かなり極端な音作りだと思います。狙いとか目標にしたサウンドはあったりしましたか?

THIS RECORD KILLS ALL TREND SCUMS E.P.(2021)

O:お手本はRazar(*1)の1stだけど結果は全然違ったな。バランスの良いミックスにしないっていうのは決めていた。ヴォーカルとギターだけ大きいミックス。当時のパンクバンドのサウンドってもっとちゃんとしてる。だからそれを更にデフォルメして振り切ったサウンドにした。

Razar – Stamp Out Disco Task Force (Undercover Cops)(1978)

H:なかなか無い独特なレコードになって気に入ってます。

M:荒々しい感じで、こじんまりしないのが良いです。

Smallspeakerとして今までは7インチというフォーマットでのリリースは無かったですが、ここにきて何故7インチでのリリースだったのですか?

O:そういえば7インチ出してなかったなと思ったのと、昔ほど曲が出来なくなってきたから。

M:ちょうど良い感じ。

好きな7インチ音源があれば教えてください。

O:沢山有り過ぎる。Guilty Razors(*2)、Rancid X(*3)、スイスのRebels(*4)、Razar、The Lewd(*5)などかな。キリが無い。Rip Offs(*6)の最初のシングルやSpoiled Brats(*7)のButtafuocoとのスプリット7インチでPack(*8)の「We Better Get Ready」のカバーも好きだね。

Guilty Razors – I Dont Wanna Be A Rich(1978)

M:Strawberry Switchbladeの「Ecstacy」。

H:沢山あるけど最近聴いてたのはGuilty Razors、The Normals(*9)、Rancid X。

機材なんかにも凄いこだわりを感じますが、普段メインに使っている機材やレコーディングで使用した機材について教えてもらえますか?

O:「THIS RECORD KILLS ALL TREND SCUMS E.P. 」ではギターはHayman3030。アンプはHHとRangemasterのクローン。レコーディング機材は型番忘れたけどTascamの4trカセットMTR。マイクはShure57だけ。
ボロいMackieのミキサーでミックスしてFMR Audioのコンプレッサーをトータルでかけた。最終的にはTEACのオープンリールマスターデッキでマスターテープを作りたかったけどデッキが壊れてしまって、カセットテープのマスターテープを作ってCD-Rマスターにしたのが悔やまれる。
最近使っているギターはHayman3030とShergold Modulator、共にGrinning Dog Studioでピックアップのリワインドをやってもらっている。

ギターアンプはAkima&NeosのJewell50。真空管アンプ。あとはHH112Combo。これはトランジスタアンプ。今はHHをキャビネットとして使っていて、スピーカーはセレッションのVintage30 。

エフェクターはRangemasterクローンを2台持っていて、ゲルマニウムトランジスタの型番はOC44のとOC71。近いうちにAkima&Neosの秋間さんにも作ってもらう予定だね。

レコーディング機材は8trハーフインチのオープンリールレコーダーも持っているよ。

H:「THIS RECORD KILLS ALL TREND SCUMS E.P. 」のレコーディングの時はBurnsのShadows Bassを使いました。
今はBurnsのScorpion Bassと、アンプはAkima & Neos のWild Bass 100。

M:バスドラはLudwigのビスタライトの16インチのフロアをバスドラにしたやつ。16インチなのでバスドラにしてはピッチが高めです。
スネアもビスタライト。ヘッドは2回位死んでベロベロになったやつをミュートしまくったやつ。裏面は幅広のスナッピーをガムテープで貼ってこれまたミュート。

ハイハットはZildjianの70年代の15インチ。少し柔らかめなので最近の14インチより音も柔らかい感じです。あまり耳に刺さる感じがしないのが気に入ってます。
ペダルはTAMAのダイレクトドライブのやつを使ってます。

ビーターはL字になってるAxisのペダルについていたソニックハンマーを改造したやつを使ってます。

みなさん楽器の見た目がかっこいいですね。基本古い機材を使ってますが、Akima&Neosの名前がよく出てます。Akima & Neosの機材のどういったとこが気に入ってますか?

O:楽器はとにかく見た目。音は後からどうにでもなるって思ってる。
俺の感覚だとブリティッシュギターはまあまあ作りもいい。ただ、ピックアップの出力が弱くてハウリングが酷いから、リワインドしてる。現行でカッコいいギターがあればいいんだけど全然無いから。
Akima&Neosの秋間さんとは10年くらい付き合いがあって幾つかのヴィンテージアンプを修理してもらった。秋間さんの仕事場には見た事も無いヴィンテージアンプが沢山あって惜しみ無く音を出させてくれる。その時にAkima & Neosのアンプの音を聴いてびっくりした。
ヴィンテージとも違うし現行のアンプとも違う。音のレスポンスがとにかく速い。秋間さんはプレイヤーでありながらアンプビルダーでもあるから信用出来る。あの人も見た目を凄く重視してるのも信頼出来るね。

H:音がバンドの中で埋もれないから弾きやすい。歪みも凶暴だしアンプに直で他には何も繋げてない。シンプルで扱い易いところも気に入ってます。

元々機材には拘りがあったと思いますが、どういったキッカケでそういう楽器、機材に興味を持ち、掘り下げていったのでしょうか?なかなか情報も多くはないと思うのですが、目指したサウンドとの関係も含めて教えていただけたら。あとお勧め、お気に入りの機材など。

M:派手なのが好きなのでLudwigのビスタライト、使ってみたらビンテージのやつなんでいい感じに作りが荒くて、あんまり鳴らない所が気に入ってます。鳴らないドラムが好きなのでメタルシェルは選択肢には無かったけど、Ludwigのアルミシェルのアクロライトは使ってみたいです。

O:エレキギターは高校生の頃から頻繁に買っていて、二十歳で初めてヴィンテージギターを買った。何故かGretschのFホールがダミーでオレンジ色っぽいダブルカッタウェイのやつ。名前は知らないんだけど。
その後にVoxバークレー2の真空管アンプを買ったり、ヴィンテージギターをかなり買ってた。アンプもSelmerやWEMも持ってたね。
お勧めか。Akima & NeosのアンプとHHかな。ゲルマニウムトランジスタのブースターやファズを1台持ってるといいかも。その辺のオーバードライブより個性的だし。
ヴィンテージギターの価格が高騰してるからね。eBayやReverbで探せばまだ安くてカッコいいのもあるよ。Ampegの透明じゃないのとかカッコいい。とにかく、見た目がカッコいい楽器を買った方がいいよ。

H:今使ってるBurnsのScorpion Bassは見た目も変わってて持ってみると意外と弾きやすくて気に入ってる。被る心配もないし。
Wild Bass 100アンプは普段入ってるスタジオで貸し出してて、気になって試してみたら目から鱗で。ツマミも最小限で使いやすい。秋間さんに直にオーダーして色々と話が出来たのも楽しくて。

服にしろ機材にしろ無難な物で済ますのは簡単だけど拘りを持って作ってる人がいるってかっこいいし自分はなるべくそっち側にいたい。

O:レコーディング機材を本格的に買い出したのはRegistratorsの「No Fantasy」から。コンシューマー向けの機材じゃなくて、プロオーディオと言われる本格的な機材。
それとPro Tools。10年くらい使ってた。その頃の機材は全て処分したけど。

「No Fantasy」は当時聴いてこの手の日本のパンクバンドの音源で録音はものすごくハイクオリティだな、と思いました。

O:その前の「Velocity」が良くも悪くもハイファイというかメジャーっぽいサウンドだったから「No Fantasy」のサウンドはボロクソだったような気がするな。金と時間かけてこれかよって。
今は少ないトラック、マイクでどうレコーディング、ミックスするかって事に興味がある。最大で8トラックもあれば十分だね。

Registrators – Velocity(2000)

ハイファイな録音は「Velocity」でしたね。

Registratorsを続けられている間も、その後のBrightliner、Smallspeakerでも初期~現在で音楽性は変化し続けていると思います。どういった狙いやキッカケ、理由で変化してきているのでしょうか?

O:狙いや変化よりも、その時々にやりたい事をやってただけなんだよね。それは今も変わらない。
それとRegistratorsの時は、時代もあったけどサードからバジェットが大きくなって試したい事が出来るような環境になった。サードから解散までは今では考えられないバジェットだったね。
あともう一つはNew Orderの「Get Ready」(2001)とThe Strokesの衝撃は大きかった。

今レコーディングにかけられるお金の制限がないとしたら、こういうレコーディングをしてみたいとかありますか?

O:狭くてもいいから機材を常設出来きる場所かな。いつ何時も使えるようなね。

H:レコーディングとは違うかもだけど、自分達のスタジオがあったらいいな。

レコーディングはアナログの方がいいですか?

O:カセットテープやオープンリールテープのレコーディングでは、俺のやり方だとアウトボードは必要無い。過大入力の加減でテープコンプがかかったり歪んだりするから。勿論、テープでもやり方によってはハイファイにも出来る。
デジタルだとアナログっぽいサウンドを作ってPCに取り込むからそっちの方がアウトボードや他のAD/DAコンバーターの性能も重要。機材も多くなるし、時間もかかるし、やる事も多くなるから面倒かな。
でも、アイディア次第でデジタルレコーダー、PCでもいいと思うよ。極端な事を言えばスマートフォンで録って格好良ければそれでもいいし。人それぞれだと思うけどね。
俺はテープで録ってテープでマスターを納品する事が拘りでもあるし、毎回買ってくれる人に対しての礼儀だと思っている。他の音源とも差別化出来るし。
細かい拘りかもしれないけど買って聴いてくれる人は詳しい事なんか分からなくても伝わってると思うよ。ただ、アナログは壊れると厄介。

M:自分的にはアナログの方が楽かな。ばーって録ったら終わりなんで。

H:機材を維持するのは大変そうだけどやっぱり音がカッコ良い。

レコーディングはどのくらい時間かかりましたか?

O:「THIS RECORD KILLS ALL TREND SCUMS E.P. 」の前にカセットシングルのセッションで、レコーディング自体は10曲で5時間。その中から3曲選んで7inch用にミックスし直したのが「THIS RECORD KILLS ALL TREND SCUMS E.P. 」だね。

No Brain/Breaker(2020)

M:数時間の短期決戦です。

レコーディングはどうやって録りましたか?

O:レコーディングはドラムにマイク1本、ベースに1本、ギターに1本、ヴォーカルに1本で、全部一発録り。ほぼ1テイクだったね。
ミックスにはメチャクチャ時間がかかった。被りのさじ加減が難しかったかな。

M:ミスを恐れてこじんまりした演奏にならないように気をつけました。少々のミスなら指摘されない限りそれでいいかなと。

H:一発録りなのでいつも通りにやれた。

スリーブもシルクスクリーンプリントで、モノとしてトータルでかっこいいです。

O:自分で出すし自由にやれるからシルクスクリーンプリントにした。全てに作り手の手が入ってる物が良いと思ってる。実際の作業は本当に大変なんだけどね。

H:質感とか感触は重要ですよね。同じデザインでも全く違うものになる。

曲のタイトルや聞き取れる範囲の歌詞からは(Tシャツにデザインされている文句なども)、ヘイトアティテュードを感じますが、実際どういう事を歌っているのでしょうか?

O:このご時世だったらヘイトアティテュードにもなるよね。でも「Pills」なんかは寝たいから薬くれってだけの歌詞だしなー。内省的、物語にならない歌詞がいいかな。

メンバーの皆さんは楽器や機材以外にも拘りがあるように思います。革ジャンなどのファッションやバイクなどでしょうか?

O:革ジャンはHighwaymanが多いかな。初期のP.I.L. のJohn Lydonのファッションはカッコイイね。パンクファッションも好きだけど、持ってる服を自由に着る感じだね。
バイクはSUZUKI TS400 ハスラー初期型。1972年製。

H:服は好きですがそこまで拘りも無く、バラバラと好きなものを着てますね。親父の影響はあるかな。

M:乗り物が好きです。車もバイクも自転車も。やべー今日中に家に帰れるかなってとこまで行くのが好きです。乗ってるバイクはBMW R100RS 88年製。
服は派手なのが好きです。「ノックは無用!」(70年代から90年代後半まで放送されていた横山ノック、上岡龍太郎が司会を務めた番組)の魅惑の変身に出てくるおばちゃんの身につけていたアイテム的なやつが好きです。
革ジャンは色々あるけどお気に入りはルイスレザーのツイントラックブロンクス。ベルスタッフのバッカニアのネイビーのやつ。ハイウェイマンのバミューダのネイビーのやつ。

ライブでカッコよくて気になった曲について本間さんに聞いたところ、Smallspeakerの初期の曲(ソロ時代?)とのことでした。そういう曲を現編成でやろうと思ったキッカケは?

O:多分、「Just Don’t Know」かな?あの曲はBrightlinerの時の曲で、レコーディングしたのはSmallspeakerの1stだね。自分の曲だし今のメンバーで演奏しても違和感を感じない。
Smallspeakerの曲だけでも結構な曲数があるから、そこから掘り出して今のメンバーでやるのも楽しい。それと今はポップな曲やキャッチーな曲が作れないんだよ。何故だか分からないんだけど。

H:過去の音源は全部聴いてるので、あの曲を今やったらどうか?とか提案もたまにします。

今後はポップな曲などもやってみたいですか?言葉の壁があったり、日本のパンクバンドはパワーポップやニューウェーブをやると苦戦するバンドが多い印象ですが、その辺どうでしょうか?

O:ポップな曲が出来ればやるし過去の曲でパワーポップ、ニューウェーブっぽい曲をやりたくなればやるかな。
言葉に関してはそこまで気にしなくてもいいと思うけど。それよりパワーポップやるならコーラスの練習をした方がいいと思う。ニューウェーブなら音数を減らすとか。

M:ポップな曲自体は好きだけど、パワーポップってワードが出てくるとやりたくない!って言っちゃいそう。

H:今後どう変化してくのかはわからないですね。過去に作られた曲が違った形で出てくるかもしれないし、それが楽しみでもある。

ライブではRegistrators時代の曲もやってますよね?

O:もうやってもいいかなと思って。やりたい時にやりたいようにやるのが一番だと思うしね。喜んでくれる人もいるし。

H:一番観てたバンドなので恐れ多くも楽しんでます。

M:カバーにならないようにしてます。

松岡さんと本間さん、お客さんとして、対バンとして好きだったバンド(Registrators)のメンバーと一緒にバンドをやるのってどんな気分でしょうか?

H:あまり気負わずに楽しくやれてますね。Registratorsを観てた当時はバンドもやったことなかったので、今の状態は想像もつかなかったけど、当時持ってたパンク天国のコラムに大槻さんが書いてた「とにかくやれ!話はそこからだ!」って言葉はレコードレビューよりも頭に響いたし、後にCar Crashを始めて、今のSmallspeakerに繋がってると思う。

M:やり始めたらびっくりするぐらい気にならないです。普通です。

現在、新作を製作中とお聞きしましたが、前作と異なる感じでしょうか?

O:7inch 3曲入り。もちろん自主でタイトルは「MAXIMUM NOISE OVERDOES」今回もシルクスクリーンプリントでリリース。

完成してどうですか?

O:反省する所はあるけどベストは尽くしたね。ベースのサウンドがカッコいい。

拘ったポイントなんかがあれば教えてください。

O:マイキング。今回はドラムに2本マイクを立てた。被りも前回よりは少ない感じかな。ドラムとベースを重視したけど、どうだろうね。

新作はどのような音を参考にして作ったのですか?

O:今回はお手本が無い。前回よりドラムとベースを出したいと思ったくらい。本間もAkima&Neosのベースアンプを買ったしね。

H:自分のアンプということで、前回とは気持ち的にも全然違いましたね。

割とライブで出してる音で録った感じでしょうか?

O:設定はライブと全く同じだけど同じようには録れないね。そこはもっと研究しないといけないし今後の課題。

H:ベースアンプのセッティング自体はライブとそこまで変わらない感じですね。

M:個人的にはレコーディングした音をライブで出したいって思っているので、チューニングやらミュートの感じはライブとレコーディングでほとんど変えて無いです。

音源は自分たちの通販サイトと手売りのみで、レコード店に卸さないのはどういった考えなんでしょうか?*SMLSPK STORE

O:たかだか数百枚だから。特に大それた考えは無いけど、ここ十年以上通販をやっていて通販の売上の数字もある程度は分かってるから店への卸しはやめた。
それとほぼ100%俺の自己資金なんで3割から4割の手数料は正直、キツい。次回のリリースの為にお金もプールしたいのもある。

今の日本のバンド、状況ってどうですか?集客は苦戦したり。こうなったらいいな?とかそういったのはありますか?

O:パンク自体マイノリティーだからどうしようもない。常時100人くらい入ってくれればいいんだけどね。

M:正直つまらないバンドばっかり。わくわくするバンドなんてほとんど無いし。たまにいいバンドが有ると嬉しい。それがもうちょい増えたら良いかな。

H:東京はライブもバンドも多いけど、良いバンドとなるとポツポツしかいないから増えるといいな。

東京のライブハウスや状況について教えてもらいたいのですが、割とコンスタントにライブをやっていると思いますがどうでしょうか?

O:東京全てのライブハウス事情は分からないかな。本間が入ってからはコンスタントにやってる。その前はライブに重きを置いてなかったのもあるし、単純に呼ばれなかっただけってのも大きい。

H:自分はライブ観るのもやるのも好きなので、今の感じが丁度良いです。

M:個人的にはあんまり意識してないですね。用事が有れば出られないし、用事が無ければ出られるし。

東京以外での反応ってどうですか?

M:最近は大阪、京都でどっちも凄く楽しい。

O:大阪も京都も楽しいし反応がダイレクトで楽しいね

H:真冬の京都Pop! Pizza。真夏の難波Bears。

コロナ禍でも積極的にライブをしてきている印象ですが、コロナ禍の活動について教えてください。

O:緊急事態宣言の時はライブハウス自体やってなかったから練習しか出来なかったけど、ある程度出来る状況になってきてからはコンスタントにやってる。やれる範囲でやるしかないかなと思ってるかな。

H:特に意識はしてなかったですけど無理のない範囲でやってましたね。

M:それもあんまり意識してないです。

海外にツアーに出たり、海外からリリースしたりそういうのってどうですか?自分がよく聴いているアメリカのラジオCarolyn On KXSF-LP 102.5 FM San Francisco Community Radio(*10)でSmallspeakerがベタ褒めでした。

O:海外には行きたい!でも、この異常な円安で海外ツアー出来るかな?インフレも凄いし。ラジオでかかったのは知ってるけど、褒めてくれてたのは知らなかった!

H:ラジオの話は知らなかった!尚更アメリカ行きたい、あとイギリス、韓国とか。

M:海外行きたいです。

海外のレーベルから話があったらリリースしますか?

O:条件が合えば。海外レーベルは良い印象がないんだよね。お金の問題もあるし勝手に許可無くサブスクリプションにあったり。

H:やってることはカッコいいと思ってるし、知って欲しいから良いんじゃないですかね。

M:どっちでもいいかな。

ズバリ、「売れたい」ですか?

H:お金がどうこうよりもカッコ良くありたい。レコードがいい具合に売れれば嬉しい。

O:作った分くらいは。

M:報われたい。

Smallspeakerは最初はソロ活動だったかと思うのですが、今のメンバーは「バンド!!」って感じがします。

H:後から入った身としては嬉しいです。

O:最初は完全なソロとして始めて、ライブをやる時にメンバーが必要になって松岡を誘った。それからメンバーの入れ替えが頻繁にあったのは、その時々にやりたい事を具現化する為だった。
今は完全にバンドとしてやってるし、今のメンバーは本当にベストだね。今までやったバンドで一番楽しい。

M:そりゃ3人いればバンドになるかなって感じです。

凄く楽しそうにバンドしてるな〜と思います。楽しいって重要ですよね。バンドで楽しいを持続するのって結構難しいと思いますが、何か心掛けていることとかありますか?

H: 2人ともバリバリやってきた人達なので、そこに対する敬意みたいなものは持ってるつもり。たまに忘れちゃうときもあるけど。

M:考えてみたらバンドやり始めて楽しい時期の感覚が続いてる様な気がする。特に本間君が入ってから。練習は昼に入るのが良いかも。

O:一緒に美味しいもん食べて音楽以外の話しもする事かな。

皆さんのお話を聞いていると、メンバーがお互い求めている、求められていることを理解し合っていて、バンドの状態はすごくいいように思います。逆にメンバーに対してもっとこうして欲しい、というようなことがあればお願いします。

H:特に無いですね。ドライ過ぎずベタッともせず程よい距離感を持ってやれてる。

M:このままで良いかな。

O:無いよ!十分過ぎる。他の2人は分からないけど。

最近のお気に入りバンド、共感するバンドを教えてください。身の回りでも海外でも過去のバンドでも。Smallspeakerのサウンドや活動にも影響を与えていればその辺もお願いします。

O:The Smog、Vindictives、Numbertwo、The Gerøsは本当に格好いい。最近、一緒にライブをやるバンドは総じてカッコいいと思うよ。
過去のバンドではKilled By DeathやBack To Front等90年代に狂ったほど聴きまくったパンクバンド達だね。個人的にはUnder WorldやNew Orderも好き。

H:最近観たり身近なライブがカッコいいバンドだとBlack And White、The Smog、Vindictives。海外のバンドで聴いてるのはフィリピンのNoa Mal、フランスのFotomatic、アメリカのPatsy’s Ratsとか。

M:最近よく聴くのはCubとかHeavenlyやらSlowdiveかな

70’sパンクバンドで挙げるとすると?

O:さっきも挙げたけどRazar、Guilty Razors、カナダのThe Fits(*11)、The Normals、The Lewd、Trend(*12)、Rebels、Rancid X本当にキリが無いよ。U.K.は絞りきれない。

M:Television、Blondie、Talking Heads。

H:The Dils、Crime、The Lewd!

今更固有名詞としてはないかも知れませんが、どういうバンドを目指していますか?サウンドでもアティチュードでも。

H:ドイツのPVC(*13)がサウンドも見た目も好きです。結成当時ギターはSelmerのアンプを使ってたとか、ベースはHaymanを何本か使い分けてたりとか。77年の音源最高ですからね。

O:特に無いかな。サウンドに関しては荒々しさをどうパッケージしていくかが課題かな。
アティチュードって難しい。生活してれば政治の事も気になるのは当然なんだけど、昔からスローガンが嫌いなんだよ。今年はロシアによる侵略戦争が始まったし、元首相が暗殺されたり凄い年だなと思う。先も見えないから不安もあるけど、自分の目の前にある出来事をしっかりやるくらいしか出来ないな。

M:特に目指すものは無いです。

バンドとして目標ってあったりしますか?

O:メンバーに楽しんでもらいたいな。

M:それも別に無いです。

H:バンドの状態も良く音源も出せてるので、特に無いですね。

今後の予定を教えてください。

O:過去曲のリレコーディングアルバムやシングル、書き下ろしのアルバムなんかも予定してるかな。未定だけど。

H:レコード出してレコ発したり、海外ツアーも行きたい。

M:色々やりまーす。

※オブスキュアパンクファンには常識かもしれないけれど…というバンドなどについての、Sagayoung/The Smogによる解説
(*1) Razar:古くから70’s Punk ファンには人気のBrisbane/Australiaのパンクバンド。不良系パンクロックではベスト5には入ると言われている。
(*2) Guilty Razors:唯一の7インチはPolydorからリリースされるも契約破棄され、大半が破棄されたという伝説のParis/Franceのパンクバンド。
(*3) Rancid X:Polydorからリリースされた1st7インチは最高峰Italian Punk Rock。LPのリリースも有。
(*4) Rebels:スイスのパンクバンドの唯一作。ぶっ壊れ系のPunkでベストEUパンクレコードで、Killed By Deathコレクターから愛されているレコード。
(*5) The Lewd:初期はストレートなパンクロックで、後にハードコアパンクなサウンドを展開するアメリカ西海岸の最重要バンド。
(*6) Rip Offs:SuperchargerやFingersのメンバーが結成したサンフランシスコの覆面ガレージパンクバンド。日本のTeengenerateやRegistratorsとも深く関わり90’s以降のパンクロックの流行を作り上げた。
(*7) Spoiled Brats:90年初頭に活躍したTrashwomen, Fingersのメンバーが結成したFemaleボーカルのガレージパンクバンド。ここでPackのカバーとは、Buttafuocoとのスプリット7インチでのモロにPackをパクった曲を指していると思われる。
(*8) Pack:ドイツのパンクバンド。当時メンバーは30歳オーバーのキャリア組。サウンドは荒々しいR&Rパンク。ガレージファンからも人気のバンド。We Better Get ReadyはLPの1曲目の激パンクナンバー。
(*9) The Normals:New Orleansのパンクバンド。当時唯一のリリースである7インチAlmost Ready/Hard Coreは素晴らしい内容のUSパンククラシック。90年代後半にリリースされた素晴らしい内容の未発表曲満載の編集盤には驚かされた。
(*10) Carolyn on KXSF-LP 102.5 FM San Francisco Community Radio:古くからマキシマムR&Rのライターとして知られるCarolyn Keddyがホストをつとめるパンク〜R&RのサンフランシスコのCommunity Radio。
(*11) The Fits:V.A.「Smash the State」(1994)に収録されたカナダTronto 出身のパンクバンド。唯一のEPはカナディアンパンククラシック。
(*12) Trend:Syracuse (New York) 産ティーンパンク。唯一のシングルはティーンパンク最高峰として知られる。有名声優やコメディアンが参加していたバンド。
(*13) PVC:ベルリン(ドイツ)最強のパンクロックグループ。結成は1977年だが、正式なレコードデビューは1982年。1979年録音の素晴らしい内容の未発表音源が1990年代後半にIncognito Recordsからリリースされた。