Jim Dickinson/producer, pianist, and singer in Memphis

James Luther Dickinson(1941-2009)

text by Hajime Murakami
Mule Team,Flower Zombies

今回Jim Dickinsonについて書いてみようと思ったきっかけは、たまたま中古で見つけたJames Luther Dickinson名義の7inch「The Early Years」。僕としてはリプロのV.A.でしか聴けていなかったあのキメ曲が再発と言えども7inchで聴ける!というのと、未聴の曲が入っていたので買いました。Jim Dickinsonについては以前ちょっと恥ずかしい勘違いをしていた経緯もあり(後述)、整理してみようかなという感じです。

Jim Dickinson(故人)は、アメリカ、メンフィスのプロデューサー/セッションミュージシャンという説明が一般的なのかなと思います。有名なところではThe Rolling Stonesの「Wild Horses」にピアノで参加しているのとか、Big Star/Alex Chilton、The Replacementsのプロデュースでしょうか?

The Rolling Stones– Sticky Fingers(1971)

彼は60年代後半からThe Dixie Flyersというバンドで、恐らくセッションを中心に活動しており、アラバマのマッスル・ショールズ周辺とも絡みがあったようです。そこで舞い込んできたのがThe Rolling Stonesの「Wild Horses」へのピアノでの参加ということらしい。
ただこの曲、僕も大好きな曲で超名曲だと思いますが、改めて聴いても個人的にはそこまでピアノのイメージが強くない。自分がギタリストだからでしょうか、アコギとエレキの絡みが印象的な曲とか生意気にも思ったりしますが、ストーンズにはIan Stewart/ Nicky Hopkinsのピアノが印象的な曲が色々あることを考えるとやはり…とは言え、このセッションが彼にとってその後のステップアップに繋がったのは確かなのでしょう。

他に興味深い所ではFlamin’ Grooviesの名盤「Teenage Head」にも参加してますが、どういった繋がりだったのだろう?60年代後半~70年代には他にもAtlantic Records周辺のアーティストのセッションに参加しているようですが、その時期のその辺にはちょっと興味薄で調査不足すみません…

The Flamin’ Groovies ‎– Teenage Head(1971)

僕自身もストーンズ辺りからJim Dickinson に興味を持ったのですが、彼がリーダー名義の作品の存在はどう知ったんだったか…
その後はJames Luther Dickinson名義で「Dixie Fried」(1972年の1st。というかほぼ唯一作)をリリースしています。バックは先述のThe Dixie Flyersのメンバーなど多数、有名どころではニューオリンズのDr. Johnなども参加しています。このLP、Nightcaps「Wine,Wine,Wine」、Carl Perkinsのアルバムタイトル曲やBob Dylanなどのカバー中心のアルバムですが、一般的にはスワンプ・ロックとか分類されているようですね。

James Luther Dickinson-Dixie Fried(1972)

スワンプ・ロック云々はあまり理解できていませんが、アメリカ南部の(沼地の)色々なルーツ音楽を、黒人音楽・白人音楽ごちゃ混ぜにして吸収したサウンドでカッコいいです(ピアノも大フューチャー)。やはりメンフィスの人ならではの音楽だと思います。ただこのLPちょっと高額盤で、そこまでして買わないかもって値段かも知れない。再評価みたいにされた人だと思うので、再発版あるのかなー。国内版CDでは再発あるはずです。

その後70年代中盤以降ではBig Star/Alex Chilton、The Replacementsなどのプロデュースが有名ですね。あと個人的にはTav Falco’s Panther BurnsにAlex Chiltonと一緒に参加とか。The Replacementsは完全にAlex Chiltonの影響でしょうが(Jim Dickinsonプロデュースのアルバム「Pleased To Meet Me」には「Alex Chilton」というチルトン賛歌収録)、やはりメンフィスのカルト・プロデューサーといったイメージですね。Mojo Nixonのプロデュースとかもしてるっぽいけれど、どの音源なのだろう?

The Replacements‎– Pleased To Meet Me(1987)

あとこれも今回調べていて知りましたが、この時期にLink Wrayの「Rumble」のカバーやってました。まぁレア盤みたいなんでネットで聴きましたが、これが超ドロドロで、そのころTav Falco~Alex Chilton~The Cramps辺りと絡んでいた感じがモロに出ていて最高でした。7inch欲しいなー多分難しいのだろうけど。

Jim Dickinson And The Hoods– Rumble(1980)
Tav Falco’s Panther Burns – Behind The Magnolia Curtain(1981)

このようにこの人、プロデューサー/セッションミュージシャン、スワンプ・ロックの人としての評価が一般的・中心ですが、実はR&B/Black Rocker好きにとっても一部で有名な存在で、重要音源があります。それが今回この文章のきっかけともなった初期音源集「The Early Years」にも含まれている「Monkey Man/Shake ‘Em On Down」(1966年)という7inchシングル。勿論オリジナルなんて持ってません。

Jim Dickinson And The Catmando Quartet ‎– Monkey Man Shake ‘Em On Down(1966)

白人とは思えないシャウター・ボーカルで、白人だけどBlack Rockerなどと言われているような音源です。僕は「Shakin’….Black」というR&BコンピLPを探して最初に聴きました(Still RecordsはCandyなどと並んで良リプロ多し)。某ガイド本でもバッチリ紹介されてましたね。

最重要曲とも言える上記2曲は7inch「The Early Years」のB面に収録。そのA面2曲は更に前の音源で今回初めて聴いたのですが、1曲目はカントリー/ロカビリー的な曲。なんかJesse Fullerみたいにも聴こえるな。2曲目はB面に繋がるようなWild&Primitiveなピアノ入りR&Bでカッコいいです(「Monkey Man」はハモンド入り)。こちらはThe Jestersというバンド名義なのですが、どういう経緯なのかまでは調べ切れず…この時期の音源をまとめたテープがMississippi Recordsから出ているみたいで、これも未聴ですが聴いてみたいです。

James Luther Dickinson– The Early Years(2019)

色々な繋がりから気になって、色々な角度から聴いて好きになったJim Dickinson。今回自分なりに整理してみましたが、その流れで冒頭の恥ずかしい勘違いの話を。

in the middleの動画でメンフィスの色々、Alex Chilton~The Byrdsの話や、カントリー・ロックなどMule Team加藤氏のインタビューをやったのですが、The Flying Burrito BrothersのプロデューサーJim Dickson(ジム・ディクソン)をJim Dickinson(ジム・ディッキンソン)と同一人物だと思い込んでいたんです。
スペル似てません?という話は置いておいて、上記ストーンズの録音への参加の話、グラム・パーソンズとキース・リチャーズが当時親交あった話(お薬仲間)、The Flying Burrito Brothersも当時「Wild Horses」カバーしてるよね?などを勝手に繋ぎ合わせて勘違いしていたようです。考えればThe Flying Burrito Brothers/Jim Dicksonはカリフォルニアが本拠地なわけだし、レコードの裏は見てもアメリカの広大さは想像できていない、悪い例ですね。

最後にこれも動画で少し出ている話題なのですが、彼の息子たちはNorth Mississippi Allstarsというバンドをやっており、世間一般では父親より有名みたいです(他のバンドのプロデュースなども)。それも元々は知らなかったので今回ちょっと調べたら、R.L.Burmsideなどとも絡みがあるようで興味津々、今後はその辺も聴いてみたいです。あと、スワンプ・ロックの基本盤などと言われているちゃんと聴いていないレコードも聴いてみようかな。