90s Garage Punk

text by Toyozo(The Fadeaways)

さて、テーマをいただいたものの、90s Garageというのは、自分にとってバンドを始めるきっかけのひとつとなったものであるが、90s当時僕はガレージのガの字も知らない小、中学生。勿論シーンやムーブメントの中にいた人間ではないため、当時の空気や流れなど知るよしもなく、これは単に後追いガレージファンによる憧れ目線の駄テキストだと思っていただきたい。

90sガレージとは何か?と言われるとその解釈は人それぞれだと思う。一般的(?)には「90年代における、50〜70年代のロックンロールの持つ、ピュアな衝動や原始的かつ荒々しい音をルーツとしたバンドが同時多発的に生まれたムーブメント」といったところだろう。個人的にはこれぞ90sガレージだ!というバンドがすぐにいくつも思い浮かぶが、今回はあえて具体的なバンド名を1つも出さずに話してみたいと思う。まあ今はディスクガイドやそういったWebサイトも沢山あるし、下手したらレコード屋や通販サイトに90sガレージのコーナーもあるくらいだから、具体的にどのバンドが〜というのは皆それぞれで探してみて下さい。

90年代、世の中の主な情報源は未だTV、ラジオそれに雑誌などの媒体であり、アンダーグラウンドなロックンロールやパンクの情報は極端に少なかった、という話は先輩のバンドやDJの皆さんから頻繁に聞くが、実際それは本当だと思う。例えば60sのオリジナルガレージの情報量や元ネタに関していえば、再発や発掘が進んだ2000年代以降の方が圧倒的に多いだろう。90年代のバンドがやっとの思いで探し出した60sのオブスキュアなカバー曲の元ネタですら、今はサブスクだのYoutubeだので誰でもすぐ聴くことができる。極端な話、今ならレコードを1枚も持っていなくても”ガレージ”をコンセプトにしたバンドをやる事すらできるだろう。(ガレージに限ったことじゃないけど)
にもかかわらず、90sガレージに括られるバンド達が本当に素晴らしいのは、当時再発見されつつあった、50sR&Rや60sガレージ、70sパンクなどの要素を自分たちの音に取り入れたり、完全に再現してみたり、またはデフォルメしたり、ということを”熱量”と”探究心”それに”素晴らしいセンス”をもってやったところだ。「過去からやってきた真新しいエキサイティングな音楽」を自分なりの解釈で、かつそれを貪欲に求めて続けたことが、素晴らしいバンドを沢山産んだ要因だと思う。
そしてまた重要なのは、「世界中で」「同時進行的に」「似たようなスタイルを持った」素晴らしいバンドが出てきたという事だと思う。アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、スペイン、オーストラリア、そして日本など。また直接的にせよ間接的にせよ、アンダーグラウンドのバンド同士の交流、バンドとレーベルとの繋がりというのが海を越えて生まれた。これが本当の”ムーブメント”ってやつだろう。(知らんけど)

昔をうらやむことは誰にでもできる。とはいえ、この時代を代表するガレージのバンド達が今でも多くのフォロワーを産み出し、かつ今でも現役で活躍しているバンドもいるということは事実だ。そして限られた情報のなか、自分たちの手で掘り当てた金脈ともいえる音を自分なりの音、スタイルとして還元するというのは、情報過多の2020年代の今では不可能である。自分で”取りに行く”姿勢と情熱が違うからね。当事者たちは不自由に感じていたたかもしれないが、それは90年代当時でしか生まれえなかったものであり、ほんの数年のムーブメントだったとしても、その瞬間の煌めきは永遠なのである。

ザックリした話だけではなんだか意地悪なので最後に少しヒントを。もし90sガレージのレコードを探してみようかな?と思ったら、参考までにこの辺りのレーベルのものを買ってみてはどうでしょう。ちなみにあくまでもおすすめの一部ですのであしからず。

US
Crypt, Estrus, Norton, Empty, Bag Of Hammers, Lookout, Sympathy For The Record Industry, Goner, Get Hip, Dionysus, 360twist!
UK
Hungman, Damaged Goods
Spain
Impossible, Animal, Subterfuge
France
Dig!
Germany
Screaming Apple
OZ
Corduroy, Au Go-Go, Giant Craw
Japan
Wallabies, Target Earth, Timebomb, 1+2