The Clashとジャマイカ音楽

The Clash

text by Hajime Murakami
Mule Team,Flower Zombies

The Clashが好きだと言うと意外がられる事もあるけど、かなり影響を受けてます。新旧問わず好きな音楽への探究心が旺盛、そういった音楽から素直に影響を受けつつも、自分達独自の解釈で表現しているところに惹かれたのかなと(それしかできなかった、偶然そうなってしまった部分も含めて)。例えばThe Rolling StonesやThe Crampsなどがそうであるように、僕を含め多くの人にとって様々な音楽への入口になったバンドだと思う。特にパンクロックがきっかけで音楽にどっぷりハマった僕にとっては、とても重要なバンドな訳です。今回そんな観点からThe ClashとThe Clashにまつわる、そして僕自身も影響を受けた音楽について、ほんの一部ではあるけれど何回かに渡って書いてみます。好きな人には定番の話も多いとは思いますが。

The Clashと言えばやっぱレゲエとかスカってイメージが強い。個人的にはR&Bについて最初に書きたい気がしたけど、やっぱまずはこっちかな。

当時のUKパンクでレゲエからの影響を取り入れてたバンドは多く、同時代的にレベル・ミュージック(って言い方はダサいけどカウンター・カルチャー的な)だったであろう事を考えると相互影響は必然だったのだろうか。ジャマイカ移民が多かったことなど歴史的な理由もあって、英国には60年代からBlue Beat RecordsやIsland UKなどがありジャマイカ音楽が根付いていたようです。

Island Records

初期の曲としては1stの「Police & Thieves」のカバーを思い浮かべますが、そもそもバンド名をCultureの「Two Sevens Clash」から拝借、1stシングルの「White Riot」は1976年のノッティングヒル・カーニバル(カリブ系移民のお祭り)での暴動の経験を基にした曲で、ジャケもJoe Gibbsのオマージュだった訳です。当時リアルタイムのレゲエについては、交流の深かったドン・レッツの影響が大きいと言われてます。

Don Letts(1956-)

この人は後のThe Clash始め多くの映像を手掛けたり、The Clash脱退後のミック・ジョーンズのB.A.Dに参加したりする人ですが、The Clashのメンバーやジョン・ライドンは当時の彼の店に通っていたようだし、パンク・クラブRoxyのDJをしていた人です。

B.A.D

時系列で言うとその後シングルで「Pressure Drop」「Armagideon Time」などの好カバー曲を披露したり(B面で)、オリジナル曲では「White Man In Hammersmith Palais」など。ジャマイカの影響があまり感じられない2ndは実はジョーとミックがジャマイカで書いた曲が中心のアルバムらしいです。

で、3rd「London Calling」です。このアルバムでの音楽性の広がりについては、月並みですがプロデューサーのガイ・スティーブンスの影響が大きいと言われてます。

Guy Stevens(1943-1981)

この人は60年代にUK SueというレーベルでアメリカのR&Bを紹介してBeat/Modな方々に影響を与えた事で有名ですが、R&B以外にもコンピ「Club Ska ‘67」など先述のIsland UKレーベルにも関わっていて、R&Bやスカ~当時最新のレゲエ、ロカビリーなど新旧入り乱れた音楽を1つにまとめあげたのは彼の手腕なのでしょう。因みにThe Clash結成前からのミックのフェイバリット、Mott The Hoopleを手掛けたのもガイです。

V.A. – Club Ska 67(1967)

3rd 「London Calling」 収録曲についていくつか。「Wrong’em Boyo」は先述「Club Ska ‘67」にも収録されているThe Rulersというグループの別曲で、元曲よりアッパーなスカ・チューンになってます。イントロでニューオリンズR&B「Stagger Lee」を引用しているのは元曲も同様ですが、そこに同じくニューオリンズの「Sea Cruise」のホーン・アレンジを被せているところなどニクくて仕方ない。ニューオリンズR&Bがスカのルーツの1つだというのはよく言われる話で、実際並べて聴いて違和感のない裏打ち(強烈シャッフル)のR&Bは多いのですが、その辺を意識したアレンジにさすがと思ってしまうのです。「Rudie Can’t Fail」はThe Specialsがジョーに捧げたと言われる「Gangstars」へのアンサー・ソングと言われていたり、そのタイトルからもスカ・チューンとしてして捉えられていますが、R&Bなど色々な要素が入ってる感じがする。因みにThe Specials「Gangstars」ではPrince Buster「Al Capone」のフレーズを引用してますが、Prince Busterは60年代からBlue Beat Recordsで英国に紹介されていたスカ~ロックステディのヒーロー。そんなやり口もニヤリとさせられます。

Prince Buster(1938-2016)

そして「Revolution Rock」です。これ直接はDanny Rayの同曲カバーですが、その元曲はJackie Edwards「Get Up」。ジャマイカ音楽では古くから同じバッキング(リディムと言うらしい)に別のボーカルやトースティングを乗っけるのは多くあることで、そういう面白さもThe Clashは理解してやっていた?調査不足ですが他にも同リディムの曲はもっとありそう。また「The Guns Of Brixton」はジャマイカ移民が多い地域で育ったポール・シムノンならではの曲だったようです。

The Clash ‎– Sandinista!(1980)

そして4th「Sandinista!」こそレゲエ/ダブのイメージが強いアルバムか(それだけではありませんが)。3rdの後も「Bankrobber」というオリジナルのレゲエ佳曲を出したりしてますが、ここでも「One More Time/Dub」のような同曲のダブ・バージョンなど、マイキー・ドレッドの参加の影響もあってか、当時のめり込んでいたであろうリアルタイムのレゲエ/ダブを取り入れてます。

個人的に特筆すべきは、まず「Junco Partner」。この曲もニューオリンズR&Bのカバーで、元曲はJames bookerやProfessor Longhairが演ったピアノR&Bですが、こんなレゲエ/ダブに仕上げてしまう所が。また少し話はそれますが「Police On My Back」はBeat/Modな方々に人気なThe Equalsという60年代のバンドのカバー。なのですが、このバンドVoが後の(The Clashの活動時期としてはリアルタイムの)英レゲエ歌手のエディ・グラント。こんな所にもThe Clashのジャマイカ音楽への探求心を感じてしまうのです。

時系列少し前後しますが脱線ついでに。2nd収録の「English Civil War」はトラディショナル・ソング(アイルランド民謡?)のカバーらしいのだけど、同時期にジャマイカではJacob Millerが「Peace Treaty Special」というタイトルでこの曲(カバー?替え歌?)をやっているんです。この曲もThe Clash好きには有名曲ですが、先述の通り2ndの曲作りをジャマイカでやってた事を考えると、アイルランド民謡をJacob Millerが?ジャマイカでJacob Millerを聴いた?など色々想像してしまう。あとシングル「CComplete Control」のプロデュースがリー・ペリーって何?とか。

 The Clashはその後も色々変化していきますが一旦この話はここまでで。The ClashとThe Clashにまつわる話、また別の切り口で書けたらと思います。