Guide to Swamp-My Favorite R&R,R&B 7 inch vinyls その1
text by Kazuhiro Ogiwara/Mule Team
パンクに出会い、THE CLASHからTHE ROLLING STONES、そこから自然な流れでリズム・アンド・ブルース、ブルース、ソウルミュージックに興味を持ち、所謂元ネタを探してレコードを買う、ということをやっているうちに7インチレコードに魅了されていきました。
元々パンクが好きなので7インチレコードシングルというフォーマットに馴染みがあり好きだったんですが、色々と聴いていくなか出会ったCRYPT RECORDS等の数々のコンピとの出会いが更に奥深い沼の入口だった気がします。
R&B、ソウル等のジャンルに括られる音楽だけではなく、色んなジャンルの7インチも収集しているのですが、そんな自分の好きな7インチレコードをこの機会に何枚かチョイスし、それを通してアーティストを紹介していけたらなと思っております。少しでも興味を持ってくれたらうれしいです。
JACKIE SHANE – ANY OTHER WAY/STICKS AND STONES(1963)
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タブーであるだけでなく違法であった時代に、トランスジェンダー女性として人生を送った、カナダを活動の拠点としたアメリカはナッシュビル出身のシンガー、JACKIE SHANEの1963年のシングル。
このANY OTHER WAYという曲は、元々WILLIAM BELLがメンフィスのSTAXから62年リリースした曲のカバー。アップテンポでポップなオリジナルも最高なんですが、彼女のバージョンは落としたテンポにピアノとホーンが絡み、哀愁と気だるさが相まって感動的な仕上がりになっています。聴くたびに彼女の切なく、力強い感動的なボーカルに打ちのめされる、自分にとってはとても大事な曲。
B面はSTICKS AND STONESで、これはレイ・チャールズが1960年に録音した曲。オリジナルのラテンドラムのリズムをフルスロットルで刻み、ハイテンションで歌う彼女の歌声にふっ飛ばされます。
このシングルに出会って、こつこつと彼女のシングルを集めていたのですが、このJACKIE SHANEというシンガーは謎が多く情報もあまりありませんでした。が、シカゴのNUMERO GROUPがやってくれます。2017年に彼女の音源をまとめた2枚組LPを出すんですが、これがすごくて。
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ジャケットの写真からもう最高なんですが、今まで謎に包まれていた彼女の事が書かれた立派なブックレットが付いていて、2016年当時のインタビューを元に、PARLIAMENT/FUNKADELICにメンバーとして誘われていたのを断って以降消息がわからなかったという彼女の半生、見たことない写真など今まで見たことも聞いたこともない情報がたくさん載っていてとても興奮したものでした。NUMERO GROUPのこの愛しかないリリースはほんとにお勧めです。興味がある方は是非彼女の音楽に触れてみてください。
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このNUMERO GROUP最近特にすごいですね。ここ数年の一番級の個人的大ヒットのCHARLIE MEGIRAの発掘や、少し前ですがまさかのCRIMPSHRINE再発(!)等多岐にわたる良質なリリース、ほんと頭がさがります。ちなみにこのシングルもジャケット付きで再発されていますよ。
Jackie Shane は2019年に残念ながら亡くなってしまっていて、彼女の新しい音楽が生み出されることはもうないのが悲しいですが、このシングルは自分にとって一生聴き続けるであろう大事な宝物です。
THE FLYING STARS OF BROOKLYN NY –
MY GOD HAS A TELEPHONE/LIVE ON(2017)
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ニューヨーク、ブルックリンを拠点とするソウルシンガー、AARON FRAZERの別名義でのプロジェクトTHE FLYING STARS OF BROOKLYN NY。ちなみに彼はDURAND JONES & THE INDICATIONSというバンドのドラム兼ボーカルでも活動しています。
DR.JOHNの晩年のアルバムやSHANNON AND THE CLAMSの最新作のプロデュースも素晴らしかった、最近は色んな所で名前を見る活躍目覚ましいDAN AUERBACH(THE BLACK KEYS)プロデュースでのソロアルバムも昨年出て、それも大変素晴らしかったですが、自分の中のAARON FRAZERといえばこれ。
THEE SINSEERS等個人的に好きなバンドのリリースも多く、ロック部門(?)KARMA CHIEF RECORDSからも良いリリースが続く、絶好調COLEMINE RECORDSより2017年に出されたこのシングル。4トラックカセットで録られたというローファイでスウィートな珠玉の一枚。
彼のルーツであるというゴスペルフィーリング溢れる楽曲と、彼のファルセットボイスが本当に染みます。所謂スウィートソウル好きの方だけでなく個人的には初期のDON COVAY等のアーリーソウル好きな方にも聞いていただきたい。自分は何かあった時にこのレコードを聴いて気持ちを落ち着かせています。去年ジャケット付でAARON FRAZER名義で再発されていますので是非どうぞ。
つづく