Guide to Swamp-My Favorite R&R,R&B 7 inch vinyls その2

text by Ogiwara/Mule Team

NOLAN STRONG WITH THE DIABLOS – I WANT TO BE YOUR HAPINESS/ ARE YOU MAKING A FOOL OUT OF ME(1965)

個人的にすごく影響を受けているバンドにメンフィスのOBLIVIANSというバンドがいまして。僕は好きになったバンドがカバーしている曲からオリジナルを聴き、そこから深く掘っていって色々なことを知り、広がっていく….そういう行為が好きで、どんどん音楽にのめり込んで行ったんですが、自分が好きになったバンドはそういう引き出しがとんでもなく多いバンドが多く、たとえばTHE CLASH,THE ROLLING STONES,THE CRAMPS等彼らから教えてもらったことはとても多く、大きな影響を受けています。

OBLIVIANS(その後の活動も含む)も自分にとってはまさにそういう存在で、もちろんOBLIVIANS自体も最高なんですが、メンバーがやっている全てのものがかっこよく、彼らに教えてもらったI WANT TO BE YOUR HAPPINESSもそんな曲のひとつです。

OBLIVIANSのJACK YARBERと GREG CARTWRIGHTがOBLIVANSの前からやっていたバンド、COMPULSIVE GAMBLERS。彼らがOBLIVIANSの活動をはさんで2000年に出したアルバム”CRYSTAL GAZING LUCK AMAZING”

Compulsive Gamblers – Crystal Gazing Luck Amazing(2000)

アルバムに入っているYOUR HAPPINESSの原曲がこのNOLAN STRONGのI WANT TO BE YOUR HAPPINESSでした。一瞬でこの曲に心奪われ、夢中で調べました。これがカバーである事、デトロイトの伝説的なレーベルFORTUNE RECORDSから出ている、何やらこのNOLAN STRONGはあのスモーキーロビンソンのヒーローだったらしいぞ!等色んなことがわかり一人ニヤニヤしていたもんでしたよ。

このアルバム、他にもあのDO YOU LOVE ME?でお馴染みTHE CONTOURS のシングル曲WHOLE LOTTA WOMANのカバーや、後にGREGが結成するREIGNING SOUNDのライブレパートリーにもなる世紀の大名曲STOP AND THINK IT OVER等が収録されていて、捨て曲無しの自分にとっては大事なレコード。興味を持った方は是非聴いてみてください。

スモーキー・ロビンソンに影響を与えたと言われるファルセットボイスで歌われる本曲、あなたが春につむ花になりたいと歌われる歌詞通り、まさに幸せな一曲です。

NICK WATERHOUSE&THE TURN-KEYS – SOME PLACE/THAT PLACE(2010)

カリフォルニアの若きR&BシンガーNICK WATERHOUSE。このシングルが出た当初、すごいやつが出てきた…と驚愕でしたが、それから早10年以上。このシングルは2010年、自身のレーベルPRES REOCORDSよりのファースト7インチ。

PHIL SPECTORがウォールオブサウンドのほとんどをそこでレコーディングしたというゴールドスタースタジオで、当時の機材を使いアナログ録音されたという拘りまくりの本作。

このファースト7インチに衝撃を受けて以降、彼の出した音源は全て追っかけて、彼の初来日からの全ての来日は全て行き、その際に彼がDJをやる時等も行けるときは全部行っているくらい好きなシンガーです。(その際の選曲も最高でした)

彼はよくレトロ、とかヴィンテージミュージックとかよくわからない言葉で表現されていることが多く、たしかに彼のルーツである50年代、60年代のリズム・アンド・ブルースからの影響はもちろんあるんですが、ただの懐古主義的なR&Bではなく、違う7インチではTY SEGALLのIT#3という曲をカバーしていたりするんですよね。そういうモダンな感覚とのバランスが個人的にはたまりません。(TY SEGALLは彼の昔からの仲間らしく、ファーストアルバムではレコーディングに参加していたり、YouTubeではTYと一緒にTHEMのGLORIAをやっている動画あり)

また、最新シングルではTHE SEEDSのPUSHIN’ TOO HARDのカバーをやっていたり、しかも完全に自分のものにしていて、すごく懐の深さを感じます。一昨年はライブ盤(2枚組)、昨年は最新アルバムが出ていてそちらも最高です。

Nick Waterhouse– Live At Pappy & Harriet’s In Person From The High Desert – Vol. I & II(2020)
Nick Waterhouse‎– Promenade Blue(2021)

確か2回目(?)の来日時、CHARLES SHEFFIELDのIT’S YOUR VOODOO WORKINGという僕の好きな曲をカバーしていて、興奮した僕はどうしても彼と話をしたいと思い、サイン会が始まる前のほんの一瞬の隙をついて突撃して話しかけに行ったのもいい思い出。

ライブでは毎回滅茶苦茶テンションの高い最高のSOME PLACEが見れますよ。皆さん是非次回の来日へ!

BRICE COEFIELD – CHA CHA TWIST/TEMPTED(1960)

2009年に自分が昔やっていたバンドでアメリカをツアーしたのですが、その時のセットリストでカバーをやろうということになり選んだのが、GINO WASHINGTON のOUT OF THIS WORLD。この曲はデトロイトのガレージパンクバンドTHE DETROIT COBRASのファーストアルバム”MINK, RAT OR RABBIT”で知りました。

The Detroit Cobras ‎– Mink Rat Or Rabbit(1998)

このアルバムは全てカバーで構成されており(そもそもバンド自体がそういうコンセプト)、TRACEY ULLMANのカバーでお馴染みのBREAK-A-WAYやOBLIVIANSのカバー等知っている曲もあるにはあったのですが、ほとんどが知らない曲ばかりで、聴くもの全てが新鮮で、原曲をしらべて聴き漁りました。

OUT OF THIS WORLDと共に大好きな曲がこのCHA CHA TWIST。このアルバムの一曲めを飾る曲で、曲名通りラテンのリズムを取り入れた泥臭いR&Bナンバー。ずっと探していたこのシングルをようやく見つけたときも嬉しかったなあ。

2022年1月
DETROIT COBRASのボーカル、レイチェルナギーが亡くなった。2009年のツアーを最後に自分のやっていたそのバンドも解散した。色んな事を思い出しながら今レコードを聴いている。

DETROIT COBRASは、OBLIVIANSやCRYPT RECORDSと共に自分に色々なことを教えてくれた大切なバンドの1つだ。ありがとうレイチェルナギー。安らかに。