Interview-Tsuneglam Sam/YOUNG PARISIAN New 7’’Skool Boyz / Psychotic Lolipop

YOUNG PARISIAN-Skool Boyz/Psychotic Lolipop(2022)

in the middleの連載”ダムドという名の深き森”でもお馴染みのYoung ParisianのボーカリストTsuneglam Sam。今回は2022年3月15日リリース予定、Young Parisianとしてsplitを含む通算6枚目のNew 7inchEP”Skool Boyz / Psychotic Lolipop”について取材を行い、読者の方も気になっているのであろう”ダム森”執筆の経緯や、グラムロックへの熱き想いなどについても語ってもらった。
やはりその慧眼っぷりに驚かされるインタビューになった訳だが、これが”Tsuneglam Samという名の深き森”の入口となるのか…
Interviewer-Murakami,Miyapon/in the middle
Photo-諸田 英明

Tsuneglam Sam/Vo

EL ZiNE vol.53Bollocks No.059のインタビューも読ませていただいて、まず気になった事なんですが、曲はツネさんが作ってるんですよね?

そうですね、ほぼ僕が作ってますね。

どうやって作ってるんですか?

初期はアコギで作ってたかな? 途中からは頭で。頭っていうか鼻歌?それで、スタジオ行ってメンバーからギター借りてその場で弾いて伝える感じで。簡単なコードくらいは知ってるんで。

あーなるほど、頭の中でアンサンブルがなんとなく鳴ってる感じなんですね。

ただ、それは初期の頃で、その頃はベースラインまで細かく考えてたこともありましたね。基本的にライヴのアレンジではなくレコーディングしたものが頭に浮かぶんですよ。ホーンとか鍵盤とかストリングスとかSEも含めて。

曲作りは今はまたちょっと違って、例えばドラムパターンとかベースラインだけを持っていって、それにギターが好きなようにあわせる感じですね。最近はそれが多いかな。ヒップホップのトラックづくりみたいな打ち込みの手法をバンドでやってる感じです。

頭の中のイメージを元にスタジオでジャムっていく感じですか?

うーん、でもなんかジャムってとかセッションして作るというとちょっと違いますね。やりたいイメージはハッキリしてるので。偶然みたいなのはゼロじゃないけどそんなになくて着地点はだいたいわかってる感じです。自分は楽器を弾くわけではないので、気持ちいいリフやフレーズをやりながら曲にしていくみたいな作り方ではないです。

バンドで楽器を弾いていない人の曲の作り方が気になってお聞きしたんですが。もっと言うと、他のインタビューでも話に出ていた何でもグラムに変換するというグラム脳みたいな話について突っ込んでお聞きしたいです。例えばカバーするにしても自然とそうなるって事ですよね?

そうそう。よくやるのが50年代の曲を脳内で70年代に移動させてやってみたりとか。例えばBo DiddleyとかElvis Plesleyを70年代のバンドがやったらこうなるだろうとか。

あとよく考えるのが、80年代の音楽を1回50年代にまで戻して仮定としての原曲を作り、それをもう1回70年代のグラム感覚でやってみるっていう。

分かりやすく言うと、Bow Wow WowとかAdam Antの曲を50年代だったらどうやるかを1回考えて、そこからそれを更に73~4年くらいバンドの感覚でやるみたいな。説明すると複雑に聞こえるかもしれないけど、自分としては自然にやってる感じです。

そういうことを自然にやっているんですね。

パンクをそれ以前の音楽に還元してからそれをグラム化するとか。例えばテンポを落としてコードをシンプルなブギーに変換して、それをグラムにするみたいな事をよくやりますね。

うちのメンバーは僕みたいにいろいろ言葉で説明はしないけど、そこで的確なアレンジ、プレイをしてくれるんですよ。だから「グラム化」出来てるんですよね。みんなグラムロックをよくわかってるんで。

Keiji Ronson/Gt

グラム化、グリッター化についてお聞きしたんですが、そもそもグラムロックって何?みたいなところをツネさんの定義で教えていただけたらと。グラムをあまり知らない人にも分かるような感じで。僕もグラムと呼ばれているバンドで好きなバンドは色々ありますが、音楽的にはなかなか一つに括れないというか…

「グラムなミュージシャン」と「グラムロック的な曲」という2パターンがあるのを前提としてわかってもらいたいんですが、僕らはどっちのパターンもやりたいと思ってます。

グラムロックもまた深き森ですが、そこに括られてるものには共通する匂いがあると思うんですよ。答えになっているか分からないんですが、「パンクなんて音楽はない」、「パブ・ロックなんて音楽はない」、「パワー・ポップなんて音楽はない」、メディアが付けたものでバンドごとにそれぞれ違うし全部単なるロックンロールだとか言われたりするのと同じく、グラムロックってジャンルもないと思うんですよ。

でも同時にそこで「ない」っていうのはナンセンスだと思う。例えばBrinsley Schwarz、Chilli Willi And The Red Hot Peppers、Eddie And The Hot Rodsを一緒にパブ・ロックと言うのは…

あーサウンドは違ったりしますもんね。

そう思うけど、パブ・ロックって言葉に惹きつけられてバンドを組んで曲を作った人もいるし、それでレコードを集めた人もいて、そこから新たなものが出来上がってると思うんで、やっぱりそこには共通のものがあると思うんです。「ないけど、ある」っていうことですよ。

それと同じような意味で、Roxy MusicからGary GlitterとかBay City Rollersまでかなり音楽性の開きはあると思うけど、それらが全部グラムと括られた後に影響を受けて出来上がった文化が確実にあるし、そこには共通の匂いがあるんです。

で、それって何だろうと考えたときに、1個言えるのはアンチ・ヒッピーだと思うんです。いや、アンチって言うと違うかな? ヒッピーもトレンドの一つだし、グラムと無関係ではないと思うんで。アンチではなく……逆の方向性ですかね。

ヒッピーのようなナチュラリズムではなく加工してあるもの。分かりやすく言えば合成着色料とか、服にしても蛍光だったり派手なニュアンス、それが1個だと思うんです。

Sparkle/Dr

もうひとつは、トランス・セクシャル性。男は男らしく、女は女らしくだった時代に、それを曖昧にしたスタイルでやるという。もっと言えば「キャムプ」が最重要なんですけど、これは口で説明するのが難しいのでググってください(笑)。そこに更に付け加えるとすると70年代のグラムは50年代のロックンロール・リバイバルだったってことですね。

「ヒッピーと真逆にいく」「トランス・セクシャル性」「ロックンロール・リバイバル」の要素があり、共通した匂いがあるものがグラムロックかな。

なるほど、分かりやすいです。

そういう意味でもパンクに繋がるというか、いつも言ってるけどグラムとパンクは地続きだなと。

その時代なりのカウンター・カルチャーという要素、新たな価値観を提示しているってのがあったんですかね?

うんうん、そうですね。

例えば前の世代の「Tシャツにジーンズ」に対するアンチ・テーゼみたいなのもよく語られますよね?

その辺はちょっと難しいところで、グラム・ファッションってやっぱりロック・スターのステージ衣装でしょ。モッズとかロッカーズとかスキンズとかテッズと違ってトライブじゃないので。モッズの発展形ではあると思うんですけど…Marc BolanもDavid Bowieも元々モッズだったけど、彼らはその美学を極めていってグラム・スタイルになった部分もありますよね。

ただそれと同時に彼らはスーパー・スター、ポップ・スターなんで衣装として着てるわけじゃないですか。だからその辺はちょっと難しいところですね。

今話してて思ったけど、モッズとかモデットもちょっとセクシュアリティがあいまいなファッションや髪型だったりしますよね。もしかしたらそこからも来てるのかな?って今喋りながらちょっと思いました。

音楽的な話では先程50年代のロックンロール・リバイバルという話もありましたが、ブギーのリズムというパターンが1個特徴としてありますよね?ただ、それがグラムかって言うと…

そうなんですよね。じゃあStatus Quoがグラムかっていうとちょっと違うし。そこに中性的なものや人工的な感じとか、バブルガム感が含まれていないとグラムではないのかなって思います。

中性的ってのが大きいんですかね?

うん、やっぱりそれは欠かせないんじゃないですかね。ダム森でも書いた話ですけど、John Lennonがグラムのことを“口紅を塗ったロックンロール”と例えた話。それでいくと僕は最初のグラム・ロッカーはEsqueritaだと思うんですよね。Little Richardって言いたいけど、Little Richardのスタイルの元がEsqueritaだから。ロックンロールに口紅を、という。

Esquerita ‎– Esquerita!(1959)

だからJohn Lennonはさすがだなと。もしかしたらグラムロック・ブームへの揶揄だったのかもしれないけど真髄かもしれない。メイクしてるけど単なるロックンロールじゃんと言いたかったのかもしれないけど、本当に的を得ていると思う。

そういう意味ではそこからも地続きなんでしょうね。

グラムとイコールではないかもですが、ゲイのロックンローラーとかシンガーって昔からいるじゃないですか。お化粧したり衣装で羽根つけたりとか。それに励まされた人は多いと思うんで。

映画「ヴェルベット・ゴールドマイン」の世界じゃないけど、自分も化粧していいんだ、キラキラした服着てもいいんだって思った少年はいたと思うから。 

ツネさんがそういう考えに至ったのは色々総合された結果だと思うんですが、身の回りにまんまお手本のような人はいないように感じました。

もともとジュリーとか一風堂やYMO、清志郎と、そしてDavid Bowieみたく男で化粧をしてる人が子供の頃から好きで影響デカいんですけど、音楽的にはいろんなものが好きなんですよ。

あの……周りの友人たちと明らかに違うと思うところがあって、僕はロックが好きというより音楽自体が好きなんですよね。音楽の中でロックが一番好きってだけで、そんなに詳しくないけどシャンソンもジャズもクラシックも民族音楽もヒップホップも好きなんです。

そして更に言うと“歌手”が好き。だからあまり周りの人と話が合わないんですよ。バンドやってる人ってみんな楽器やってるじゃないですか。Gene Pitneyが好きとか、Scott Walkerが好きとか、Marc Almondが好きとか、Frank Sinatra好きとか色々あるけど、歌手が好きですね。

その感覚はあまり人と共有できない。The Smiths好きっていうよりMorrisseyが好きですからね。Johnny Marrのソロ一枚も持ってないです(笑)

あまり似た感覚の人がいないってことですね。

もしかしたらむしろバンドやってない人の方が話が合うのかも知れないですね。楽器やらないからってのは大きいと思いますよ。やってたらもっと違った聴き方してたと思います。

でもダム森ではそれが面白かったです。ヴォーカル論、ヴォーカルのテクニックの話もあったし、その後はヴォーカリスト論になっていったじゃないですか。

僕らの世代はバンドブームで、高校くらいからバンド始めて、その時ヴォーカルだった人で今でもやってる人は多分少ないでしょ? その頃はお調子者だったりモテる人がヴォーカルだったりするから。楽器のおもしろさに目覚めたりしないからやめちゃうっていうか。

かといって自分は歌がすごいうまいヴォーカルでも決してないし、歌の奥深さに目覚めたりもしてないので特殊かもしれませんね。弦楽器3人いるのに曲をヴォーカルが作ってるっていうバンドもあんまりないかなと思います。

Car All/Gt

その辺は最初の方の質問でお聞きした曲作りの話にも繋がりますが。

もちろんギターやベースのリフとかフレーズ、ドラムのビートがあって曲は完成するので全部を僕が作ってるともいえないのですが、歌メロは無尽蔵に出てくるんですよ。誰かが適当に弾いているリフとかにも、歌メロをすぐ乗っけられる。

それは子供のころからオールディーズとかいっぱい聴いたからじゃないかな?歌のメロディって60年代まででだいたい終わってるって思いますし。70年代以降の音楽での歌い方って、分解すると60年代までの歌い方でしかないんじゃないかな。

例えば(当時センセーショナルに出てきたバンドだった)Nirvanaとかレッチリが新しい歌い方とは思わないし。なので、オールディーズとかそれ以前のルーツ・ミュージックを色々聴いているからいくらでも歌メロが出てくるのかなと。

なるほど。こういう話、やっぱ面白いですね。今回の音源についてですが、先程グラムの説明としてブギーのリズムという特徴の話もありました。Young Parisianでもそういう曲は多いと思うんですが、今回はちょっと違いますよね?

そうですね、シングルはいつも何らかのイシューにしてるんで。

テーマを決めてやってるという事ですね?

前回のThe BubblesとのスプリットはBovver Rockイシューだったので、今回はまた違った感じで。実は3rdアルバム作れない状況というのもあるんですが、シングルが好きだしシングルで毎回遊びたいという感じです。

THE BUBBLES / YOUNG PARISIAN – two pints ‘n’a lover SPLIT 7″EP

今回のイシューとしてはサイケ・ポップ、60年代を引きずった80年代っていう感じです。ペイズリー・アンダーグラウンドとか。もちろん最終的にはグラムに落とし込んでますけどね。フレイバーとしてはSladeとかRoy Wood(ELO、Wizzard etc)とかが入っていると思います。

ライブでも印象的な曲ですし、どういうテーマかと。

いつも何かしらのイシューを考えてるんですよ。次はどうしようかな、みたいな。あと、メンバーがみんなロック・ファンなので、常に飽きさせないように考えてるところはあります。僕がプレゼンしている感じかも知れません。

Young Parisianはもう20年目なんですが、色々なタイプの曲とかカヴァーをたくさんやるのはメンバーを飽きさせないためなんですよ(笑)。もちろんそうじゃないと自分も飽きちゃうし。でも、グラムって深いし飽きないんですよね。他のジャンルだと飽きちゃってるかもしれない。

グラムは色々幅があるんで、ブレてみたいけどブレようがなくて(笑)。たとえば僕らがディスコやEDMをやっても、へヴィ・メタルや和モノやっても違和感ないでしょ?

確かにそうですね。

ブレようにもブレれないんですよね。自分的にはNew York DollsのロゴみたいなTシャツ作ったらブレてると思うけど(笑)。そういうベタなことはしたくないです。特にNew York Dollsは気を付けてますね。

Young Parisianを始めたころよくNew York Dollsを彷彿させるとかレビューに書かれたけど、曲自体にはドールズの要素あまりないですからね。ギター二人のプレイにはあると思うけど。

あとDavid Bowieっぽい曲もないと思う。たぶんボウイはピアノでも曲を作ってると思うんですよ。なので具体的な影響という意味ではT.Rex、Gary Glitter、Suzi Quatro、Sparksが大きいかなと思います。

Eko Ostrich/Ba

David Bowieっぽいと言っても、ボウイっぽいというのがどういうものなのかというのも人それぞれかも知れませんね。一般的にはMick Ronsonと組んでいた時期?と思ったりもしますが。

まだZiggy Stardust期“っぽい”曲すら作れてないですね。だからやってないこと出来てないことがたくさんあるんですよ。枝葉をやってるだけで。ディスコ化とかハードロック化とか。ボウイみたいなのもドールズど真ん中もやってないですし。

話を戻すと、Young Parisianを始めた当時ジョニサンとかNew York Dollsっぽい人は日本にもいたんですよ。でもそれとは違う事をやってみたかった。もっとイギリス寄りのグラムを。

あと、2000年代初めにExploding Hearts以降のSoda Pop KidsとかThe Time Flysとかいろいろいたでしょ? そういうグラム風味のあるパワーポップ的なバンドは色々買って聴いたんですけど、グラムつっても大体そこにThe Stoogesが入ってて、そこも外したかったんですよ。

Young Parisianの色ができてからはまったく気にしなくなったんだけど、最初は考えてました。New York DollsとかThe Stooges影響のバンドは大味なバンドが多かったので、もう少しきめ細やかなことをやりたかったんです。

今も同じような現象で現行のバンドでBovver Rockのバンドが海外にはいっぱいいるんです。もれなくチェックしてて、Giudaが当たったからその影響下のバンドなんでしょうけど、個人的には買っても買ってもよくなくて(笑)。Bovver Rockって言ってるけど、ジャケがそれっぽいだけで曲の良くないただのOiバンドでしょっていうのが多くて。

今流れはBovver Rockに行っててもちろんそういうのも大好きなのですが、そろそろDavid Bowie、Roxy Musicみたいなエレガントで王道的なグラムにトレンドは戻るんじゃないかな?むしろ戻したいなと思っています。

Bovver Rock勉強不足ですみません。

オブスキュア・カルチャーの一環でしょ。おもしろい視点、切り口だと思いますし、深掘りした結果でしょうね。ガレージ掘ってた人が、Killed By Death とかに飛びついて、そこからPower Pearlsとかいって。その次はジャンクショップ・グラムで、今はBovver Rock。もうオブスキュアなものの発掘は全ジャンルあるから視点を変えてやってる感じですよね。

そこから戻って、また本流のものや有名どころを別角度や視点で聴くのが流行るんじゃないかなって思ってますが……どうだろ?そういう意味でもオブスキュアなものではなくThe Damnedの再検証をしたのがおもしろかったのかなと思います。

今回のリリースのレーベル、Hello From The Gutterの紹介をお願いします。

レーベルをやってる松田さんがいい意味でとても狂ってまして(笑)。信頼できる素晴らしい方です。最初のリリースはIdoraかな。MasonnaやBoris、プンクボイからFlashlights、Americoもリリースしてて。

レーベルについては毎回すごい拘っていて、1stアルバム、2ndアルバムはTime Bomb、1stシングルはMajestic Sound、あとはあのAA Records、The BubblesとのスプリットはThe Bubblesのレーベル。そうやってイシューにあわせて色々な所から出したいですね。

どこともうまく噛み合うってことですよね。

バンド活動自体がそのつもりでいるので。世界中見ても特殊なバンドだと思いますよ。パンク、ガレージ、モッズ、ロカビリー、ゴスのイベントどれにでも出られるグラムバンドって世界でYoung Parisianだけですから。

”ダムドという名の深き森”

The Damned ‎– Damned Damned Damned(1977)

話をin the middleで書いていただいた「ダムドという名の深き森(通称:ダム森)」に。連載ではツネさんの分析、考察の鋭さや面白さはもちろんですが、結果的には当初狙っていたツネさんのパーソナルな部分にも切り込めたかも?とも思うのですが。

(ダム森で書いた通り)物事をいったん疑ってかかるようにはしてますね。たとえばDamnedでいえば1stは本当にそれまでにない新しい音楽だったのか、つまりパンクは本当に新しい音楽だったのかということとか、2ndは本当に駄作なのか、ゴス期って言われる時代はゴスでいいの?とか。

僕は元々ロカビリーやガレージやサイケも好きで、歌手やホラー映画も好きだし、そういうものが集結していたのがDamnedだったんですよ。なのでDamnedのルーツに関してはお勉強的な感じではなく興味のあることを調べていってると全部繋がったっていう感じですね。

あの連載では自分自身で発見もいろいろあって楽しかったんですけど、最初は「これ書いてて楽しいけど、果たしてみんなは面白いのかな?」って不安もありましたね。おかげさまで評判もよく、会う人会う人がおもしろかった!って言ってくれて、そっからDamnedのルーツの話になる。

だからこういう風にダム森の話してればYoung Parisianでやろうとしてることも自然と色々浮かび上がってくるんじゃないかなと。ってなった時にYoung ParisianはThe Damnedと同じなんじゃないかなって……今だいぶ恐れ多い偉そうなこと言いましたけど(笑)

実は元々The Crampsについての記事をお願いしたいってのがあったんですよね、僕的には。

そうでしたね。ただCrampsには本当に影響は受けてますけど、特にこれといって新しい切り口もみつけれないし、Crampsはそんなに聴き手に誤解もされてない気がしたのでDamnedみたくおもしろくは書けなかったと思います。

いつもいろんなとこで言ってますけど、Young Parisianというか僕のやり口はCrampsに近いです。結果論ですけどね。編纂とかエディットの感覚が。ガレージもロカビリーもノベルティソングもエキゾチックもCrampsというフィルターのもとでまとめあげられるじゃないですか。本来それらは個々で繋がってなかったかもしれないのに。

The Cramps ‎– Songs The Lord Taught Us(1980)

フリッパーズ・ギターなんかもそうですよね。ネオアコと映画音楽とソフトロックと当時リアルタイムで流行ってたイギリスの音楽なんかをDJのエディット感覚でまとめあげてる。ちょっと違うかもだけどYoung Parisianで曲作る時もブレイク・ビーツの手法をバンドでやってるみたいなとこはありますね。ネタとしていろいろ聴いて、それを取り入れたりするという意味で。

今はメンバー・チェンジがあったからそんなことはやってないんですけど、昔はドラマーだけにイヤホンで特定の曲を聴かせて叩いてもらったりとか。ドラム以外のみんなは元の曲聴いてないから全然別モノになるでしょ?そういう実験をやってみたこともあります。

まぁでも分解とか分析は自然とクセがついてるとこもあって、わかりやすく言うと例えばDamnedからNew York Dollsの要素を発見したらそこだけ拡大して再構築してみるとか、この曲のもとはサイケなんじゃないかな?と思う曲があったらよりサイケにしてみるとか……なので、結局ダム森で書いてあるようなことをバンドでもやってる感じです。

ダム森のあの文章の様なニュアンスで曲を作っているということですよね?

そうですね。結局元ネタとかルーツが見えないと面白くないんですよね。特に日本では元ネタなしのミュージシャンのオリジナリティ、歌い手の個性のようなものが良しとされる“自分ロック”みたいなのがありますけど、ああいうのはホント苦手ですね。

僕もカッコいい音楽にはだいたい何かしらルーツがあると思います。突然変異のようなものがないとは思いませんが、自分が発明したみたいのもちょっと違うと思いますね。

そもそも自分の個性うんぬんとか考えないんですよ。なんかの真似したとしても結局その人の個性って出るし、自分にしかできないものになるんですよね。

日本の音楽やアートはこれまでの文化の文脈をぶった切って、その人の人間的な個性とかオリジナリティといった感覚を偏重する傾向はありますよね。

Young Parisianでは「グラムの名曲、グラムの名盤を作りたい」という気持ちだけでやってますが、歌詞とかで「俺の言いたいことを聴いてくれ!」ってのが中心になっちゃうと、自分もそうなっちゃうのかもしれないですね。僕は幸いにも生業がライター業というのもあるし、自分の言いたいことを歌詞に込めて歌いたいって気持ちはないですから。とはいえ・・・・こんな世の中ですし、ポリティカルな事を歌にしたい気持ちも勿論あるんですけど。

若いころはそういう葛藤もあったんですよね。父親が市民運動に関わっていた人だったので、その影響もあって子どもの時からそういうのに興味をもって色々参加してたんですよ。その影響でパンクに惹かれたってのも実はあるんです。

なのでその後ロカビリーとかサイコビリーにハマりましたけど、果たして自分はポリティカルな要素が無いバンドやってていいのかって人知れず悩みましたね(笑)。まあボウイもチェルノブイリの問題をテーマにしたりしてますし、別に歌いたくなったら歌えばいいんですけど。

ボウイもグラムも当時はかなりラディカルな存在だったので、明確にポリティカルな意思表示をしていなくても、ある種の政治性を帯びてくる面はありますよね。例えば自分達がいるアンダーグラウンドのシーンなどもそういう要素があると思いますが。 

Time Will Crawl(1987)チェルノブイリ原発事故が歌詞に直接影響しているが、ボウイ自身もキャリアの中で特に気に入っていた曲だという。

また、ダム森のように文化の歴史や流れを体系的に捉えたり、色んな切り口から音楽やバンドを評するっていうのは、いわゆる自分が好きな海外の音楽では普通にやってきている事だし、ある意味では自然なやり方だと思うんです。

ただ、日本でポピュラー・ミュージックを語る時に、ああいう風に読み解いていくことってあまりされないですよね。そこに違和感を感じる時があります。「ガツンと来る」とか「聴いているとこういう感情になる」とか、そういう感想もいいと思うんですけど、あまりにもそれだけになってしまうと、いわゆる文化としては成立はしていないんじゃないかと。

難しいことは置いといて聴いてかっこよけりゃいいじゃん!ロックンロール!イエ―!ってのももちろん大事なんですけど。日本であまりロックやポピュラーミュージックが体系だてて語られないのは、それはやっぱり日本にロックンロールが根付いてないってことなんじゃないですかね。

例えば、日本では漫画がものすごく身近な日常としてありますけど、それだって手塚治虫がいて、藤子不二雄がいて、楳図かずおがいて、大友 克洋とかがいてっていう、歴史や流れがあるわけじゃないですか。映画でも黒沢明がいて小津安二郎がいて…って漫画描く人や映画撮る人はある程度のその流れを把握してますよね。評論する人もそれを踏まえて語る。日本においてロックってものはそういう流れが一個一個、分断、分断、になっちゃってるんじゃないかな。特にパンクにそれが顕著ですね。

ダム森にも書きましたけど、「ロックは死んだ」とか「I  Hate  Pink Floyd」を真に受けちゃった人が多かったというか、それはやっぱり日本ではロックが日常的じゃない、自然に存在するものじゃないからしょうがないんでしょうね。我々の住んでる国はラジオからLittle Richardが当たり前に流れてきたり、子どものときにテレビつけて普通にMarc Bolanが出てたような世界じゃないわけで、やっぱりロックを自分に取り込むにはどうしても勉強するしかないんですよね。

ロンドンにいったときにパブのジューク・ボックスにThe Stranglersがたくさん入ってて、ああThe Stranglersが日常に普通に存在してるんだなってしみじみ思いました。自分たちにはその感覚がわからないから、どうしても詰め込むしかないんですよね。もちろんそういうものが当たり前ではないが故の突然変異的な面白さはあると思いますけど。

なるほど。確かに子どもの時から普通に身近にあると無いとではかなり違いが出てきますよね。ただ、やっぱり自分も前段階とか周り、相対的な視点をすっ飛ばして、いきなり自分の内面的なものを「個性だ」っていう風潮が苦手で。果たしてそれは個性と言えるのかと思う時があります。

そうですね。なので、レコードたくさん買ったり聴いてる人のバンドはやっぱりいいですよね。身近な話でいえばガレージにしてもトヨゾー君(The Fadeaways)とかが作る曲って信頼できると思いますよ。

自分が好きになってきたバンドやアーティストは、そうやって自分たちのオリジナリティを獲得してきたりしたわけですしね。

そうですね。超個性的な誰もマネできないぶっとんだスタイルをやりたいとかも自分にはないんですよ。そんなことやるんだったら既存のジャンルの中で良い曲をつくりたいって思いますし。まだまだなんですが。

音楽やる上でいわゆる自分の物差しになっている方はたくさんいるんですけど。例えばLaughin’ Noseのお二人とか、Fifiさん(Teengenerate/Firestarter)とか、Liquid Screenの今井さんや井上さん。LRFのヒロキさんやモリカワさん(estrella20/20,idea of a joke,younGSounds,and more)とか。もちろんJoe(Alcohol)さんもそう。

その中でもゆらゆら帝国の坂本慎太郎さんからはすごい影響受けてて。ゆらゆら帝国が「しびれ」と「めまい」ってアルバムを同時に出した時に話したことがすごい印象的で。それ以前はFUZZバリバリのヘヴィサイケだったのが、ガラッと変えてフレンチ・ポップとかバカラックとかみたいな“名曲”アルバムを作ろうとしたって言ってたんですけど。

今はテクノロジーで高音でも低音でも、歪みでもいくらでも過激にできるし、ノイズミュージックやアヴァンギャルドも確立してる。じゃあ、泣ける曲やいわゆるいい曲をつくるのが自分にとって最も過激なアプローチなんじゃないかと思ってって言ってたんですよ。かっこいいなーって。それにいまだに影響されてるとこありますね。

ゆらゆら帝国 ‎– ゆらゆら帝国のしびれ(2003)
ゆらゆら帝国 ‎– ゆらゆら帝国のめまい(2003)

ゆらゆら帝国の最後のアルバム「空洞です」もギターソロが一切入ってなくて代わりにサックスソロなんですよね。ダサくてある意味禁じ手となってたようなアーバンなサックスをあえて入れて、ちっともダサく聴こえないめちゃくちゃかっこいい仕上げにしてて。あれはすごいな。そういう坂本さんの発想に本当に影響受けました。指針ですよ。

だから速いとか激しくてうるさいとかじゃないやり方で、僕なりの過激なロックンロールをやりたいです。

過去のインタビューでも、怖い顔しないとか、がならないって言っていましたが、それはその言葉から来ている姿勢なんですね。

まさにその通りです。なめんなよ!って思いつつもなめられるように仕向けて行きたいと思います(笑)

Young Parisian-Discography

2006年 1st Album ‘’Young Parisian‘’/Time Bomb Records

2009年 2nd Album ‘’All That Glitters’’ /Time Bomb Records

2014年 1st single ‘’Last Time Boogie‘’/Majestic Sound Records

2016年 2nd single  ‘’Glam Rock Apocalypse’’/AA Records

2017年 Split 7’’EP Young Parisian / Vivian Boys / Hello From The Gutter

2019年 3rd single‘’Unicorn Lady c/w Amanda Lear’’/ Time Bomb Records

2020年 Split 7’’EP ”two pints ‘n’a lover” THE BUBBLES / Young Parisian/Bovver Crazee

2022年 4th single’’ Skool Boyz / Psychotic Lolipop’’/ Hello From The Gutter