90s Garage Punk -Immoral Artwork

text by Toyozo(The Fadeaways)

初めに言っておくが、僕は人種、性別、出自、宗教etc.によるあらゆる差別には反対である。同時にバイオレンスや犯罪行為も当たり前の事だが反対だ。
ここんとこネットの世界では盛んに「90年代の日本では、いわゆるサブカルチャー、悪趣味、ドラッグ、エロスなどがもてはやされた時代」と言われ、アーティストや著名人?の過去の悪事を暴くのが流行っているらしい。まあそれはどうでもいいとして、「90年代はそうゆう時代だった」で片付く話なのだろうか?

自分の好きな90sガレージのバンドのコンセプトやアートワークにも、今では「アウト」とされるようなものが結構あるのである。でもそれは当時のインディーズ、DIYの復権の中において、所謂メジャーの規制を受けない所から(メッセージ性のあるなしに関わらず)、他人の興味を惹く過激なアートが出てきたということで、悪趣味の時代だから〜とかとは何かもうちょっと別の話だと思う。
ともあれ、今では人権意識の高い国とされているアメリカの90sガレージバンドの中から、いくつか問題なジャケットを紹介したいと思う。

エロス、グロテスク

Dwarves – Blood Guts&Pussy(1990)

とにかくなんと言ってもDwarvesである。Dwarves自体は90sガレージの範疇だけでは語れないバンドではあるが、とにかくエロス、グロテスクのお手本のような過激なジャケットを見れば、大人は眉をしかめ、多感な若者は興味を持っただろう。トラッシュかつカオスなサウンドを正に表すジャケットだと思う。この後のリリースもこのジャケット路線を貫いている。しかし Dwarves に関しては(当時は知らんけど)VoのBlag Dahliaはものすごい常識人だと思うし、ポリシーもしっかりありそうだ。障がいのある人や女性を蔑視している様子は個人的には感じられないから、割り切ってやっているのだろう。
(ちなみに2016年にカリフォルニアの某フェスで一緒になったときは、物販スペースで話しかけたコアなファンにだけ、無修正のヤバいジャケの Dwarves のレコードを奥からこっそり出してくれるシステムだった笑)

鉄十字

The Finks – Dirty Rotten Fink(1994)

ガレージパンクの代表的なアイコンとしてアイアンクロス(鉄十字)モチーフがある。バイカー、ホットロッド好きの好んだデザインであるが、Stoogesのロン・アシュトンかはたまたFuzztonesの影響か、ガレージパンクやサーフものでもよく使われる。鉄十字自体はアウトではないが、これに鉤十字を組み合わせるとナチズムのシンボルとなるわけで、一歩間違えると誤解されがちなアイテムではある。ちなみにガレージパンクの音楽性にナチ崇拝思想は皆無である。

巨乳、ヌード

Oblivians -Never Enough(1994)

このレコードに限らず、Obliviansのジャケは裸の女性のものが多い。ティーンネイジャーの興味があるものといえば女の子だろ!的なことか。B級〜Z級ムービー再評価の影響か、ラス・メイヤー的な金髪巨乳ギャルのアートワークはとても多い。SMの要素を含むベティペイジネタもよく使われた。あとはLas Vegas Grind的な世界観でストリップネタも多い。良いか悪いかは別として、男はこうゆうジャケは気になって見てしまう。

殺人鬼

Zodiac Killers -Have A Blast(2001)

ゾディアック事件は1968年から1974年にかけて、カリフォルニア州で起きた未解決連続殺人事件である。サンフランシスコのバンドがこのテーマをバンド名に取り上げるというのもなかなかだなと思う。裏ジャケにも犯行声明的な文が書かれており、ゾディアックのシンボルマークまでしっかりある。ちなみにVo,BaのGregはSupercharger, Rip Offsであり、90sガレージを代表するような毒舌ヒールキャラだ。(根は良い人)

番外編

Reatards -Teenage Hate(1998)

ジャケは問題ないが、バンド名が。知恵遅れ、知的障がい者を意味するスラング”Retard”からきている。スペルを若干変えてはあるものの、早逝したVo,GtのJay Reatardのスペルミスによるものだという話も。

ほんの一部だが、どうだったでしょうか?
ちなみにここで自分が言いたいのは不適切だとか、恥ずべき文化だ、とかではなく、そうゆうカルチャーが確かにあったし、それを喜ぶ人たちも一定数いたということであり、2021年現在の倫理観に照らして、それを単純に否定したり無かった事にするのは違うかなと思う。
今回はガレージパンクのレコードで紹介したが、パンクやメタルにだってこんなジャケットは山ほどあるし、要はバンドを始めたクソガキやオタクの悪ノリなわけで、誰も人を傷つけようとか、貶めてやろうなんて思ってやってないのである。
もちろん捉え方は人それぞれだけど、僕は紹介したバンドのレコードを、いまの自分の価値観といかに折り合いを付けて楽しみ、付き合っていけるかだと思います。素晴らしい内容のレコードをジャケットだけで判断するのはもったいないかなと。まさにYou Can’t Judge A Book By The Cover (Bo Diddley)である。