Interview – TINA / SHEER MAG

SHEER MAG – Need to Feel Your Love(2017)

米 フィラデルフィアの現在進行形のバンドSHEER MAG。これまでリリースした2枚のアルバムの完成度の高さに驚いた方も多いだろう。コロナ禍以前の2018年には初来日も果たしたが、ライブがまた凄かった。一発でぶっ飛ばされるパワフルなサウンド(トリプルギター!)とそれにビクともしないTinaのソウルフルなボーカル、THIN LIZZYばりのギターワーク…会場もパンパンでハードコアやパンクの人たち、女の子たちもたくさん来ていて盛り上がりまくっていた。そしてライブ前の楽屋にてインタビューを行った際には、メンバーはみな気さくに話しかけてくれ、Tinaはステージ上のアグレッシブなイメージとは違い、とても穏やかでキュートな表情で話していたのが印象的だった。
今回、諸事情からお蔵入りしていたインタビューをin the middleにて公開することになりましたが、来日ツアーを企画し、インタビューの機会をくれたBlack Holeに改めて感謝します。
Interview & Text – Jun/Hazy Sour Cherry
Tlanslate – B.B.Clarke
Photo – Teppei Miki

SHEER MAGはどのようにして結成されましたか?

作曲・作詞を担当しているコア・メンバーはみんな Purchase College(ニューヨーク州立大学パーチェス校、略称:スニー・パーチェス)というアップステート・ニューヨークにある大学に通ってたの。在学中にやっていたバンドで一緒にツアーしたりしてたんだよね。

それから大学を卒業して、みんなでフィラデルフィアに引っ越したの。各メンバーがやってたバンドはもう解散してた。それで一緒にバンドを組むことにしたの。最初に出した7インチは、みんなで住んでいた家で録音したものよ。

同居していたんですね。なぜフィラデルフィアを選んだんですか?

ニューヨーク市内って家賃が高いの。生活費を稼ぐために仕事ばかりしてたら、バンド活動がなかなかできない。フィラデルフィアは安いし、ニューヨークにも近いから。

SHEER MAGのスタイルはどのように確立していきましたか?

同居してた家で、カイル(Gt)とハート(Ba)が二人で実験的な録音をしてたんだよね。スタジアム・ロックのパロディを遊びでやってたの(笑)。だけど、本気でやりたいという思いもあったみたい。

それで私がボーカルを担当することになった。二人が録音したカセットを聴きながら、マット(Gt)と私が歌詞をつけたりした。“What You Want”なんかはその時できたの。そういう流れでどんどん曲を増やしていったわ。

スタジアム・ロックですか!

カイルがやりたがっていたの。ギターがすごく上手だし、そのジャンルなら自分のスキルを発揮することができるから。もちろん、私もそういうバンドが好きだよ。

あと、やっぱりパンクの人って歳をとると、ああいうジャンルを懐かしく感じるんじゃない? メンバーは皆いろんな音楽を聴いているけど、共通点としては全員がTHIN LIZZYやBOSTONが好きなんだよね。あとはSTEELY DAN、RUSH、FLEETWOOD MACとか。

なるほど。初めて聴いた時、SHEER MAGはパンクと言うよりもロックンロール度が高いバンドだと思いました。そういう意識はありますか?

私たちのDIYなやり方と活動してるシーンはどっちかというとパンクだよ。でも、やっぱり私たちのサウンドはパンクではないわ。キャッチーな曲を作ろうとしたり、メロディーを複雑にしようとしたりするからね。活動はパンク・アティチュードで、サウンドはロックンロールかな。

Tinaがバンドに興味を持つようになったのはいつからですか?

ちょっと恥ずかしいことだけど、高校生の時にエモが流行っていたの。好きになってライブを観に行くようになったわ。大学に入ると、友達にOtis ReddingやEtta James、Al Greenなど聴かせてもらった。その時、「こういうスタイルで歌いたい」と思ったわ。エモやパンクよりも、そっちの方が私のボーカルに影響を与えていると思う。

幼少期から音楽は好きだったんですか?

母親はそんなに音楽に興味なかったわ。父親はマニアックだったね。でもヤツは子供の頃に全然いなかった。いても泥酔しているか、クスリでハイになってるか。子供の頃の自分にとっては怖い存在だった。だけど、もしまともだったら私の良い音楽の先生になっていたのかも。

そうだったんですか…

当時はニューヨークのロング・アイランドで暮らしていた。お金持ちの人もたくさん住んでたけど、私たちはそうじゃなかった。母親は仕事をいくつも掛け持ちしていたから家にはあんまりいなかったの。おかげで遊び放題、騒ぎ放題、暴れ放題というか(笑)

奔放だったんですね(笑)

そういう経験があったからか、根本的なところから「音楽をやりたい」という気持ちが出るんだよね。ミュージシャンでその気持ちを感じてる人はけっこういると思う。「音楽しかできない、やるしかない」という気持ち。私はここまで音楽活動させてもらえて本当に嬉しく思うの。いろんな不満や不安をステージの上で解消している。それがなかったらおかしくなってた。

バンドの他に仕事はしてますか?

していないわ。1stアルバムを出してからすごく忙しくなってきた。私たちは自分たちでマネージメントしているから、金銭的なやりとりとかは分かりやすいわ。その代わり、作業は全部自分たちでやらなきゃいけないわけ。大手のレーベルが付いてたらもっと楽だとは思うけど。

フィラデルフィアのシーンはどうですか?

盛り上がってるよ。パンクとかD-Beatのライブはよく行ってる。でも、小さなハコは警察の取り締まりによってよく休業や閉店になったりするの。ツアーを組む時もフィラデルフィアはスキップするバンドも多い。「どうせニューヨークが近いから」という考えでさ。ちょうどいいサイズのハコがあんまりないのもあるね。クソ狭いハウス・ショーか、けっこうな金額の大きいハコのどっちか。

よく観に行くバンドは?

メンバーがやってるTHE GUESTSとThe SMARTHEARTS。前のドラマーのバンドSTAGGER。DARK THOUGHTSもいいね。あとPENETRODEかな。

以前、インタヴューでTinaが、ライブ後に背中を触ってきた男性に対して「私の目の前から消えて」
と言ったエピソードを読みました。世の中やナメた男性に対する姿勢のあり方で影響を受けたものはなんでしょう?

まあ、さっき言ったあらゆるところから来ているんじゃないかな。自分自身の価値や、どんな人生を送るべきかってことを誰かに押し付けられたくないだけよ。SXSWでライブしたとき、泥酔した男が勝手にステージに上がってきて自分のモノを出そうとしたり、邪魔をして来たの。だからステージから突き落としてやったわ。客席の床がコンクリートだとわかっていてもね(笑)

ライブ終わったあとにそいつがやってきたの。謝っていたけど全然反省してる様子もなく。多分、ステージから突き落としたのを私に謝ってほしかったんだと思う。だから、「ふざけんな、馬鹿野郎。さっさと散れ」と言ってやったわ。

音楽はその姿勢に影響を与えていると思いますか?

ロックンロールだからね。「ナメてるやつはを許さない」というスタンスを求められていると思う。私は許せないと思ったら、その場ですぐに遠慮なくダメなところを指摘する。ボコボコにしてもいいなら、すぐそうするしね(笑)。日本ではみんなすごく優しかったからそんな事はなかったけどね。

それはよかったです(笑)

それとウチのメンバーは全員、SKIZOPHRENIAを見るのをすごく楽しみしてたんだよね。NIGHTMAREもすごくよかった。他にもいいバンドがいたんだけど、名前が思い出せない。脳みそがバンドまみれで(笑)

これからのバンドとしての予定は?どうなっていきたいですか?

とりあえず、アメリカに帰ったら曲作りに取り組むよ。来年には2ndアルバムをリリースしたい。まあ、あとは音楽をやりたいだけだね。他にできることないからさ。いまさら就職できると思う? 履歴書には6年も空白があるってのに。

Tina’s All Time Favorite Song Top 3

1.THIN LIZZY / Do Anything You Want To
2.THE BAND / We Can Talk
3.HEART / Barracuda

*本インタビューは2018年に行ったものです。