in the middle RADIO- Falling Down House Diary
text by Kohei Matsuda/満州候補者
最近、音源買っても一回聴き流してそれっきりみたいなのがルーティーン化しつつあって経済的にも体験的にもmottainaiので購入した音源の日誌をつける事にしました。その中からのお気に入りをお裾分けします。テキストの方はほとんど裏取り無しの印象、伝聞情報なんで話半分でお読み下さい。
Track list
1-0:00 Nala Sinephro – Space3
2-1:08 Fela Ransome-Kuti And The Africa ’70 With Ginger Baker – Ye Ye De Smell
3-13:04 David Bowie – All Saints
4-16:22 Kool Kieth – Rockets On The Battlefield
5-20:35 Wesley Willis –Wesley Wilis And The Dragnews
6-23:19 George Russell – Electronic Sonata For Souls Loved By Nature – 1968: Part 1 (Events I, II, III, IV, V, VI, VII)
7-49:03 Sarif Keita – Lony
8-56:46 David Bowie – Weeping Wall
9-1:00:04 Anton Et Quentin – Sans Titre
10-1:06:45 Defunkt – Knuckle Sandwich
11-1:24:56 David Bowie – Warszawa
12-1:30:53 David Bowie – Lady Stardust
1. Nala Sinephro – Space3
エレクトロニクスとジャズフィーリングの融合、というとブレインフィーダー系が思い浮かぶけどまさにそういう感じの音。出してるのはWARPだけど。ノンビートなアンビエント感とビートミュージック感のバランスが面白い。確実にヒップホップ以降のビート感だけどアンビエント感邪魔しない様に押さえ気味にしてるようだ。
2.Fela Ransome-Kuti And The Africa ’70 With Ginger Baker-Ye Ye De Smell
鉄壁の演奏力。ライヴ録音が良い方向に出て空間的広がりの有るモダンな音に聴こえる。ジンジャー・ベイカーとの相性は悪くなく、ベイカーの持つロックフィーリングがフェラの西洋的モダニズムを嫌味なく引き出してる気がする。インタープレイが素晴らしい。
David Bowie
3.All Saints
8.Weeping Wall
11.Warszawa
ベルリン三部作の二作目。よくクラウトロックを引き合いに出されるけど感触としてはむしろニューウェーブに近い。ニューウェーブをクラウトロックに影響されたパンクロックと仮定すれば着地点がたまたま近いところに来た、という事だろうか。サステインが全く無いスネアの音とか音響に意識がかなり向いてる印象。メロディ、ハーモニーみたいな古典的な楽曲理解に音響、というちょっと脱構築的な視点を積極的に持ち込んだのがクラウトロックとして、おそらく最大のインスピレーションとして参考にしたのはFaustなんじゃなかろうか。本人はKraftwarkやTangerin Dreamをよく聴いたみたいな事言ってるみたいだが。ニューウェーブと着地点近いけどパンク→ニューウェーブという道筋を辿った人では無いので(パンクムーブメントに関しては、本人曰く遠い所の出来事と感じてたらしい。)ニューウェーブとのズレも有ってそこもなかなか興味深い。インスト曲が結構ある所にボウイの本気を感じる。*All SaintsはRykodisc盤のボーナストラックとして収録。
4.Kool Kieth-Rockets On The Battlefield
アフロフューチャリズムを色濃く感じさせるコンセプト。エレクトロで未来的、ミニマルなトラック。アウトサイダー(アウトローではない)な感覚が強い。ファンクフィーリングは勿論有るが、インダストリアルに近い感覚も有る。Dalek,The Disposable Heroes Of Hiphoprisyなどにも近いアブストラクトインダストリアルヒップホップ。後半、オーセンティックなヒップホップの影響も強くなるが、前半の4曲は境界を越える白眉の出来上がり。Chino Amboy,Moore Mother,Dedekint Cut,Soul Gro,などのブラックカルチャーのアウトサイダーのオリジンの一つか?
5.Wesley Willis-Wesley Wilis And The Dragnews
アメリカのシンガーソングライター。統合失調症で画家でも有ったらしい。wikiによるとテクニクスKNキーボードの自動伴奏機能を使って作ったメロディーに乗せて歌うのが特徴、とのこと。YouTubeに大量に音源有るけど裏SSTやMen’s Recovery Projectみたいなローファイでオブスキュアなパンク感が有る。テンタクルスから何枚か出している。
6.George Russell-Electronic Sonata For Souls Loved By Nature – 1968: Part 1 (Events I, II, III, IV, V, VI, VII)
ジャズ、現代音楽、民族音楽の全部盛り。1968年に録音されたもの(他の年代の録音も有り)。全部で14章からなるみたいだけどここでは半分の7章で。モダンジャズで始まり、アブストラクトな電子音、民族音楽、フリーインプロなパートが挟まれ、また最初のテーマに戻る、という。当時のジャズファンの多くは聴いてポカンとしたに違いない。そして現代のジャズファンの多くもそう違わない反応をすると思う。曲としての出来が悪いという訳ではもちろん無く、現代においてもその先進性を保ってるので、おそらく未だにその楽曲の持つ可能性が展開されてないのではないだろうか?先進的なものでも広まれば一般性を獲得していく。ミュージックコンクレート→サンプリングなんかが良い例だけど逆に言えば可能性がそこには有るわけで、Floating Points/Pharoah Sanders/The London Symphony Orchestraの「Promises」が受け入れられて高評価を得ている事を考えれば、ようやく時代が追いついて来てるのかも。
チャーリー・パーカーがエドガー・ヴァレーズに作曲技法を習うはずだったが、パーカーの急逝でそれは叶わなかった。もしパーカーが生きていたら?その後の音は?という問いの答えに一番近い所にいるのがラッセルだと思う。
7.Sarif Keita-Lony
ファーストのジャズファンク色からかなりポップス寄りになった3作目。Talking Headsみたい、だけど勿論逆である。とは言えジョー・ザヴィヌルプロデュースなのでかなり欧米を意識してるのかな?ファーストは複雑なアフリカンポリリズムだったがかなり聴きやすい、四拍で割れるようなビートの曲になってる。ここら辺はアフリカンポリリズムを求める人には評価が分かれそう。この曲は祈りのようで素晴らしい。
9.Anton Et Quentin-Sans Titre
ベルギー?のアウトサイダーアーティスト?詳細不明だけど医療機関に入所してるらしい。不安定なアコギに不安定なボーカルが乗る彼岸フォーク。不安と同時に安らぎも感じる不思議な作品。いくつかネットにそれらしき音源が有るが、だいたい同じような作風。
10.Defunkt-Knuckle Sandwich
Art Ensemble Of Chicagoの創設にも関わったらしいJoseph BowieがContortionsのメンバーと1978年に結成したバンド。初期にはヴァーノン・リードやメルビン・ギブスも関わったとか。初期のアルバムは確かにノーウェービーなガシャガシャしたサウンドだけど94年発表のこのアルバムはだいぶスムースになったファンクロック。今聴けば時代を感じさせる音だけど、これもまたブラックカルチャーのアウトサイダーの源流の一つと考えると感慨のようなものも感じたり。この曲は時代も感じなくて非常に素晴らしい。*再発盤のボーナストラックとして収録。
12.David Bowie-Lady Stardust *original demo version
掛け値無しの大傑作。ボウイって初期はあんまり歌うまくないと思うのは俺だけだろうか。でもこっちの方が好きだな。ボーカルライン作るのが上手いのではないだろうか。ボーカルライン作るのがうまければ最高になる、とそういう意味で言えばこの頃は究極のヘタウマ、と言うか。下手まではいかないか。テクニカルではないくらい。耳に残るラインバンバン作れる人って事なのかも。