R.I.P  King Louie Bankston Days of Memphis/New Orleans

King LouieのGoner最初期の作品&
最初のバンドThe Royal Pendletonsの作品

2022年2月12日、King Louie(Royal Pendletons/Persuaders/Bad Times/The Exploding Hearts/Terry&Louie, etc.)が49歳で亡くなった。自分は2019年にTerry&Louieのジャパンツアーを企画し、自身のバンドThe Fadeawaysで各地を共に回った。そこで起こった数々の出来事は決して楽しい事ばかりではなかったが、有意義なツアーだったと思う。彼の死についてはまだ自分自身消化しきれていない部分があり、その事自体について今はまだ語ることはできない。
しかしながらここ数日彼の音源を聴き返すうち、King Louieとその音楽を産み、育てたニューオリンズそしてメンフィスという地にまた想いを馳せるようになった。以前episode soundsのbiscoくんがberthtvで掲載したd/i/s/c/o/sのインタビューではGt,Voカトウさんのその地での素晴らしい体験談を聞くことができ、自分自身非常に興味深いものであった。今回ここに再掲することでまた多くの方に読んでもらい、その地のシーンの奥深さを感じてもらえたら、また誰かがKing Louieの音楽を知るきっかけになったらいいと思います。
Toyozo/The Fadeaways

※以下は2015年8月にd/i/s/c/o/s,Mule Teamの加藤氏、赤月氏に行ったインタビュー。

加藤君は昔からメンフィスによく行ってるけど、最初に行こうと思ったキッカケは?

加藤(以下K)一番本当に最初に行ったのは17歳の時、93,94年くらい?

どうして行こうと思ったの?

K-Mystery Trainとか見てたから、ジム・ジャームッシュの。それでメンフィスに興味を持って、とりあえず行ってみようと。その時はまぁ2、3日で観光だけしたのかな。次に行ったのが、20歳くらいの時かな。 Obliviansをレコードで聴いてたから、ライブが見たいなと思って。

Oblivians – Soul Food(1995)

前の時も一人で行ったの?

K-前も一人だよ。

どうやって一人で行ったの?携帯も無い時でしょ?

K-携帯は無い。Eメールとかも無かった。まぁとにかく行こうと思って。

雑誌とか見て?

K-いや、何も見ずに。とりあえずは行けるから行ってみようかなみたいな。

行ける日程の中でライブやってればいいなくらいの感じ?

K-そう、完全に見に行こうと思って行ったから。ネットとかも無いし日程も知らないし何もわかんないけどとにかく行ってみようと思って。んで行って泊まる所もどこも無くて。

赤月(以下A)-その頃から英語喋れてたの?

K-そんなでも無いけど…ちょこっとくらい。行ってダウンタウンに何も無くてプラプラ歩いてたら一個だけ楽器屋(Rod&Hanks)があって、楽器屋にポッと入ったら、その時、俺CrampsのTシャツ着てて、店員から「良いTシャツだね」って言われて、それが楽器屋で働いてた人でJeffrey Evansだったんだよね。”68 Comeback(ObliviansのGreg Cartwrightも在籍)”って俺がすごい好きなバンドのボーカルなんだけど。Jeffrey Evansと会って「実は Oblivians見に来たんだ」って言ったら、いや「Obliviansもう解散したよ」って言われて(笑)

Jeffrey Evans – I’ve Lived A Rich Life(2002)

今みたいに情報が無い時代だもんね。

K-「こないだ解散したけど、もしかしたら何かやるかもしれないし、とりあえずこの道まっすぐ歩いて行ったらマップルームっていうコーヒーショップがあるからそこに行ってみな。」って言われて。そこに行って実はこういう事で来たんだけどなんかライブ無いかって伝えて。

MAP ROOMでの最初期のKing Louie One Man Bandのライブ

そしたらそこの店員がすごい喜んでくれて、その人がObliviansの友達で。んで色々やってくれてじゃあJack( Obliviansのメインメンバー。ソロでも活動中)を呼んであげるよってなって、Jackが来たりして。そこで色んな人と会ってじゃあ家泊まれよって言って泊めてくれる友達(のちにGoner festのDVDを製作することになる人物)とかも出来て。

で、その時は結局Obliviansは見れなかったんだけど、The Neckbonesってミシシッピの凄い好きなバンドがそのマップルームでライブをしたりしてて、あとMr.Airplain Manも出てた。その時のThe Neckbonesがめちゃくちゃかっこよくて…でまぁそんな流れで、泊まる所も友達も結構出来たから、そこから毎年行ってる。

The Neckbones – Souls On Fire(1997)ポスター

毎年休まず行ってるの?

K-最近は休んでる(笑)

それでも10年以上は遊びに行ってるんだね。

K-17、18回は行ってる。そんで毎年行ってる間に色んなバンドと出会うと音源をくれるんだけど。その中には、世に出てない音源とかもいっぱいあって「もったいないな。これを日本で流通させたいな」って思ってレーベルを始めたんだ。

それがHeart of Chrome( 加藤氏の自主レーベル)なのか。

K-そう。「7インチもやりたいな」って思ってたんだけど、まぁ金掛けるのはまだ後にしようと。で、CD-Rとかでやってた。まぁそういうことをやりつつ、俺はどちらかというと宅録とか趣味で音楽をやる程度の方が好きだったから、演奏するよりはそういうCDを作ったりとかDJやって人に聴かすとかそういう事をしたいなってずっと思ってた。

Heart of Chromeはディストロみたいな感じ?

K-うーん…なんていうのかな、一応こっち発信にはなってたかな。The Oscarsとか。

The Oscarsとかって全然日本でレコード売ってないよね。

K-The Oscarsの1stはディストロみたいな感じで扱って、2ndとかは音源があってこれで適当にやってくれと渡されて、こっちでCD-R作ったりとかはやってた。

The Oscars – American Idol(2004)

それがいつ頃?

K-それが2006年とかからかな?

その時のお客さんってどんな人がいたの?メールオーダー?

K-メールオーダーもやってたし、Barnhomes(オーナーはレーベル”1+2 Records”も運営)に置いてもらったりとかで。

その当時のメンフィスってどんなバンドがいたの?

K-最初に仲良くなった友達がVegas ThunderってバンドをやってたJoeって人で。当時ギターウルフがメンフィスでよくライブやってた時に前座やったりしてた。そのバンドがJack obivianのプロデュースでSympathy for the Record Industryから音源出してたりしてたね。

Vegas Thunder – No One Fucks With Vegas Thunder(1999)

あとVegas Thunderのメンバーの一人Ben(ex-Red Forty)がもう一個バンドやってて、それがLucero。で、その時はまだLuceroはあまり人気が無くてVegas Thunderの方がメンフィスで人気があったかな。Vegas Thunderが解散してBenはLuceroで結構ビッグになって、もう一人のボーカルのJoeはポートランドに引っ越してDark Skiesってバンドをやってた。Joeは本当に一番仲良しで、彼に会いにポートランドにも行ったし。

Lucero ‎– When You Found Me(2021)

A-それでDead Moon見たんでしょ?

K-そう。あとね、一回メンフィスに行った時に一か月くらいいたんだけど、「実はニューオリンズに行きたい」ってある友達に伝えたら、「じゃあ友達がバケーションで今行ってるからそこに泊まればいいじゃん」って電話してくれて、着いてみたらQuintronの家だった、Quintron and Miss Pussycatの。Quintronは当時から有名人で、 Obliviansの3rdでオルガン弾いてる人。

Quintron & Miss Pussycat ‎– Goblin Alert(2020)

それはGoner Recordsからも出してるの?

K-Gonerからも出てる。んでその時に一緒に住んでた子がChristineって子で、その女の子がその後に結婚するんだけど、その結婚相手がShaggyっていうPersuadersのメンバーで。そういう関係があってShaggyとChristineと俺とKing Louieで一緒に遊んだりして。当時Ernie k-doeがMother in law loungeっていうクレイジーなお店やってて、そこ連れてってもらったりして。

Mother in law loungenにてKing Louie(右)
Ernie K-Doe(左端)と
King Louieと(1998年)

それでもう帰るって時にLouieが2枚7インチをくれたんだけど、それがPersuadersだった。家に帰ってその7インチを聴いたらぶっ飛んだ。衝撃的にかっこ良かった。それがさっき話した2度目のメンフィスで、それで完全にハマったんだよね。すごい音楽やってるやつがいるんだなって。

その当時Jay Reatardと知り合ったりしなかったの?

*Jay Reatard – 数多くの作品を残し、若くして亡くなったガレージパンクシーンの奇才

K-Jayとはそんなに仲良くなってないんだけどね。彼に出会う前にChristineが「今のメンフィスだとThe Reatardsが一番面白い」って言ってて。数年後には会うんだけど、俺の友達とかはJayの素行が嫌いで…要するにパーティとかでみんな楽しくやってる所に行って一人でふてくされてケンカして帰るみたいな、嫌なやつだみたいな。だから俺の中ではあまり良いイメージが無かった。その後に仲良くなったAbeやChuckってThe OscarsのメンバーがJayと一緒に住んでたから家に遊びに行ったらJayがいるみたいな感じで、それくらいだよ。

A-それってBad Timesと知り合う前?今Sick ThoughtsのDrew Owenが第二のJayって言われてるよね。

*Jay Reatard、Eric Friedl(Goner records)、King Louie在籍のスーパーグループ。最高!

Bad Times ‎– Bad Times(2001)/Goner Records

K-Bad Timesは2002年とかそれくらいでしょ。それでその当時はGoner Recordsもまだあんまりタイトルが出てなくて多分5,6とか。

A-加藤くんGonerの0番のテープ持ってなかったっけ?

K-そうそう、Obliviansのテープ。マップルームの友達がくれたんだよね。その頃なんてGonerは形が無かったし、オーナーになるEricなんてどこにいるかも全然わからなかった。2005年くらいかな?その辺からGreg(Greg Cartwright/Oblivians)がレコード屋をやり始めて、2年くらいやってたんだけどもう辞めるって言って、そこをEricが受け継いでGoner Recordsになったの。それやるまでは全然Gonerは影も形も無かった。

でも当時その辺のバンドとかを観ていた日本の人ってきっと加藤君しかいないよね。

A-だから自分がその辺を聴き始めてObliviansとか知って、加藤くんと話してたら「メンバーが友達だよ」とか言われてちょっとぶっ飛んだね。なんでこんな人が近くにいるんだって(笑)

K-まだいっぱい話はあるんだけどどこから何をつまみ出したらいいかわからない(笑)

Gonerの店舗が始まって以降のメンフィスはだいぶ変わったんだね。

K-ハッキリ変わったなって思ったのはGoner Festが始まってからだね。今までメンフィスにそんなものがあるなんて知られてなかったし。でも、かなり多くの人がそういうところに注目して集まってきたのは確か。

あんだけ小さい街でも、その街でどんな音楽があって、どんなバンドがいてっていうのはみんな知らなかったよね。

K-知らなかったと思う。Jack Oblivianのことですら知られてなかったと思う。あとGonerが出来る前からよく遊んでたNick DiabloがThe American Death Rayってバンドをやってて、そのバンドも衝撃的にかっこよかったんだけどそんなに知名度は無かった。当時はSympathyとかMisprintってレーベルから出してたんだけど、音楽的には本当に優れた音楽が多かった。それでもそんなに知られてなかったね。The Oscarsなんかも全然知られてないしね。今年あたり行こうかな、頑張って。

The American Death Ray ‎– Death Ray Breakdown(2000)

A-あの話好きなんだよね、Obliviansの再結成を見に行ったって話。

K-いつか忘れたけど、Obliviansが再結成するっていうHozac のChicago Blackout っていうフェスがあって。

A-The Goriesとか一緒じゃなかったっけ?

K-そうそう。ちょうどメンフィスに居た時で、The Persuadersも再結成で出るってことでEric OblivianとPersuadersのShaggyとメンフィスから車で一緒に行って。Obliviansのリハ終わりに主催者が用意してくれたJackのホテルの部屋を見に行って、その時にJackはクラブハウスサンドウィッチを頼んだんだけど、金もってなくて俺が出した(笑)。そのイベントはThe Gories、Dead Moonも出演していて楽しかったよ。

2015年8月ビスコ氏(episode sounds)がインタビューした記事を再掲しました。
2021年1月の加藤氏のインタビューはこちら