2022年よく聴いた音源
text by Ushi-Number Two
年越してしまいましたが、2022年のよく聴いたレコード・カセ
(順不同)
1.CLASS / CLASS
US・アリゾナのツーソンを拠点とするCLASSのデビューカセット。Feel it recordsより。Power Popというジャンル分けがずっと難しいなーと思っているのですが、もしかしてこれが正しくPower Popしているってやつか?と思えてしまえるほどにポップでいながらパワー漲るロックナンバーが5曲収録。
捨て曲ありませんが僕はWrong Side of Townがお気に入りです。同内容のLPも9月にリリースされた模様です。
2.SPREAD JOY / Ⅱ
US・シカゴを拠点に活動するパンクバンドSpread JoyのセカンドアルバムがFeel Itから。ほぼコロナ禍な2020年に結成し、2021年のCovid-19真っ盛りの中1stアルバムをリリースしたその翌年2022年に早くも2ndアルバムを爆誕させたその姿勢と行動力がもう強烈なメッセージ。画面の中にはない世界を己の体と頭で生きまくる。2ndアルバムのこちらは前作の音のその先に到達しており、もはやSPREAD JOY節といえるスタイルを確立したと言ってしまいたいです。イケてるジャケットアートワークもボーカルであるBriana Hernandezによるという、DIYなところもグッときます。
3.Phantasia / Ghost Stories
ニューヨークのポストパンクバンドPhantasiaの1stアルバム。とにかくグッドメロディの応酬と疾走感ある冷たく尖る楽曲も飛び出してパンク・ハードコア畑を経て結成されたのであろうことを勘繰ってしまいます。そして、やはりドラマーには今目撃したい私的パンクドラマーベスト3に入るVexxやG.L.O.S.S.でも活躍したCorey Rose Evansが在籍していることも写真で確認できて今後の期待度も上がりました。
4.THE LOUNGE SOCIETY / Tired of Liberty
UKインディーロックが好きで事あるごとにチェックしているのですが、ポストパンク的な影響下の良バンドが2022年もたくさんリリースされた中でも、僕のお気に入りはヘブデンブリッジ出身のThe Lounge Societyの1stアルバム。2021年にリリースしたEPでも重く腰の入ったベースラインとギターのカッティング、そしてそのリズムがどこかSANDINISTA以降のThe Clashを連想させたりして、好きで聴いていましたが、アルバムで超えてきた。より尖りながら縦横無尽なリズムを乗りこなし、踊らせながら駆け抜ける、曲によってはSST的な雰囲気も感じてしまう激烈な一枚。リリース元のSpeedy Wundergroundは興味深い要チェックレーベルです。
5.Syndrome 81 / PRISONS IMAGINAIRES
「アルバムがヤバい」と巷でも話題騒然となったフランスのパリ・パンクシーンとアナザーサイドで鳴るブレスト拠点のパンク・OiバンドSyndrome 81の2ndアルバム。同郷のポストパンクバンドLitovsk等、多数のスプリットとシングル、そしてその編終盤を経て新たにリリースされた本アルバム。Dans Les Rues De Brestは問答無用に2022年の心のアンセム。
6.VIAGRA BOYS / CAVE WORLD
スウェーデン・ストックホルムのチンピラポストパンクことVIAGRA BOYSの3rdアルバム。冒頭曲のBaby CriminalやTroglodyteなどはさながらディスコテーク化されたFun House時代のStoogesのようで、これまでの彼らの到達点ではないかと感じてしまいます。スウェーデン要注目レーベルYear0001からのリリースというのもグッときます。
7.CRACK CLOUD / Tough Baby
カナダ・バンクーバーのアートパンクコレクティヴCRACK CLOUDの3rdアルバム。1stアルバムに収録されているDrab Measuresを聴いた瞬間の衝撃が頭にこびりついて離れないのですが、11月には来日公演も観れた事で印象深い一枚となりました。原始のリズムに乗せて時代が鳴っている、と勝手に思い込んで無心で踊ったライブハウスの景色とセットのレコード。
8.WESLEY GONZALES / Wax Limousine
UK・ロンドンを拠点に活動する彼は1stアルバムの頃から気になる存在でレコードを手にしていたのですが、3rdアルバムにしてポップに突き抜けた感がして最高。80sポップスを現行インディーロックとソウルなアプローチで鳴らすロマンチックダンスナンバーの応酬です。A Taste of Something Newが最高すぎます。
9.HOME FRONT / Think Of The Lie
2021年末の音源ですが許してください。カナダ・エドモントン拠点のHOME FRONTデビューEPがロンドンのLA VIDA ES UN MUSから。ハードコアパンクサイドから鳴らすニューウェイヴはたまたポストパンク、BLITZが1stアルバム以降にきっと誰にも望まれずに目指し完成させたサウンドに光を当て、その素晴らしさをネクストレベルで鳴らす泣きの名盤。バンド始動からコロナ禍にこの1st EPを完成させて2022年9月にやっと1stギグに漕ぎ着けたのも何だか今を生きているバンドという感じします。
10. Lady Aicha & Pisko Crane’s Original Fulu Miziki of Kinshasa / N’Djila Wa Mudujimu
これはヤバい。東アフリカ・コンゴ民主共和国出身、バンド名にもあるキンシャサを拠点に活動するPisko Crane率いるバンドFulu Mizikiと衣装等のデザイナー兼ボーカリストのLady Aichaによるグループ。地球に優しく、アフロフューチャリスト(アフロフューチャリズム: これまで西洋の視点で都合よく構築されてきたアフリカ文化を、改めて当事者であるアフリカに出自を持つ人々のレンズを通して捉え直し、新しい未来を表現)であることを掲げています。使えなくなった電子機器の躯体や廃パイプ、空き缶などを駆使したリズムと彼らの血肉から湧き起こるコールアンドレスポンスが激烈です。Oki dub ainu bandを彷彿とする曲もあったり、とにかく刺激的で痺れます。
11.THE HARLEM GOSPEL TRAVELERS / LOOK UP!
通称’白いオーティス’ ことサザン・ソウル・シンガーEli “Paperboy” Reedのボーカルレッスンの生徒3人組によるNYゴスペル・グループHARLEM GOSPELTRAVELERSがハズさないリリースを続けるCOLEMINEからリリースした新アルバム。もちろん師匠であるEli Reedによるプロデュース。前作も最高ですがこちらも見逃せず、古き良きソウルミュージックやリズムアンドブルースを現代に推し進めたかのような演奏にパワフルなゴスペルコーラス、ボーカルも堪らんです。捨て曲なしですが、Fight On!でぶっ飛ばされます。
12.SOAK / If I never know you like this again
確か2014年、18歳にしてラフトレードと契約して初めてのEP”Be a noBody”を一聴した瞬間が今でも忘れられない衝撃として僕の中に残り続ける北アイルランド出身Soakことブライディ・モンズ・ワトソンの3rdアルバム。自らのジェンダーについてやこの世界に存在する個として”自分らしさ”を追い求め、その旅路で見つけた”歌の記憶”を曲に残し続ける姿がどんな映画にも再現できないドキュメントであって、僕は感動してしまうんです。ブライディさんのパートナーと共に出演しているlast julyのMVもとても美しいです。
13.Empath / VISITOR
激烈なサウンドが記憶に新しいPerfect Pussyのドラマーが在籍、フィラデルフィアのDIYアヴァンロックバンドEmpath、2ndアルバム。曲毎に表情が変わるアルバムとなってますが、前作同様Perfect Pussyで鳴らされていた音を彷彿とするようなノイジーに高速で駆け抜ける激烈ソングBorn 100 timesのような曲も収録されているし、一貫してポップな楽曲と唯一無二なボーカリストEmily Shanahanがやはり素晴らしいなと思います。
14.El Camino Acid / Sunset Motel
1曲目のGet Alongを一聴して2000年代中頃から熱心に聴いたガレージロック的インディーバンド達を思わず連想してしまった(Twin Peaksみたい!と飛び上がりました)US・オハイオ州のEl Camino Acidの2ndアルバム。なんとプロデュースがTwin PeaksのColin Croomで、なるほど!となりました。ポップパンク好きも悶絶のコーラスワークが飛び出すChang The Bankerなど、懐かしさもあり、それでも今のバンドが鳴らす音である事に感激します。ヴィンテージソウルファン御用達であろうColemineからのリリースというのもグッときます。
15. Montaña / EP
2022年の衝撃のパンクニューカマーはこのバンドかもしれないです。スペイン・セビーリャのMontaña。ポストパンクやニューウェーブ影響化のバンドが乱立した近年の中でも、Creoを聴いた瞬間に「攻撃的でありながら踊れる」と感激しているところにスペインならではの哀愁メロディも飛び出して何度も聴いてしまう病みつき盤となりました。今後のリリースも楽しみ。いくつかのレーベル共同でのリリースとなってますが、バルセロナのTORMENTA DE IDEASは要チェックしたいなと思う2022年です。
16.Mick Trouble / It’s Mick Troubles Second LP
Television PersonalitiesやThe Times的diyパンクファンを唸らせ続けるニューヨークのMick Troubleの2ndアルバムが突如リリースされまして、相変わらずの曲たちに歓喜しました。正にUK・diyパンクサウンドがニューヨークから鳴らされていますが、キラッキラのギターサウンドに極上のメロディ、こんなんなんぼあっても良いです。
17.Chronophage / Chronophage
過去2作ではローファイdiyパンクと称されたテキサス州オースティンのChronophageの3rdアルバム。diyの様相はそのままにローファイからは逸脱した音が鳴っているように感じます。どこかThe Fallを感じるのですが、寂しげなシンセと滲み出る哀愁メロディが唯一無二です。
18.NEUTRALS / BUS STOP NIGHTS
先述したMick Troubleと同レーベルからリリースもあり、こちらも正統派UK・DIYパンクサウンドをアメリカ・西海岸オークランドで鳴らす、NEUTRALSの2ndシングル。憧れを追い求め、それを本気で鳴らして自らの言葉で歌い続ければ、それはいつか誰でもないオリジナルとなるその証明なレコード。現代のアンダーグラウンドパンク・ハードコアから絶大な信頼を集め、素晴らしいリリースが止まらないロンドンのSTATIC SHOCK RECORDSからのリリースというのも最高です。
19. Gurs / Gurs
Spanish Civil War from Bilbao!と口走りたくなるようなシリアスで哀愁満載なポリティカルパンクを鳴らすスペイン・バスク地方ビルバオのGurs(ギュルス)の恐らくデビュー7インチ。アンダーグラウンドパンクシーンとポリティカルなシーン双方の繋がりから結成されたという彼らは音もメッセージも見逃せません。バンド名に掲げるギュルス収容所を調べれば、彼らの歌詞も注目したくなる事でしょう。音の面では現行パンクに影響を受けていると自ら語っていてLitovsk、Daily RitualやShort Daysの名前を挙げているのも最高です。好リリース続きのSymphony of Destructionから。
20.The Chisel / Retaliation
2021年末のレコードですがこちらもたくさん聴いたので。待ちに待ったThe Chiselの1stアルバム。スキンヘッズカルチャーを取り込んだNWOBHC(ニューウェーブオブブリティッシュハードコア)の僕的到達点と思える金字塔盤。Retaliationのアンセム感たるや。
21.Tiikeri / Punk on rakkaus EP
2022年の僕的トンデモ盤暫定1位。(リリースは2021年末です、すいません。)現代に鳴らされるフィンランドのRatsia meets The Blue Heartsなスオミパンクなんて誰が想像できたでしょう。手作り感満載なジャケットとブックレットも素晴らしいし、ボーカルにはフィンランド哀愁ポリティカルパンクバンド1981のあの人物が!
22.Liquids / Life Is Pain Idiot LP
大好きなLiquidsのニューアルバムは問答無用のランクイン。今作もインディアナパンク節というかLiquids節満載のキラー盤に仕上がっています。2022年のライブ映像もYoutubeで確認できるし、目の前でライブ見れたら僕はきっとぶっ壊れてしまうでしょう。
23.Straw Man Army / SOS
前作も話題となった注目のD4MT関連バンド、ニューヨークのプリミティブピースパンクデュオStraw Man Armyの2ndアルバム。
生々しい音像と速さだけではない迫り来る静と動、その勢いに圧倒されます。State of the art〜Faces in the darkの流れで悶絶です。
24.The Hazmats / Empty Rooms
2022年ロンドンからの新しい刺客がStatic Shock Recordsよりリリース。調べてみれば巷を騒がすChubby and the gangのギタリストTom Herdwickによる2人組で、こちらで鳴らすのは最初期Primal ScreamよろしくなC86的キラキラギター搭載の激良メロディ飛び交う好7インチ。ミックス・マスタリングはロンドンに移住したであろうFucked UpのJonah Falcoによるものです。
25.Dehd / Blue Skies
2022年末に滑り込んできたUS・シカゴのトラッシュポップバンドDehdの恐らく2ndアルバム。1stアルバムも素晴らしかったのですが、今年聴いたいわゆるインディーバンドの中でも抜群のメロディだな、これは。と感激したのでこちらに書いておきたい一枚です。
26. ΜΠΡΙΤΖΟΛΙΤΣΕΣ / ΜΠΡΙΤΖΟΛΙΤΣΕΣ
2022年に始動した衝撃のカセット専門レーベルdial clubからのリリースには、度肝抜く作品が多かったですが、ブリッヅォリツェスと読むらしいギリシャ・アテネのパンクデュオが凄かったです。激速デジタルパンクとでもいうのでしょうか、スペインのprison affairといい、ノースウェストインディアナ(NWI)パンクが世界に飛び火してそれぞれに誕生するバンドたちにいちいち感激しています。
27.Sports Team / Gulp!
デビュー当時から気になる存在なロンドンのSports Teamの2ndアルバム。冒頭曲のThe Gameのイントロを聴いて「これはパンクロックに寄ったか!?」と思って見逃せないと思ったところThe Dropのセッション映像を発見して「こりゃ想像の斜め上いったわー」とレコード屋に走った一枚。
28.Young Guv / Ⅲ & Ⅳ
ご存知Young Guvの最新作。リリースのペースにも脱帽ですが、そのクオリティの高さも毎度のけぞる良さ。今作もしっかりのけぞりました。冒頭曲のCouldn’t leave U if I triedのThe Byrdsよろしくなアルペジオギターとコーラスワークに悶絶だし、得意のOasis影響下ソングLo Lo Lonelyもあるし、もう参りました。
29.BOSS / Cash Em In
こちらも2021年末作ですが、現代の欧州パンクオールスターのようなメンバーが集まった越境バンドBOSSのデビュー7インチ。その正体はロンドンのChubby & The Gangから2名、パリのRIXE, カナダのモンスターバンドFucked Upから1名という布陣。内容はBovver Rockも呑み込んだ正にUKパンクロック!と僕は思います。
30.High Vis / Blending
福岡のレコードショップBagismのカーター君と話す機会があって、彼がこのアルバム収録のTrauma Bondsのゴアテックスのくだりについて「今年のベストリリック、本当に美しい」と熱く語っていて、「前作の方が好きだったんだよな」と思っていたのを考え直してレコードを買いました。歌詞を見て納得。それが以下です。
若くしてあまりにも多くが葬られた/ 短い人生だ/俺のゴアテックスに涙が/ 俺たちは欠陥品で麻痺してる/パーティーが終わる時に/おしまいだ/ どこに逃げればいい/
俺はこの定めを何年も前から知っている/俺たちは憎しみに駆られているのではない/俺たちは恐怖による奴隷にすぎない/俺たちはまだここにいられて幸運なのか?/俺たちはまだここにいられて幸せなのか?/俺たちはまだここにいて幸運なのか?/
何か正気なことが言えたらいいよな/俺たちが蓄えるトラウマを消してくれるような言葉を/ただ1つだけでいい/続けるための理由、またはトラウマを断ち切る鋭さが必要なのかもしれない
最近、ボビー・ギレスピー本も絶賛読んでいて同じような事ではっ
それでも、音と言葉を探す人生ですが、暮らしの中に見つけること