Interview-中野画美/イラストレーター,Madamloss,Girls Rock Tokyo

「おまえの顔も変わってるよ」(2021)

中野画美
90年代初頭のRiot Grrrlに代表されるフェミニズム・パンク・ムーブメントに影響を受けイラスト制作をスタート。これまでJane Flettの短編小説”dirt”、Spactator、国内外の数々のアンダー・グラウンドZINEなどにイラストや漫画作品を寄稿。フェミニズム、ペシミズム、ギャグ、彼岸、排泄物のガンボのようなラディカルなスタイルは鑑賞者をごく一部に限定するかのような作風だが、其の実きっとあらゆるニンゲンの抑圧された心をブリブリとリリースしてくれるに違いない。
ポートランド発祥のプロジェクトGirls Rock Campをルーツとしたボランティア団体Girls Rock Tokyoのメンバー、2ピースバンドマダム・ロスのメンバーとしても活動中。

Interviewer:Miyapon/in the middle
協力:Eriko/M.A.Z.E.
中野画美:https://lit.link/gaminakano
中野画美店(shop):
https://suzuri.jp/gaminakano

いろいろと活動が多岐に渡るかと思うのですが、まずはイラストレーターとしての活動から聞ければと思います。現在の名義である中野画美としてはいつから活動されてますか?

2年くらい前からですね。名前の由来も適当で、友達と飲んでる時に「菜美(ナミ(本名))ちゃんは絵を描くから『画美』だね」って言われて(笑)。それをそのまま付けました。

絵を描いて発表するという活動自体は15年くらい前からやってたんですけど。当時はRoadside Witch Societyという名義で活動していました。

Roadside Witch Society
「作品名なし」(2012)

Roadside Witch Societyから変化はあると思うのですが、当時から作風としては一貫している部分もあるように思います。視点や強弱の違いなどはあるかもしれませんが、フェミニズムを軸とした社会風刺や、ある意味では露悪的ともいえる自然主義的なスタイルは現在も引き継がれていますよね。

もともと90年代初頭のアメリカから始まったRiot Grrrlムーブメント、パンク・フェミニズムに影響を受けてわたしも何かできないかなと思って活動をスタートさせたんです。

それで自分は趣味で絵は描いていたんですけど、文章を書くより絵で表現する方が得意だと思ったので、音楽や文章じゃなくて私は絵でやろうと思って。最初は描いた絵をZINEにして発信していました。

Riot Grrrlムーブメント
90年代初頭のフェミニストによるアンダーグラウンド・パンク・ムーブメント。その起源には諸説あるが、Bikini Killを旗手として、Bratmobile,Excuse17,Skinned Teen,Sleater Kinney等が関わっていたムーブメントを指す。
児童虐待、レイプ、ドメスティック・バイオレンス、人種差別、家父長制、階級主義、自己虐待としての薬物中毒、過食症、拒食症、アルコール依存症など様々な抑圧と闘うために団結し、コミュニティ形成を行い、DIYによる音楽、アート、ジン、グッズ制作といった政治的な活動から国際的に広がった。
参考:”Punk!The Revolution of Everyday Life”/川上幸之介

政治的にシリアスなテーマを題材としつつもやはりギャグやユーモアもまた中野さんの大きな特徴ですが。もともとイラストレーターとして影響を受けた人はどのような作家なのでしょうか?

基本は少女漫画ですね。姉がいるんですけど、りぼんとか少女コミックとかああいったものを自然と読んでいて。ただやっぱり好きだったのは、岡田あーみん先生の「ルナティック雑技団」とかで(笑)

岡田あーみん先生はすごいですよね。主人公が興奮して鼻血と血尿を同時に出したり、大麻を吸ってしまってトリップしたりとか毎回めちゃくちゃで。90年代の王道少女漫画雑誌でそれをやってるって相当キテますよね。

そうそう(笑)。あーみん先生が少女漫画への入り口でしたけど、「ときめきトゥナイト」とかも夢中になって読みましたよ。

それで小学校高学年になるとコミック雑誌もワンランク上のものも読むようになって。「ホラーM」っていうたまに発売されてたホラー漫画だけ描き下ろしで集めたオムニバス雑誌があって、御茶漬海苔先生とか犬木加奈子先生とかが好きで。

でも一番好きだったのは川口まどか先生でしたね。「やさしい悪魔」っていう霊界と地球を繋いだような世界観の作品があるんですけどめちゃくちゃ面白いですよ。「死と彼女とぼく」とかも。川口先生は結構今の自分の作風とかにも影響を与えてるかもしれないですね。

少年誌のギャグ漫画からの影響はないのですか?

それは自覚としてはないですね。あまり見てこなかったと思います。

画美って名前も、漫★画太郎先生のオマージュかと思ってましたけど(笑)

いやいや畏れ多いですよ。画太郎先生はやっぱり超絶絵が上手いですけど、私はやっぱりそういう風には描けないので。

作品のギャグセンスもハイレベルなので、ギャグマンガから影響を受けていないのは意外な気もします。

「プロゴルファー臓器」(2022)

そうですか。ただ、母親がアニメーターの仕事をしていたので家にセル画がいっぱいあったんですよ。イラストやアニメを自然と目にしていました。

自分も短い漫画は描いてますけど、漫画家って意識はないですね。絵の教育を受けたわけでもないし、実際技術もない。一番やりたいことは漫画ではなく一枚絵なので、イラストレーターって一応は自称してますけど。

イラストもバンドもやってますけど、めちゃくちゃ絵とか音楽が好きかと言われるとそうとも言い切れないんですよね。自分の表現したいことがあって、それの手段としてそれらを使っているだけで。

そういった意味ではテクニカルな面ではあまり自信はないんですよね。でも自分にできることはこれしかないんでそのままやってるという感じですね。

一枚絵のイラストで気をつけていることしてはあまり説明しすぎないようにってのはあると思います。もちろん自分なりのテーマはあるんですけど。

漫画家という意識はないとのことですが、”絶好実(ゼコミ)・チャンシー”シリーズはかなりインパクトが強い漫画作品ですね。

「入ってはいけない場所」(2022)

伝えたいことが明確にある場合はやっぱり漫画の方が向いてるなって思いますね。まあセオリーとかガンガン無視してやっちゃってますけど(笑)

Roadside Witch Society名義でストーリーを描いていた時は毎回違う主人公にしていたんですけど、絶好実(ゼコミ)では主人公と登場人物は同じ人が続いて出てくるスタイルにしています。そっちの方が今の自分の表現したいことに合ってるんですよね。

絶好実(ゼコミ)のキャラクターはご自身を投影しているのですか?

いや、あれは私ではないんですよ。私のものではないって言い方をしたりもしてるんですけど。葛藤とか人間の渦の中に巻き込まれていく様子とかを表現していますね。

人間が嫌いというのも感じる反面、人間愛みたいなものも同時に強く感じるのが中野さんの作風の特徴でもあるように思います。

人間愛っていうとちょっと恥ずかしいですけどそういうところはあるかもしれません。

自分では愛を持って相手に立ち向かって言った言葉でも、相手をすごく傷つけてしまったり、怒らせてしまったりすることがあるので、わかり合いたいのにわかり合えないどうしたらいいのかわからない心の葛藤が現れてるのかもしれませんね。絶好実(ゼコミ)は自分ではないと言いつつですけど。

絶好実(ゼコミ)のルックスは中野さんのバンドのマダムロスのドラムのタマキさんによく似ていますが。

確かに似ているけど別にタマちゃんというわけではないんですよ。最初、昔好きだったライオット・ガールのバンドのメンバーをモデルにして描いたんですよ。

カーラーつけてるのもその人が元ネタなんですけど。その人にだんだん肉付けしていったらたまたまタマちゃんに似てしまったんですよね。

Madamloss-toriaezunose(2023)

やっぱりライオット・ガールの影響は大きいんですね。

そうですね。ただ、ライオット・ガールの文化や音楽はもちろん今でも好きなんですけど、年月が経ち歳を取って色んな事を経験すると、やっぱり考え方や受け止め方も若い頃とは違ってくる面もあって。

Roadside Witch Societyのころはモロにライオット・ガールやパンク・フェミニズムに影響を受けた作風でやっていたんですよ。でも当時は皆に見せるように描いてたんですよね。

それで実際喜んでもらえたし、その反応も嬉しかったんです。シンプルに男の人を批判したり、ちょっとパフォーマンス的に描いたりしてる面もありました。

ただ、自分の人生が進むにつれ色々な変化があって。あとその頃は児童相談所で保育士として働いてたんですけど、貧困、虐待、発達障害、非行などいわゆる自分が文化を通して触れてきた社会問題の文脈では拾いきれないような、本当にこんな酷いことが現実に起こるのかというケースを実際に目の当たりにしたのも大きかったかもしれません。

実生活の中に物事の見方が変化するきっかけがあったんですね。

そうですね。もちろん今でもフェミニズムが持っている問題意識とかはあるし、家父長制とか本当害悪でしかないっていうのとかは当たり前にあるんですけど。

ただ、当時いろんな人間関係の葛藤とかもあって、自分のこれまでの作風と現実とのズレとか矛盾を感じることも多くなってしまって、一度絵を止めてしまったんです。Roadside Witch Societyのブログも閉じちゃったし、それまで描いた絵もほとんど捨ててしまいました。

個人的にも好きな作品も多々あったのでそれは残念です。当時は結構海外のZINEにも作品を出していましたよね?

結構海外からの反応はありましたね。ドイツのLGBTQの雑誌とか、イギリスのライオットガールバンドバンドをやっている女性作家のZINEに漫画を寄稿したり。

Jane Flett-短編小説”dirt”

アメリカの某ドラム雑誌からもオファーをいただいたことがあるのですが、その時はもうメンタルが追い詰められてて絵を描く気もなかったので蹴っちゃって。

いろんな葛藤があったんですけど、それ以上に大きかったのはGirls Rock Campをやろうって思ったことだったんですよね。絵を描くことより保育士として子どもたちのサポートをすることや、Girls Rock Campのような社会活動に力を注ぎたくなっていたんですよねその時は…

Girls Rock Camp(ガールズ・ロック・キャンプ)
オレゴン州ポートランド発祥のプロジェクト。楽器経験者、未経験者の少女たちが集まり、5日間のプログラムでバンド仲間を見付け、バンドを組み、音楽の創作活動を通して自己表現やコミュニケーションの方法などを学ぶ。2001年にポートランド州立大学の学生プロジェクトとして試験的に開催されて以来、回を重ねるごとに支持を集め、アメリカの他州やブラジル、中東など世界各地で開催されている。
https://girlsrockcamp.org/

自分が初めて会った頃はGirls Rock Campの中心メンバーという役割で色々活動されてましたよね。

そうですね。でももともと自分は代表じゃなかったんです。別の仲間が代表をやってて、その後自分が引き継いでしばらく活動してたんですけど、自分たちの生活を守って行くのにもいっぱいいっぱいなのに、Girls Rock Campの理念や使命をもとにガチでしっかりやるとなると運営していくのが超大変で、力不足もあってGirls Rock Campは2018年に活動休止しました。

でも最近当時一緒に活動していたスタッフやインストラクターやバンドの人たちに再会することが多くなって、みんなと一緒に使命を持ってこの活動に挑戦してきたことが、その時は意識してなかったけど6年経った今、何か言葉で言い表わせられない連帯みたいなものができていることを感じて自分の中でこみ上げてくるものがあって(笑)。また活動を無理ない形で再開させようと思いました。

「全員キョンシー」(2022)

Rock Campの活動についてはまたのちほど触れたいと思うんですけど、いったんイラストレーターとしての活動を休止して、社会活動や保育士の仕事を経たのちに、イラストレーターの活動を再開させて今の画風に至ると。

そうですね。一回休んでいた時の色々な経験が作風を変化させたっていうのはやっぱりありますね。

ご自身ではどういう変化があったと思いますか?

周りを少しだけ気にしなくなった、今の方がそれこそ自分の描きたいことを描いてると思いますね。

以前からやりたい放題だった気もしますが(笑)

それでもさっき言ったように以前はやっぱりパフォーマンス的な要素も強かったと思いますね。たとえば今描いている絶好実(ゼコミ)は自己中心的でエゴも強いし、葛藤もあるし全然素晴らしい人じゃないんですよね。正しいことを言うにしても、不甲斐なさもさらけ出すというか。

あと例えば今までは作品を作る時に、色んな肌の色の人たちを登場させたりっていうのを意識しなきゃいけないのかな?というのがあったんですけど、それは自分自身の実体験として今の暮らしには無い要素なんですよね。

リアリティがない、それはそれで自分からするとウソをついているなって思ってしまって。一体誰に向けて描いてるんだろうって考えてしまって。

色んな人の人権に配慮するってことはもちろん必要で大切なことで絶対的に正義なんですけど、それをしなければならない…逆に言うとそれをすればOKみたいな安易な側面も同時にあると思うんですよ。そこについては今もどうしたら良いのかまだ迷っていますね。

ただ、自分にとってリアリティがないもの、わからないものは、気付き、慎重に学びながら考えて行きたいです。

確かにその辺りは難しいですよね。表現したい内容などによって変化する面もあると思いますし。

以前は他人の色んな苦しみや反発に共感していたつもりになっていたんですよね。ライオット・ガールの政治的メッセージとかに対しても自分から共感を寄せていってた面もあったなと思って。

でもそれって占いにハマるのとかと近い構造だなって感じたりもして。「分かる」とか「わたしも同じ!」とか「当たった」とか自分から寄せにいってるだろって(笑)

だから ライオット・ガールやパンクフェミニズムが自分に与えた影響はただのファン、憧れであると思っているのが素直なところです。欧米のように同じ意識で活動するのはわたし自身は無理でした。

家父長制的意識の強い日本でサバイブしていかなきゃならない、生活するの必死で将来は不安でしかないし、まずは自分に正直にならないと苦しいばかりでした。そういった精神的な変化もあり最近では、作風的にもそこからは脱せてる気がしますね。

「脇毛神(ワキモウシン)」(2022)

2022年Vol.50のSpectatorのヒッピー特集で漫画を描いていましたね。自分の興味の分野でもあったので、中野さんのいちファンとしてもなんだか嬉しい気持ちになりました。

Spectatorの編集者の赤田祐一さんは以前のRoadside Witch Societyの時から絵とか作品を褒めてくれてて。2013年くらいだと思うんですけど、人づてに連絡をもらって自分たちの雑誌で書きませんか?って言ってくれて、その時にもSpectatorに描いてるんですよ。

それで私はその後絵の活動は休んでましたけど、再開したのを見てくれてまた声をかけてくれて今回描かせていただいたという形です。

実績もなく絵を描いたり描かなかったり、いきなりいなくなったりしても、またチャンスを与えてくれてとても感謝しています。Quick Japanの件で炎上してましたけど。

中野さんの隠れファンは結構多いんじゃないかと思います。

いや、無名ですけどね(笑)。ただ、なぜか最近よくメディアに出ている〇と□のメガネの某経済学者の方がどこでどうわたしのイラストを見つけたのかわからないんですが、突然SNSでピックアップしてくれて。「この人の絵は癒されます」みたいな感じで(笑)

そのことでHPのアクセスがとんでもないことになってサーバーが落ちちゃったってことがありましたね。自分じゃ抱えきれないくらいのたくさんの人に見てもらって嬉しかったですが、その方もちょっと前に大炎上してました。私の絵を褒めてくれる人は炎上しちゃうタイプなのかもしれない。

それだけHPとか見てもらえた仕事のオファーとかやっぱりあるんですか?

仕事が来るかも!て一瞬エゴめきましたけど一件も…問い合わせすら来ませんでした(笑)

なんででしょうね。

分からないです。

「不良寿司職人」(2022)

作風的にも毒というかパンチが強いっていうのもあるんでしょうかね。

絵を再開したときにやっぱり仕事としてもやりたいなっていうのは思って。個人の依頼とかで仕事として描くことはあったりもするんですが。

企業からの仕事をやるとかってなった時に、デザインとかちゃんとやったりして見やすい絵も描けたほうがいいかな、とか思うんですけど、流行りに合わせたりとかが基本的にできないんですよね。

食品会社のイラスト募集に応募したこととかもあるんですけど、ポートフィリオが尻とかうんこばっかになっちゃうから落選しちゃう(笑)

「競争はうんこがやるもんだ 人間はやるな」(2023)

ご自身が活動されているバンドのマダムロスについても教えてください。

Madamloss-PANTY YOKOSE(2022)

いったん絵を止めてRock Campをやってたときに、インストラクターを探してたんですよ。そしたら名乗り出てくれた人がドラムのタマキさんだったんですけど、当時活動していたidea of a jokeっていうバンドでドラムを叩いていて。20代の時に普通にライブ観てたバンドだったから、え!って驚いたんですけど。

タマちゃんは活動に深く関わって行くようになって、面倒な仕事もどんどん自主的に取り組んで、Rock Campの代表も務めていました。とても信頼していたんですけど、そんな中一緒にご飯食べてる時にふと「バンドやろうよ」って話になって結成しました。2018年くらいですね。メンバーは2人だけなんですけど、音楽っていうかパフォーマンス的な要素もかなり強いですね。

パンク云々という以前に、かなりぶっ飛んでますよね(笑)

タマちゃんも保育士の資格を持って子どもに関わる仕事をしていて、二人とも子どもたちとご縁がありますし、大人向けの童謡みたいなを曲を作りたいていうコンセプトがあって。保育士って喜怒哀楽、全力で子どもたちに向かって行くんですよ。

たくさんひょうきんに振る舞うようにしたり、お笑い芸人になったつもりでパフォーマンスを考えたりして、二人でゲラゲラ笑いながら曲を作ってます。

お笑い芸人とでいうとどういった人が好きなんですか?

原体験的にはしのざき美知さんが面白いと思います。本当に天才だと思います。もう特別枠みたいな感じで。

今フェミニズムとか流行ってますけど、あの時代にあの行動力とか表現力とかは本当すごいですね。自分が本当に表現したいことはああいうことなんじゃないかって思いますね。面白い、笑えるって侮れないと思いますね。

ネガティブで文句ばっかり言ってますけど自分は悲しいこととか傷ついたことより、創造するうえでは面白いことに強く影響を受けていますね。

しのざき美知(1968-)

しのざき美知さんは知りませんでしたけど、これはヤバいですね(笑)

これで絶対笑わせてやるんだっていう情熱というか。歌のズレ方とかも本当天才的なんですよ!一度結婚して引退しちゃったのは残念でしたけど、またその後に復活していまだに面白いことやろうとしているし、素晴らしいですね。

マダムロスはライオットガールというより、しのざき美知の影響下にあるかもしれないということですね(笑)

多分そうなのかもしれないですね(笑)

「収穫祭」(2021)

これまでの話題でも出てきたGirls Rock Campの活動について聞きたいと思います。2014年から活動をスタートして、活動休止の2018年までに色々な活動していますね。具体的にどのような活動を行っているのか教えてください。

わたしたちは、ガールズ・ロック・トーキョーという団体名で、世界各地で行われているGirls Rock Campの目的と使命にインスパイアされた活動を行っていて、現在18歳からの大人の女性のためのレディース・ロック・デイキャンプを行っています。

プログラムの内容は、12名の参加者が4人ずつに分かれて3つのバンドを結成し、各パート(ボーカル・ギター・ベース・ドラム)の演奏を練習したのち、バンドで課題曲を練習・演奏するというものです。日帰りのワークショップです。その他、ZINE制作のワークショップなどを開催しています。

Girls Rock Campというと子どものためのプログラムという印象があるのですが、なぜ大人のためのプログラムを行っているのですか?

2014年の夏に、アメリカのポートランドで行われたGirls Rock Campの5日間のプログラムにスタッフとして仲間と参加したんです。

プログラムには、人を公平に扱うため、安全で安心した場を構築するためのメソッド(ハンドブック)があって、活動に関わる人たち全員で一日かけてそれを学ぶオリエテーションがあるんです。参加するのにオリエテーションを受けるのは必須条件で、ルールを守ることを約束するための誓約書もありました。

そして実際の現場では全力で参加者を応援しているスタッフや安心してのびのびと楽しんでいる子どもたちがいてとても感銘を受けたのですが、それと同時に、これは果たしてそのまま日本に持ち帰っても私たちはチームとして成し遂げることができるのだろうか…と疑問を持ったんですね。

日本だとそもそも大人の女性たちが、自分も含めて、連帯して何かミッションを成し遂げるという経験が少ない。それに、日常生活の中で多くの人たちがボランティア活動に参加する、経験するということが少ないと思いました。

アメリカのボランティアとか非営利事業とかは文化として歴史があって日常的でもあるし、そこは大分日本とは違う印象です。

そうですね。つまり私たちは経験がないんですよね。活動実績のない人たちが始める団体なので、団体として責任と知恵と能力を持っていないんです。なので子どもたちに向けてってなると、まだリスクが高くてできないなって思っています。

子どもたちが多感な時期に色んなことを成し遂げるってすごく大事だと思いますが、自分たち自身が幼少期からそういうことの経験が少なかったっていうことも感じていますから。

私たち大人がとても自信がない!って気づいた感じというか。少しずつでも、大人たちが体験したり経験を積んだりした方がいいんじゃないかと思っています。

なかなか欧米のようなやり方はできないなと気づいた上で、日本の女性のライフスタイルに合わせて自分たちのペースでゆっくり活動できたらと思っています。

最近はこういう時代なので社会人向けの人権学習セミナーとかも広く行われている印象ですけど、結構初歩な内容も含まれていたりして、やはりまずは大人からっていうのは大事なのかもしれませんね。日本で育った自分を振り返っても、やっぱその辺の知識とか実際結構怪しいですしね。

そうですね。でも私はやっぱり知識以上に経験がすごく大事だと思っていて。例えば「人助けをしたい」「社会活動したい」って思う人がいるとして、実際にやってみると、カッコいいこと、キレイなことだけでは済まないこともたくさんそこからこぼれてくるわけで、何が起こるかわからないんです。だから私はよく「おまえ他人のうんこ触れるのかよ?」って思うんです。

「人を助けたい」って言って直接人に関わる支援活動に参加したとしても、例えばその場で失神して漏らした人のうんこ触れないなら、助ける人や物事を自分で限定しているし、理想の自己像だけ見て相手のことを見てない、優しくないよなって思ってしまいます。人は、自分のコントロールできる範疇なんかにいないと思いますから。

そもそも知識とかだけで話すのってつまらないし、うわべだけになってどんどん生身の人間から離れていく。みんなが汚いと認めるうんこと言う物は真実の扉への鍵かもしれないですよ。

とはいえ!実際、うんこなどの排泄物は、菌とかすごいし、何かに感染したりしたら支援も元も子もないので片付けるときなどはビニール手袋とか直接触れないようにお気をつけくださいませ!

そういう意味では昔から中野さんの作品は、考えが近いと思われる立場の人たちにもドライな眼差しが向けられているものも多いですよね。党派的になれない、あくまで個であるというか。政治や運動を勝ち取るものとするならば、ある意味では大人げない」「未成年的」とされるのかもしれませんが、その反面表現者としてはごく自然な反応だとも感じます。

そういう目線が無かったらそもそも自分は絵描いたりとかしてないと思いますね。たとえば知識としては、人に対して平等に接さないといけないって理解してても、「性悪いからアイツどうしてもムリ」「うっぜ〜!」っていうのとかあるじゃないですか。

でもそれを踏まえた上で、じゃあ、そこからどう考える?どう行動するか?っていうのがやっぱり大事なのかなと思いますね。自分も意識して行動する!と思いつつ、感情の乱高下が激しかったりして全然できてないので偉そうなことが言えませんけども…

「決闘のゆくすえ」(2022)

話変わりますが、中野さんの作品には政治的なものと同時にオカルトっぽいものも描いてましたよね。しかも実体験系(笑)。個人的にはそこもまた面白かったんですが今はそういった作品は公開していないですよね。

そうですね。誰もが受け入れられる内容や世界観ではないので発信するかしないか葛藤しています。でもそもそも世間に溢れるスピリチュアルみたいな世界観はすごく苦手なんですけどね。

自分も苦手ですね。めちゃくちゃうさんくさいのに何でいちいちウエメセなんだよ、とか思います(笑)。ちなみに「見てしまう」のはいわゆる幽霊的なものなのですか?

20代の頃から何か不思議なものを見たりとか感じたりというのはあったのですが、30代半ば、年齢を重ねるにつれ、たまにですけど、はっきり見えたりするようになってきて。

ここだけの話、カニとタコとクモが混ざって地球上では再現できないようなネオン光を発している謎の地球外生命体みたいのを数回見たことがあります(笑)。夜中、部屋に入ってきて目が合うとヒューって光の残像残してどっか行っちゃったんです。別の日にはわたしの胸の上に乗ってたこともありました。

もちろん客観的な目線もあったりするので、何かしらの脳の問題で幻視とかなのかもしれないと思って、これは一体なんなのかってネットで調べたりもしていました。

「スペースシップ脱毛サロン号」(2022)

あと怖かったのは幽体離脱体験です。すぽーーーん!!って一瞬で地球から飛び出たんですよ。気づいたら地球見下ろしてて(笑)。「死ぬ!」って思った瞬間、めちゃくちゃ抵抗して無理矢理戻ろうとしたらボンッ!て急に地上に戻ったんですけどベッドに四つん這い状態でいて、びっくりしました。

「幽体離脱」(2021)

昔は変な声とか聴こえたら、必要以上に怖がったり真面目に考えちゃったりしてたんですけど、そもそもたまにしか見えないし、霊感とかよくわからないし、真実かどうかもわからない。

なので深刻に考えず、ユーモアを交えて自分の体験を描きたいなと思ってます。でも本当は絵で描いてるより実際の状況は言葉で説明できない感じで…画力が無いのでなかなかそれを再現できてないのが残念です。

そういえば幼少期に川口まどか先生の漫画が好きだったとのことでしたが、川口先生の作品中の霊的な表現は、いわゆる霊的なものが見える人からしても「かなりリアリティがある」という話を聞いたことがあります。

そうなんですか!それは知らなかったです。単純に漫画家として好きだったのですが。見えない世界や異次元の世界は昔から興味があったので引き寄せられるように見ていたのかもしれませんね。

あとは昔病院で保育士として働いていたことがあるんですけど、やっぱそこでたくさん見ました。病院とかは本当に凄いです。幽霊がたくさんいます。

それはよく言いますよね。働いている人とからすると、もう普通にガンガンいると(笑)

毎回わたしは夜勤のときに見ることが多くて、たまに見ていたのはNHKの「チコちゃんに叱られる!」というTV番組に出てくるキャラクターのチコちゃんにそっくりな、尋常じゃない顔の大きさをしている女の子で「あーそぼ」って言ってウロチョロしてるんですよ。わたしだけじゃなくて、他にも数人チコちゃんが見える人たちがいました。

もう正直怖いというより、こっちは夜勤の仕事が大変なのに、何回もいろんな霊現象がしつこく出てくるのでしんどくなって、ほんとにストレスで挙句の果てにカンジタになってしまったんです。

かゆい、痛い、カッテージチーズのようなものが出てくる、辛い、膣に坐薬、生き地獄でした。もうロクなことがないのでその病院はまじでバッくれて辞めました。

なんか話があらぬ方向に急に飛びましたけど(笑)

霊の話とか宇宙人の話とか詳しく聞きたい人がいましたら、ここでは語り切れないので是非直接連絡くださいね。

個人的にも興味深いけど怖いです(笑)。いろいろなお話を今日はありがとうございました。

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