Interview-Kenji Ueda/I Wonder Why イギリスでの暮らし
in the middleでもTrouble in MindやINFOrmatiON!の記事を寄稿してくれたDJ/ライターのウエダ氏。10代前半からネオアコ、ギターポップを中心に新旧/有名無名を問わずインディー音楽を掘り続け、それが高じて遂には2年間渡英、音楽漬けの日々を送っていたという経歴の持ち主だが、今回はイギリスでの生活、DJ活動やこれまでの音楽遍歴についてインタビューを行った。
取材/Bisco/episode sounds,Miyapon/in the middle
※写真は全てウエダ氏が現地で撮影したものです。
-2018〜2020年までイギリスで生活されていたとのことですが、そもそもどのような経緯で行くことになったのですか?
その前の2012年に2週間くらいイギリスに行ったことはあったんです。大学卒業のタイミングだったんですけど、Stone Rosesの再結成を観に行きたくて。初めての海外旅行でしたけど一人で行ってみたんですよね。Stone Rosesのライブ以外はほぼ観光でしたけど、Oasisの2ndのジャケットが有名なレコ屋さんの通りに行ったりして。そこで一日中レコ屋を巡ったりしてました。
日本だとあまりないと思うんですけど、イギリスでは会う人もみんな優しくて声をかけてくれたりして。ホテルのロビーでも他の宿泊客と会うと、どっから来たの?とかフランクにコミュニケーションする空気感とかもすごく気に入って。みんなオープンマインドな感じがするなって思いました。
お店の接客とかも楽しんでやっているというか、お客さんと店員も壁とか上下みたいのもなく、スムーズにコミュニケーションを取っていて面白いなと思いました。
-では一度イギリスに行ってから、やっぱりまた行きたいな、住んでみたいなっていう気持ちが強くなっていったんですね。
そうですね。帰ってからもなるべく早く行きたかったんですけどビザが中々通らなくて。YMSっていうワーキングホリデー的なビザがあるんですけど、完全に抽選なんですよ。それが一年に一回あるんですけど、全然当たらなくて。今は半年に一回になったんですけど、僕の頃はまだ年一で。落ちたら次また応募するかって感じで、惰性で一年働く…みたいな生活を繰り返してましたね(笑)
-何回受けたんですか?
7回受けました(笑)。年間1000人とかしか取れなくて、完全にランダムなんですよね。
-7回は大変ですね。では実際に住めるようになるだいぶ前から渡英に向けてのアクションは起こしてたんですね。
22歳でStone Roses観に行った次の回からすぐ応募したんですけど、そこから7年間当たらなくて。YMSは30歳までしか発行されないので、年齢的にも29歳でギリギリだったんですけどそこでやっと受かって。そこから2年間行くことになりました。
-7年間抽選で落ち続けると結構精神的にも辛そうですね。
仕事もいつでも辞めれるっていう感じだったので、次受ければいいやって思って応募し続けてましたけど、期限の30歳を過ぎたらどうしようっていうのはありましたね(笑)。それだと二度と(長期で)行けなくなるかもなあって。まあ30過ぎても別の方法で、たとえば留学とかで半年とかは考えてましたけど。
-そもそも全然わかってなくて申し訳ないんですけど、YMSのような制度を使っていくのはなぜなんですか?
それは日本からだと就労ビザがほぼ取れないからなんです。医師とか一級建築士とか高度な資格を持っている人は別なんですけど、そうじゃない場合は向こうで住むためのワーキングビザが貰いづらいんですよ。ただ、YMSを貰えれば、何の縛りも無くどんな仕事もできるようになるんです。長期でいるとなると向こうは物価も高いし、生活費も稼ぐためには必要になってくるんです。
-そんなにハードルが高いんですね。もうちょっと普通の仕事とかでも取得できるのかと思っていました。
イギリスで人手が足りていない業種だと取得できたりもするみたいですね。今だとIT関係のエンジニアとかがそうみたいですけど。
あと、イギリスは日本よりマイナンバー制度のようなものも進んでて、グレーな働き方とかもほとんどできないですね。たとえばオーナーが税金を払わずに、こっそり働かせて手渡しで給料を渡すとか(笑)。最近はもっと厳しくなっていると思います。
-イギリスは監視カメラ大国で、超監視社会だとかも言われますよね。でも人手不足の仕事だったら就労できるケースもあるんですね。
そうですね。年収いくら以上の仕事で、向こうの会社がビザのサポートをしてくれる、とか条件があったりはするんですけど。なので自分も色々策を練っていつかまた住みたいなと思っています(笑)
-UK永住計画ですね(笑)。では実際に二年間イギリスに行っていた時のことを聞きたいのですが。最初に住むって決めた街はどこだったんですか?
ブリクストンというデヴィット・ボウイの出身地で。昔イギリスに行ったことがある人に「ブリクストンに住んでた」って言ったら驚かれるぐらい超治安が悪いところだったんですけど(笑)。有名なブリクストン・アカデミーから徒歩5分くらいのところに住んでいたんです。
最初だけホームステイみたいな形で隣町のストックウェルに1か月住んでいたんですけど、家を探してる時にブリクストンに行ってみたら、凄くおおらかな雰囲気な街だな、住みやすそうだなって思って決めました。
僕が行った頃は治安はそこまで悪くなくて、いろんな国の移民の人たちがいてボヘミアンな空気というか。アフリカ系のあまり見たことがない食料品とか野菜とかもズラーって並んでて、移民の人たちの生活が染みついている街でしたね。ジャマイカ料理、タイ料理、メキシコ料理とかのお店もたくさんあって。
-雑多なというか、多種多様な雰囲気が住みやすいと思って決めたということですね。そこで仕事もしてたんですよね?
職場はそこからバスで30分ぐらいのセンターロンドンで、日本の食料品が売っている店で働いてました。店頭で味噌とか醤油とか売ったり、惣菜も作ったりして(笑)
-それで使えるお金もできてレコード買って、ライブも行きまくって、という生活になるわけですね(笑)
そうですね(笑)。仕事もシフトで15時とかには終わる時もあったので、夜は遊び放題で。イギリスはバスが24時間走っているんですけど、パスを持ってたら乗り放題になるんですよ。なので夜中も何時でも家に帰れるので、平日でもライブハウスやクラブを二件回ったりして、毎日音楽づくしの生活ができたというか(笑)
-ウエダさんはお酒飲まないんですよね?それでその遊び方をしてるのはなんかすごいですよね(笑)。飲まないからこそ、そこまで動けるのかもしれませんが。
そうかもしれませんね(笑)。夜1時過ぎまでライブ観てバスで1時間かけて帰って、次の日朝7時から仕事で、終わって夕方からまたライブに行く、みたいな生活を繰り返してましたね。
-平日も普通にライブがあるんですね。
毎晩ありますね。
-それはバーとかでライブがあるんですか?
上がパブで地下がライブスペースみたいなところがあるんですけど、そういうところが多かったですね。
-ライブ情報はどうやって調べてたんですか?
DICEっていうライブ情報に特化したアプリがあるんですよ。たとえばロンドンって検索すると、ロンドン中のライブの情報が出てきて。クレジットカードと紐づければそこでチケットも買えるんですよ。日本みたいにローソンチケットとかぴあとかとは違って、全部アプリ内で完結できる便利なものなんです。なのでイギリス行ってライブが観たい時はこのアプリがオススメです。
-なるほど。それは便利ですね。ライブはどういうものに行ってたんですか?色々行かれてたと思うんですが。
たとえば日本じゃ中々見れないアメリカのバンドも観れるんですよ。Built to Spillとか。記事にも書いたTrouble in mindのアメリカのバンドとか、サイケのバンドもガンガン来てたのでよく行っていました。
-アメリカ内の場所にもよりますけど、地理的にもやっぱり近いですもんね。
距離的に近いし、言葉も同じでやっぱり文化的にも近いので。あとRough Tradeはライブできる場所もあるのでそこにライブしに来るっていうバンドも多かったですね。作品がリリースされる頃には、イギリスに行ってライブしてるというか。レコード屋がアメリカのバンドとの中継地になっているという感じでしょうか。
-アメリカのバンドが思っているよりたくさん来るということですね。ジャンルでいうとやはりインディーのアーティストをよく観に行ってたのですか?
そうですね。でも大御所のバンドも観たかったので、そういうライブにも行ってましたね。あとはイギリスのローカルのバンド、日本にいたら知る機会がないバンドとかもよく行っていました。サイケ、ニューウェーブのバンドとかも色々観に行ってて。
ゴリゴリのパンクとかでいうと、PowerPlantっていうバンドがいるんですけど。この前記事に書いたINFOrmatiON!のバンドとかと仲が良かったので、ジャンルは違うんですけど一緒にやったりしていたので観ていましたね。
あとはThe HorrorsのベーシストがいるThe Shadracksっていうバンドとか、ガレージパンク周辺の人とも仲良くなったり。自分が昔から大好きなSarah Records関係の人たちがやってたバンドとかとも、ライブに遊びに行ってたら普通に知り合いになったりして。
-いろいろなアーティストとか、場所に観に行ったと思うのですが、日本と違う点などはありましたか?
日本と違うなと思ったのは、クラブとかでも有名なバンドの人とかも普通に来てたりして、自然と知り合いになる機会とかが多いなと思いましたね。例えば日本の一般的なクラブイベントには、小沢健二さんとか来ないですけど(笑)。向こうはそのジャンルのトップクラスが割と遊びに来たりとかしますね。なのでライブハウスに普通にPrimal Screamのボビー・ギレスピーが遊びに来てたり、他にも有名なミュージシャンがいたりとかはよくありましたね。
-ワールドツアーしているミュージシャンがローカルのライブに来たり、とかそういうのは日本ではないかもしれませんね。日本でもガレージシーンとかはそういうこともあったりして、少なからず交流があるイメージですけど、普通はほとんどないと思いますね。そういえばJ・マスシスが来日したとき、大阪の地元のパンクのライブにフラっと来たって話は友達に聞きましたけど(笑)
やっぱり海外の人はそういうことに対してオープンな人が多いイメージですね。大御所になっていても、もともと音楽好きだからそういう場所にフラっと遊びに来るみたいな。ロンドンとかもそういう人は多かったような気がしますね。
-でもそれって良いですよね。そういう人たちとも関係性ができたり、音楽的な交流があったりっていうのは。
そうですね。イギリスの友達がやってるThe Rovesっていうバンドが Primal Scream の前座に出たことがあるんですけど、その経緯とかを本人から聞いたことがあって、それも面白くて。
その子はレコード屋で働いているんですけど、ある日Primal Screamのボビー・ギレスピーが店にフラっと来て、店内で流れてる音楽を聴いて「このバンドいいじゃん!」ってなって。それで他の店員さんが「うちのスタッフのバンドだよ!」って教えたら「今その子いるの?」ってなって、裏にいたんですけど呼ばれて話すことになって。それで「プライマルのベストアルバムのツアーやるんだけど前座やらない?」っていきなり言われて「えーっ!」みたいな(笑)
-いい話ですね(笑)
最初にイギリスで旅行で行った時に感じたオープンマインドな雰囲気っていうのも、そういうとこに繋がるのかなって思ったりもしましたね。
-日本だとあまりそういう感じにはならないですよね。色んな要因があるんでしょうけど。
個人的な考えですけど、日本の音楽業界は会社とかレーベルとかが強すぎるような気もしますね。日本だとさっきの前座の話とかも、色んなパワーバランスがあって「このバンドを呼ばなきゃいけない」とかがありそうですけど、イギリスはミュージシャンがイベントの舵を切って自由にやっている感じがしましたね。レーベルとか色んな会社のしがらみが少ない気がするというか。チケットもいろんなチケット会社を通さずに、さっきのDICEっていうアプリでまとめられてたり、ローカルのライブハウスと直接契約してたりとか。そういう違いもあるのかなと思いましたね。
あとは明確に違うのはチケット代がメチャクチャ安いってことですね。日本だとローカルなライブでも2000~3000円くらいのチケット代がスタンダードな金額だと思いますが、イギリスだとタダのライブでアメリカのバンドのツアーライブが観れたりとかして驚きました。クレイジーだなと(笑)
でもお金を払うライブでも3ポンド、450円くらいで観れますね。それくらい安くても、ヴェニューの側はバンドにギャラを出しているので、お客さんがガンガンに飲んでパブを回してそこでやりくりしているんだと思いますけど。
-それでちゃんと成り立っているというか、ヴェニュー、アーティスト、お客さんでちゃんと循環しているんですね。ちょっと気になったんですけど、イギリスのアーティストやバンドは機材を会場に持ち込むんですか?
アンプをタクシーとかに積んだりして持ってくる人もいますけど、アンプとドラムは基本的にはヴェニューから借りていることが多いと思います。
-そこは日本と変わらないんですね。アメリカだと会場に機材はなくて、ドラムから何から全部持ってくるバンドも多かったですけど。それぞれの演奏ごとに機材も全部入れ替わってるという感じで。
あとはバンドマンが仕事でライブのPAをしてたりすることも多いですね。ハコに付いているPAということではなく、PAが色んなとこに行ってやっていて。機材の違いはありますけど、どこのハコでもバンドに合った音を作れるPAもたくさんいるという感じでしたね。あとは仲良いバンド同士がそれぞれのPAをやっていたりとか。そのせいなのか、音響も全体的に良いような気がしますね。音が悪い、とか感じたことはどの会場でもなかったですね。
-有名どころも色々観たとのことでしたけど、特に印象に残っているライブはありましたか?
Built to SpillとGuided by Voicesとか、日本ではほとんど観れないアメリカのバンドのライブがすごく良かったですね。あとCreationから出してるAdorableってバンドと、シューゲイザーのHouse of Loveがすごく印象深かったですね。
あとはHorrorsのロイヤル・アルバートホールの公演があって行ったんですよ。クラシックのコンサートとかする由緒正しきところなので人生で行くことないだろうなって思ったんですけど(笑)。そこでHorrorsの2ndアルバムの10周年記念のライブがあったんですよね。
そしたら王立というか、国がやってる場所なだけあって音響が凄まじくて(笑)。人生であんなに音響が良いところは後にも先にも無いくらい凄かったですね。音楽的にはガレージとかシューゲイザーなんですけど、良い音でバンバン来て。その体験は凄かったですね。
-ロックとかインディーをそういう場所で観ることは中々ないと思うんですけど、どういう風な意味で良い音だったんですか?
なんていうんでしょうね…直接体に音の震えが来る、と言ったらいいんでしょうか。体感として凄い伝わる感じでしたね。説明が難しいんですけど。
しかもHorrorsは学生の頃からずっと好きで、そのアルバムもすごく聴いてたので、思い入れが深い上に、それらの曲が凄い音で直に来るので本当に良かったですね。
-普通にクオリティが高い、とはまた違った印象だったのでしょうか。別物というか。
日本でも3回くらい観てたんですが、それとは何もかも違いましたね。説明が本当に難しいんですけど。Horrorsはシューゲイザーっぽいこともしてるので、音の印象もぼやけている印象もあったんですが、音の芯がガツンと飛んでくる感じで、印象がガラっと変わりましたね。とにかく凄まじい音圧でした(笑)
-そんなに別次元の良い音響のとこでやって、バンド側としてはやりにくさとかはなかったんでしょうかね(笑)
普通はありそうでうすよね(笑)。でもいつも以上にメンバーは皆暴れまくってテンションが高かったですね。実際のところはわからないですけど、やっぱりイギリス人にとっては特別な場所なのかなとも思いましたね。
-そういう場所のライブはやっぱりチケットも高いんですか?
行ったライブの中では一番高かったですね。それでも35ポンドとかだったので、5000円とかですね。インディーの大物、Guided by Voicesとかそういうバンドも30ポンドだったんですけど、そういうのはイギリスの中ではめちゃくちゃ高い部類に入りますね。
-そういうアーティストがやるヴェニューの規模感とかはどれくらいなんでしょうか?
O2っていうライブハウスがイギリス内の色んなとこにあるんですけど、O2アリーナとかO2スタジアムとかいって。それはパブとライブスペースが併設してるタイプとは違って、音楽会場だけで独立してるような5000人くらいは入れるところなんですけど。そういうところやそれと同等の規模の会場でアメリカの有名どころの人たちはライブをすることが多かったですね。チケットは3000~4500円とかで。
パブと一緒になってる会場は100~200人くらいのスペースでチケットは大体400~500円ですけど、タダの時も結構ありました。アメリカのツアーバンドがそういうところでやることもたまにあるんですけど、基本的にはローカルの人たちがやるっていうイメージですね。しかもそういうところは毎日ライブをやってるんですよね。
-毎日はすごいですね。でもチケットも安くて、バンドもギャラがあって、店自体も回せてるっていうのはいいですね。各々の負担が少ないし、それは必然的に盛り上がるというか。
そうですね。フリーのライブでもバンドにギャラは渡しているのは見てたので、そういう風にちゃんと成り立ってるんだと思います。
-日本は建物や住宅が密集していたりで家賃も高いので、チケット代もある程度上げざるをえない、というのはよく聞きますよね。ただ、イギリスは日本と住環境が近いとかも言われたりもしますけど、なぜイギリスはそんなに安くできるんでしょうね。かなり環境が違うアメリカのチケット代が安いとかはわかるんですけど。
なぜ安くできてるのか、実際の仕組みはわからないんですけど(笑)。パブでたくさん飲んだり食べたりする人が多いからなのかな、とかは思います。お酒は一杯450円とかでそんなに高くないんですけど。
-欧米のそういう場所だと、お酒を飲みに来ているのか、ライブを観に来ているのか、いい意味で境目があいまいなお客さんがたくさんいるイメージもありますけど。
そうですね。上で飲んでる人が、気が向いたら下に無料のライブを観に来るとかそういうのも多いですね。日本だとライブ会場はライブをすることがメインですけど、お酒だけ飲めるスペースが併設してるところはあまりないかもしれませんね。多分日本だといろんな面でそういう作りにするのは難しいんだと思いますけど。
-日本だとライブは特別なものというか非日常的なものとして臨む感じもありますし、そういう意味では文化的な違いもあるかもしれませんね。
あとイギリスのライブはドリンク代がないので、そのまま地下とか奥の会場に行ってしまえばタダでライブを観ることもできたりはしますね。もちろんお店的には一杯ぐらいは頼んでねっていうのはありますけど(笑)。若くてお金ない人とかでもライブを観ることはできますね。
-でもイギリスの人はめちゃくちゃ飲むっていうのはあるんじゃないですか?
そうですね。バンドが一つ終わる度に一杯飲む感じとかもあって、みんなズラーって並んで。食べるものもあって。多分それの売り上げがかなり大きいと思いますね。
日本って一般的には、仕事終わりに居酒屋に行って、そこで飲んだり話したりするのが楽しいっていう文化があると思うんですけど、向こうの人はそれがライブとかになってる気がしましたね。「仕事終わったし飲むか!ついでにライブもやってたら観るか!」みたいな。
-生活の流れに組み込まれてる、という感じなんですね。それはやっぱり大きいですよね。それでローカルとか身近なところのライブにもいろいろ行って面白いこともあったと思うんですけど、それが記事にもしてくれたINFOrmatiON!の人たちだったりするんですね。
あの子たちはクラブにもライブにも行くし、ガンガン現場で楽しむ人たちだったので一緒にいて楽しかったですね。
-他にも面白かったシーンや場所などはどういったところでしたか?
シャックルウェルっていう地域がイーストロンドンにあって、狭い範囲なんですけどそこだけで色んなライブハウスが4、5件くらいあって。しかもすごいバンドが毎晩出てて、どれに行こうって迷うくらいのところで。
その中でも個人的に一番すごいShacklewell Armsっていうとことがあって。そこはアメリカのバンドを呼んでもタダで観せたりとかクレイジーなことをしてて(笑)。そこで普通にYuckのメンバーが働いてお客さんにビールを注いでいたりとかもしていて驚いたんですけど(笑)
-その地域でも存在感がある場所というか。
そこに行くと普段よく見る音楽友達も皆集合してるみたいなことが多かったですね。いろんな新人を呼んだりとか、ロシアのバンドを呼んだりとか。面白いって思ったイベントをなんでもやってる感じで。イギリスに行くなら、Shacklewell Armsには絶対行ったほうがいい!と思うくらいの場所です。
あとはLexingtonっていうインディーポップの聖地のヴェニューもあるんですけど、そことShacklewell Armsはよく行っていましたね。
-そのような楽しい日々を2年間送って日本に帰って来たんですね。
そうですね。ビザが2年間で切れてしまうので、そのタイミングで帰ってきました。
-でもいつかまた戻って住みたいと。というか永住したいんですよね?
はい(笑)。イギリスでは最低5年は働いて納税して、試験に合格すれば永住権が取れるみたいなので。
-試験があるんですか?
Life in the UKっていう試験があるんです(笑)。何代目国王は誰だ、とか(笑)。政党名でどっちが保守でどっちが革新か、みたいな問題が出たりするらしいんですけど。5年間納税してそういう国の常識問題みたいな試験と英語の試験をパスできたら永住権が取れるみたいです。
でも試験より5年の納税が難しいと思いますね。就労ビザは最高でも3年のものしかないので、ちゃんと更新して納税しないとなんですよ。試験も一回3,4万円くらいするらしくて、結構高いし(笑)
今はブレックジットみたいな感じでEU圏の人も追い出そうとしているので、就労ビザとかで外国の人が来るのは厳しくなってくる気もしますね。それで人手不足になっているので、逆に永住権やEU圏外の人の労働ビザは取りやすくなっているのかな?というのはあると思いますけど。
-永住することに迷いはないんですね(笑)
そうですね。まあ日本国籍を捨てるわけではないので、最悪嫌になったら戻れますし(笑)。でも二年間住んでみて、個人的には日本より向こうの方が好きという感じが強いので、合っているのかなとは思いますね。ー後編に続く