Talkin’ About 7inch Vinyls Vol.1

text by Hajime Murakami
Mule Team,Flower Zombies

特定の人やバンド、テーマついて自分で書いてみたい事、誰かに書いて欲しい事に思いを巡らす一方で、単純に好きなレコードについて書いてみたいという気持ちもありまして。そういうシンプルな内容でもあの人に書いて欲しいなーというのは色々あるのですが、今回自分でも書いてみます。

ならば好きな7inchレコードについて!と思い立ったはいいが、実は最近引越をしまして、ただでさえ整理の出来ていない7inchは下手くそな引越し準備とダラダラと続く引越しの後片付けで何がどこにあるのやら…それも含めた最近の、という内容です。

1.The Train Kept A-Rollin’の話

The Johnny Burnette Trio-
The Train Kept A-Rollin_(1956)

引越し後に早めに開封した段ボールから選んだ某The Cramps関連コンピを聴いていて聴きたくなり、探して引っ張り出したのがThe Johnny Burnette Trio「The Train Kept A-Rollin’」(1956)。そのコンピを聴きながら、あれ?この曲入ってないんだっけ?というやつだったんですが。後から考えたら恐らくTav Falcoのカバー辺りから勝手にThe Crampsへ脳内変換されていたっぽいのです。

Tav Falco&The Panther Burns-
She_s The One To Blame(1980)

「The Train Kept A-Rollin’」はTiny Bradshowという人のジャンプ・ブルースが元曲で、数多くカバーがありますが、それらは基本Johnny Burnetteバージョンを経由してますよね。ファニーなジャンプ・ブルース(勿論これもカッコいい)をJohnny Burnetteがワルいロカビリーにアレンジしなければその後のカバーは生まれなかったのでしょう。

その流れで有名なのはやはりThe Yardbirdsバージョンで、以降のカバーのほとんどはこれがお手本な気がします。面白いのは、ジェフ・ベックがカバーしようとスタジオにシングルを持って来た事がきっかけでThe Yardbirdsバージョンが生まれたという話。

The Yardbirds-
Having A Rave Up With The Yardbirds(1965)

Johnny Burnette「The Train Kept A-Rollin’」にそのB面「Honey Hush」(Big Joe Turnerという人のジャンプ・ブルースのカバーで、こちらも激ワルくアレンジ)のリフを合体させたって事みたいです(聴き比べたら一聴瞭然)。なので世の中の「The Train Kept A-Rollin’」のほとんどはJohnny Burnetteの「The Train Kept A-Rollin’/ Honey Hush」ありきなんですね。

因みに「The Train Kept A-Rollin’」と言えば連想するのがシナロケの「レモンティー」(元はサンハウスか)。数年前に7inchで再発されていたの、買っておけばよかったなーという後悔も今更思い出したのでした。仕方ないからLPで聴こ。

Sheena And The Rokkets-
Lemon Tea(2018)

2. in the middleやらダム森やら何やら

Scott Walker-Jackie(1967)

in the middleでは、自分で書いた文章はさておき、人が書いた文章やインタビューから広がる興味が素敵すぎて、関わってよかったなーと思う。興味を持った人/バンド/音源についてはやはり探しちゃうんですが、欲しくても当然ゲット出来たり出来なかったり…

そんな中7inchで言えばすごいタイミングでゲットできたのがScott Walker「Jackie」(1967)。これはYoung ParisianのTsuneglam Sam氏にお願いした連載「ダム森」こと「ダムドという名の深き森」のepisode6で興味を持ち、運よくすぐに出会えた7inchレコード(LPも狙ってますが、高額盤です…)。

Walker Brothersは「ダンス天国」のカバーなどで知ってはいましたが、全く異なる暗黒の世界観。TheDamned/デイヴ・ヴァニアンへの影響を納得しただけでなく、ポップコーンR&B好きにもハマるのでは?と思いました。それ以外にもジョン・バリー周辺の話など7inchに限らず興味津々…「ダム森」ロスですね…

また、Young Parisianが3月にNew 7inchをリリースした際にTsuneglam Sam氏にインタビューもさせていただいたんですが、その時期は僕なりにグラムロックを色々聴き直しました。The Clash好きの僕としてはMott The Hoopleが多めになった中、今回のテーマ7inchとしてよく聞いたのはタイトルも最高な「All The Way From Menphis」(1973)でしょうか。

Mott The Hoople –
All The Way From Memphis(1973)

Mott The Hoopleは色々アルバムも聴き直して、The Clashのあの曲やこの曲、元ネタってこれなんじゃないかなーなどと独り言ちたりも。ツネさんのインタビューで言うと、大好きなBo Diddley やEsqueritaの登場の仕方も興味深くて最高なんでまだの方は是非。

3.R.I.P. Chris Bailey

The Saints-
One Two Three Four(1977)

先月(4/11/2022)、The Saintsのクリス・ベイリー氏が亡くなりましたね。ご冥福をお祈りします。The Saintsは勿論好きなバンドで、個人的に特別影響を受けたバンドという訳ではありませんが、やはり久々に聴きたくなって持っているレコードを探し出して聴き直しました。

勿論アルバムも聴き直したのですが、僕にとって思い出のThe Saintsの音源と言えば2枚組7inch「One Two Three Four」(1977)。買った当時は浅はかな考えで「カラーに口紅」のカバー目当てだったと思います。恐らく20歳前後の話なので記憶定かではありませんが、クラブ/DJ人気曲みたいなレコードを聴き/買い漁っていた中で買ったはず。

なのでしばらくしてからですかね、50~60年代の曲を自分たち解釈のロックンロールとして意識的にやってる感じに気づいたのは(オリジナルも当然カッコいい中で)。個人的にはTeengenerateの様々なカバーに近いものを感じます。

あと、The YPAS’66の「River Deep Mountain High」って多分この7inchバージョンが元ネタですよね?ご本人たちとはその会話したか定かではないですが、気づいてウォーってなった事も今回思い出しました(間違ってたらスミマセン!)。

悔やまれるのは、若気の至りあるあるでThe Saintsは初期の音源しか持っていないという事。偉そうな分析をしている今こそ、それ以降の音源が気になるのに。そもそもThe Saintsの中期以降やクリス・ベイリーのソロもカッコいいらしいという話は色々聞いていたにも関わらず、です…今後上手くその辺のレコードに出会えたら、という期待を込めつつ。

最後ですが、「カラーに口紅」の終わり方が好きなんです。オールディーズの定番パターンって事になるんでしょうが、色々な人がやってるやつで(Reigning Soundの某曲とか)、いつか僕も!と思ってたら既にFlower Zombiesでやってました。7inchについてでも、それ以外についてでも、書けたらまた書いてみたいと思います。いつかまたその時までという事で、チャチャチャ!